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論文

便利な技術は両刃の刀剣
技術は生活を快適にするが資源の消費も増大
生活水準を低下させる解決方法は実施が困難

■生活の向上に比例する資源の消費

 人間は時速4㌔㍍で歩行できるが、そのとき消費するエネルギーは45㌔㌍程度である。自動車は高速道路であれば時速80㌔㍍と人間の歩行の約20倍の速度で走行できるが、消費するエネルギーも単位距離あたり850㌔㌍と、歩行の20倍近いエネルギーを必要とする。飛行機になると時速800㌔㍍と歩行の200倍の速度で人間を輸送してくれるが、エネルギーも単位距離あたり360㌔㌍と歩行の8倍を消費する。

 そして1台の乗用車の重量は1㌧程度で人間の体重の約15倍の資源を使用し、500人乗りの航空機の機体の重量は170㌧程度で、乗客1人あたりでも人間の6倍の重量の資源を使用している。この両者は、これまでの技術に共通する特徴を明示している。人間が発明し利用してきた技術は生活を便利にしてくれるが、それに比例するように資源やエネルギーの消費を増大させることである。

 その一方、日本の自動車産業は部品も合計すると43兆円規模で国内総生産額の10%近くになるし、輸出も12兆円で日本の輸出の20%近くを分担している。さらに特許などの技術輸出でも自動車産業は9000億円であり、日本の技術輸出の6割に到達している。そして雇用についても関連部門を合計すると約490万人で、日本の就業人口全体の8%以上にもなる。経済の視点では大変な貢献をしているのである。

 しかし、このように自動車産業が成長し、自動車が社会に普及していくことにより、問題が発生している。70年代前半に石油危機が発生してから25年間で、日本の産業部門のエネルギー消費は1.05倍と5%増加しただけであるが、輸送部門は2.13倍にもなり、とりわけ旅客輸送の部門は2.74倍に増加している。同様に家庭電化製品の普及により、家庭でのエネルギー消費も2.17倍の増加である。


■生活を低下させずに問題を解決する方法の模索

 人間は生活の向上を目指して努力し、結果として経済を発展させてきた。しかし、それが地球規模の環境問題の元凶となった。この構造から脱却することが21世紀の課題である。簡単な方法は生活水準を低下させることである。これには二種の問題がある。第一は経済を縮小させることである。昨夏のクールビズは冷房温度を上昇させるという生活水準の低下を推進したが、同時に電力消費も減少した。

 第二の問題は、このような努力をする企業や国家は相対として不利になるから、推進しない組織が出現することである。代表はアメリカや中国であり、炭酸ガス排出が世界第一と第二の両国は京都議定書に参加していない。ブッシュ米大統領が明言したように、法案を批准することはアメリカ国民の利益にならないのである。生活水準を低下させて解決するという方策は実現が困難であり、別途の方法が必要とされる。



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