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論文

 最近、話題になることが多い「eスポーツ」が、今回の東京五輪大会には間に合いませんが、いずれオリンピック大会の正式競技になるかも知れないということを紹介させていただきます。
 最初にeスポーツは何かを説明しますと、エレクトロニック・スポーツの略称で、コンピュータ・ゲームやビデオ・ゲームなど電子機器を使って行う競技のことで、スポーツ競技、格闘競技、射撃競技、パズルゲームなどがあります。
 以外にも歴史は古く、最初のコンピュータ・ゲームは1962年にマサチュセッツ工科大学の学生が研究室のコンピュータを使って作った「スペースウォー!」という、宇宙船同士がミサイルで相手を撃破するゲームとされていますから、60年近い歴史があります。
 このような汎用コンピュータを使うゲームではなく、簡単な専用装置で行うゲームとしては、1976年にワーナー・コミュニケーションズがゲームソフトをカートリッジで発売する「アタリ2600」という装置を発売したところ、アメリカの全家庭の3割に普及するというヒットになり、以後、日本のセガ、タイトー、エポック、任天堂、ナムコ、ハドソンなどが次々と登場し、1983年に任天堂の発売した「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」が世界に6200万台も売れるほど爆発し、人気ゲームの「スーパーマリオブラザーズ」は4000万本も売れるということになりました。
 その功績でゲームをデザインした任天堂の宮本茂さんは今年の文化功労者になっています。

 このようなゲームがオリンピックの競技種目になるか疑問に思われるかも知れませんが、いくつかの根拠があります。
 まず近代オリンピックは1896年にアテネで開かれてから120年以上が経過していますが、その間に競技種目は急速に増加してきたことです。
 第1回大会の種目数は43でしたが、前回のリオデジャネイロ大会では306に増え、来年の東京大会では339になりますから、ほぼ8倍になったことになります。
 ただし、増えただけではなく、消えた種目もあります。
 現在では動物保護団体の反対で実行不可能な種目は、1900年に開催された第2回のパリ大会では生きたハトの射撃大会がありました。
 約300羽のハトが標的となり、優勝者は21羽を撃ち落としましたが、流石に反対もあり、次回からはクレー射撃に変わりました。
 第2回から第6回までは8人の選手が綱引きをする競技があり、初回のアテネ大会では塔から垂らされた15メートルの綱を腕の力だけで登る綱登り競技もありました。
 それ以外にも潜水時間と潜水距離を競う競技、水中障害物競技など消えた種目がある一方、前回の東京大会では柔道が正式種目となり、1988年のソウル大会ではテコンドーが公開競技として行われ、2000年のシドニー大会から正式種目路なったように、栄枯盛衰があります。

 したがって、eスポーツも公開競技から正式種目となる可能性は十分にあると思います。
 その背景として、eスポーツは大変に人気のあるスポーツでということです。
 まず競技人口が多数という強みがあります。
 世界で最多の競技人口を誇るスポーツはバレーボールの5億人、2位がバスケットボールで4億5000万人、3位がサッカーで2億6500万人、4位がクリケットで1億5000万人です。これは意外と思われるかも知れませんが、人口が13億人にもなるインドで愛好されているスポーツということが影響しています。
 その次がeスポーツで1億人にもなり、ゴルフの6500万人や野球の3500万人を大きく上回っています。
 第二はゲーム大会をテレビジョンで観戦する人数が圧倒的に多いことです。
 既存のスポーツで観客数が最も多いのは2月上旬の日曜日に開催されるアメリカンフットボールの決勝戦「スーパーボウル」ですが、今年の大会の視聴者数は9800万人でした。
 ところが「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」という世界で1億人以上の人が遊んでいる格闘ゲームの世界チャンピオンを決定する大会のテレビジョンでの視聴者数は1億2800万人で世界最高の視聴者数を誇っています。
 オリンピックでの競技に賞金はでませんが、ゲーム大会の賞金も巨額です。
 世界最大の賞金が提供されるスポーツ大会は4年に1回開催されるヨーロッパのサッカー大会のUEFA欧州選手権が桁違いで賞金総額が約1000億円、ウィンブルドンのテニス大会が約50億円ですが、今年の7月にニューヨークで開催された「フォートナイト」というeスポーツ(戦闘ゲーム)の世界大会では世界の4000万人から勝ち抜いた100人が戦ったのですが、この大会は賞金総額が約32億円、優勝した16歳の少年は3億2000万円を獲得しています。
 参考までに、今年8月に渋野日向子さんが優勝した全英女子オープンの賞金総額は約5億円、優勝賞金は7300万円ですから、eスポーツの威力が分かると思います。

 このような背景から、すでに国際的なスポーツ大会にeスポーツが進出を始めています。
 昨年、インドネシアのジャカルタを中心として開催された第18回アジア大会では正式競技としてではなく、公開競技としてeスポーツ競技大会が開催され、2022年の次回のアジア大会を開催する中国の杭州は昨年、都心の広大な地域に「eスポーツタウン」を建設して産業としてeスポーツを発展させようとしていますから、正式競技となるかも知れません。
 実は日本でも、今年9月から10月にかけて茨城県で開催された「いきいき茨城ゆめ国体2019」では、大井川和彦知事がゲーム関連企業出身ということもあり、茨城県をeスポーツの聖地にするという目標の一環として「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」が開催されました。
 ゲームは「ウイニングイレブン(ウイイレ)2020」というサッカーゲーム、「グランツーリスモ」というカーレース、「ぷよぷよeスポーツ」というパズルゲームの3種目ですが、会場には1000人以上の観客が見物する盛況でした。
 このように日本でも動きが出てきましたが、残念なことに日本はeゲーム小国で、市場規模を金額で示すと、1位はアメリカで37%、2位が中国で15%、3位が韓国で7%ですが、日本は0・5%でしかありません。
 かつて任天堂などがコンピュータ・ゲーム世界を先頭に立って開拓してきた日本としては、来年のオリンンピック大会では公開競技を開催して出遅れを取り戻して欲しいと思います。





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