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論文

■世界から借地している日本

 人間は生存するために様々な土地を必要とする。まず日常の生活のためには住宅を建設する土地、毎日の仕事をするためには工場やオフィスを建設する土地、週末に旅行をすれば宿泊施設や余暇施設のための土地、それ以外にも病院、学校、役所など公共施設を建設するための土地、そして、それらの施設を相互に連絡する道路、鉄道、空港、港湾などを整備する土地も必要である。

 もちろん、これらの土地だけで人間は生存できない。食糧を生産するための農地や牧場、木材を伐採するための森林、石油や石炭などのエネルギー資源を採掘するための土地、さらには人間が排出する炭酸ガスを酸素に還元してくれる植物が繁殖する森林なども必要である。そして土地ではないが、漁業のための海面、農業用水や工業用水を取水するための河川も人間の生存にとって重要な空間である。

 このように人間が地球で生存するために必要な土地の面積の合計はエコロジカル・フットプリントと命名されている。人間が自然環境に刻印している足跡という意味である。世界各国の数値を計算した結果があるが、日本の場合、4.8㌶となっている。ところで、日本の国土面積は3780万㌶であり、これを人口で割算すると一人あたり0.3㌶にしかならない。海面を追加しても0.7㌶である。

 4.1㌶も不足しているのに、我々が生活できている理由は外国の土地を借用しているからである。日本国内の農地面積は470万㌶であるが、日本へ輸出する作物を栽培している海外の農地面積は1200万㌶にもなる。石油も石炭も100%輸入であるし、材木も約20%しか自給していないから、海外の土地に依存している。自国の国土だけで成立しない生活をしているという現状は憂慮すべき状態である。


■定員超過になっている地球

 しかし、さらに憂慮すべき事態がある。世界全体のエコロジカル・フットプリントを計算してみると一人あたり2.3㌶であり、地球が供給できる面積より0.4㌶も超過していることである。簡単にいえば、地球が1.2個なければ世界の人々は生活できないが、現状では一部の人々の我慢によって維持されているということである。そして世界が日本人並みの生活水準を要求すれば、地球は2.5個必要となる。

 生活水準を向上させるという人間の意欲がもたらした社会の発展は、結果として地球を定員超過の状態にしたということである。これを定員以内に回復しなければ、早晩、地球は破綻することになる。ここまでの3回は、現在の人間社会が直面している主要な環境問題を列挙してきた。新年からは、これらの問題を解決していくために、我々がしなければならない努力を紹介していきたい。



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