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論文

 今日は子育てに進出する情報技術「ベビーテック」について紹介させていただきます。
 明後日3月3日は桃の節句ですが、桃の節句に付き物の雛人形の売行きが縮小しています。
 1990年頃には600億円程度でしたが、2000年頃に500億円程度になり、最近では440億円に低下しています。
 理由は家が狭くて飾る場所がない、伝統の行事への関心が薄れているなどもありますが、やはり女の新生児の数が減っている影響が大きいようです。
 1990年には約60万人でしたが、2000年には58万人、2010年には52万人と減っていき、2015年には50万人の大台を割って49万人になってしまいました。
 1950年には100万人を超えていましたから半分以下です。
 その背景にある理由の1つが女性の未婚率の増加で、25歳から29歳の女性の未婚率は1990年の40%から、4分の1世紀が経過した2015年には61%に増えています。
 30歳から34歳でも同じ期間に14%から35%になりました。
 それ以外にも、出産や育児に費用がかかる、共稼ぎ夫婦が増加しているにもかかわらず保育施設が不足しているという社会情勢や、2世代以上が一緒に住む家族が少なくなったため、子育てに不安がある夫婦が多いという背景もあります。

 そこで風が吹けば桶屋が儲かるような話ですが、現在の最新の情報技術であるIoTや人工知能を利用して子育てを支援する商品が一気に登場してきました。
 これは「ベビーテック(赤ちゃん技術)」と名付けられ、今年1月にラスベガスで開催された世界最大の家庭電化製品の見本市「CES(コンシューマー・エレクロトニクス・ショー)2018」では、この分野だけの展示も行われ、「ベビーテック・アウォード」という表彰制度まで登場しました。

 そこで、その表彰制度で受賞した商品などを含めてベビーテックとはどのような技術か実例を紹介したいと思います。
 まず子作りからと、スマートフォンを利用して妊娠の支援をする装置「iセンサー」が開発されています。
 付属の排卵検査キットに尿をかけて、そのキットをスマートフォンのカメラの前に置くと、色の変化で妊娠の可能性を三段階で示すもので、精度は99%と宣伝されています。
 めでたく誕生したら授乳に進みますが、「ブルースマートmia」は市販の哺乳瓶に専用の装置を装着して赤ちゃんにミルクを与えると、飲んだ量、時間、ミルクの温度などをスマートフォンに送信します。
 情報は3ヶ月間保存されるので、赤ちゃんの調子が悪いと思ったら、そのデータを医者に送信することも可能です。
 次は赤ちゃんの健康管理ですが、「テンプトラック」という装置は赤ちゃんの体にウェアラブル・センサーを貼り付けておくと、48時間、体温を測定しスマートフォンに送ってくれるので、いちいち体温計で測らなくても体調が分かりますし、一定の体温を超えるとアラームが鳴るようになっています。
 ウェアラブル・センサーを体ではなく、紙オムツに貼り付けて、赤ちゃんがおしっこをするとスマートフォンに連絡し、オムツを交換した時間やおしっこの時間を記録する製品もあります。
 健康であれば、ぐっすり眠ってほしいのですが、そのための生後6ヶ月までの赤ちゃんを対象にした「スヌー」という揺り籠があります。
 これは揺り籠が赤ちゃんが母親の胎内に居た時と同じような揺れ方をし、さらに大人しいときにはゆっくり、泣いているときにはやや早く揺らし、人間が抱く時と同じような振動を与えます。
 会社の映像によると、泣いている赤ちゃんが数秒で眠りに落ちる様子が紹介されて居ます。

 もう少し子供が大きくなると自動車に乗せるチャイルドシートが必要ですが、「サイベックス・シロナM」は、座席の使用状況を記録し、シートベルトを子供が自分で外すなどの異常があると、スマートフォンに警告が送られます。
 さらに成長すると教育が親の関心になりますが、子供の持物や洋服にマイクロフォンのついたセンサーを付けておき、遊んでいる時の言葉や、親と話している時の言葉をスマートフォンに記録し、それを評価して子供の教育について親にアドバイスする「ワードル」という技術です。
 香港科学技術大学の調査によると、言語能力が30%早く向上したという結果が報告されています。

 これらはアメリカの製品ですが、日本でも技術が開発されています。
 富士通九州システムサービスが開発した技術は、スマートフォンで撮影した赤ちゃんのウンチの映像を、人工知能を駆使した画像解析技術が分析し、その情報を医師に送って診断の参考にするものです。
 このような例もありますが、全体的にアメリカやヨーロッパに比べると、ベビーテックだけではなく、IoT技術、人工知能などを様々な分野に応用する商品について日本は大きく出遅れています。

 それを示すいくつかの国際比較情報があります。
 日本の人工知能に関係する論文の数はアメリカの8分の1で、世界の10位、特許はアメリカの3分の1、中国の2分の1、情報科学分野の大学の評価で上位100位を調べると、アメリカが30校、オーストラリアが8校ですが、アジアでは韓国が6校、中国が5校、香港が4校選ばれていますが、日本は3校でしかありません。
 国の情報競争力を比較した昨年の順位では1位がシンガポール、7位が香港、12位が台湾、19位が韓国ですが、日本は27位です。
 オリンピックのメダル数に一喜一憂することを否定するわけではありませんが、このような順位を憂慮し、これからの情報社会で発展する戦略を推進しないと、情報後進国に定着しかねないと心配です。





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