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論文

■等比級数以上の増加

 成長の限界を突破することが21世紀の人類の最大の課題であるが、そのためには急速に限界に接近してきた原因を考察する必要がある。それは現象だけから判断すれば、2種の爆発とでも表現できる増大である。ひとつは人類の人数、すなわち人口の爆発、もうひとつは人間が消費するエネルギーの爆発である。それに関連して物質の消費の爆発もあるが、これはエネルギーの爆発に帰結する問題である。

 人類の祖先が登場した時期については、最近、次々と発掘される新規の人骨によって変化しているが、猿人といわれる最初の直立二足歩行の人類がアフリカに登場するのが現在から数百万年以前であり、原人、旧人と経由して、我々の直系の祖先であるグリマルディとかクロマニヨンとか山頂洞人に代表される新人(ホモ・サピエンス・サピエンス)が誕生したのが数十万年以前というのが通説である。

 問題は登場以後の等比級数どころではない増加の趨勢である。等比級数は増加する比率が一定であるが、人類は時間とともに比率自体を増大させてきた。計算の過程は省略するが、狩猟生活をしていた時代には年率0.003%、農耕生活に移行してからは年率0.03%、産業革命以後は0.3%、さらに最近は3%になっている。その結果、過去10万年で地球の人口は数百万人から数十億人と千倍に増大した。

 人間一人あたりのエネルギー消費も、時代とともに比率が増加する傾向で爆発した、狩猟生活では一日に自分の肉体を維持する2500キロカロリー程度であったが、現在では一日に約25万キロカロリーを消費するようになっており、過去10万年で百倍も増加している。両者を掛算してみると10万倍であり、地球の46億年の歴史の0.002%程度の時間で人類が消費するエネルギーが爆発したのである。


■破壊される地球の微妙な均衡

 これが二種の環境問題の原因である。第一は生態の破壊である。地球の生物は食物ピラミッドといわれる関係を構築している。エサとなる生物が下位に、エサとする生物が上位にあり、上位ほど少数になっていく。人間はピラミッドの頂点に君臨しているから少数でなければならないが、異常な増殖をしたために全体の均衡を破壊しているのである。それが前回にも説明した森林の消滅とか生物の絶滅である。

 第二は地球環境の破壊である。動物が排出する炭酸ガスを植物が酸素に還元したり、排泄された汚物を細菌が分解したりというように、食物ピラミッドと同様に地球も微妙な均衡を維持しながら成立している。しかし、その関係のなかに、突然、人間が原因のエネルギー消費による炭酸ガスの排出が爆発した。これが地球大気温度の上昇に集約される環境問題の構図である。この解決についても次週から検討していきたい。



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