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先々週は、現在、予選リーグが終わって決勝トーナメントが始まっている「UEFA・EURO2016」というヨーロッパのサッカー大会について、スポーツの試合としてだけではなく、国家や民族の背景を知って観戦すると、一層興味が湧くということを紹介させていただきました。 しかし、時差があるので、中継が深夜から明方になり、テレビジョンで観戦するのも大変ですが、今週27日からはテニスのウィンブルドン選手権大会が始まって、ますます睡眠不足も深刻な事態になってきました。 しかし、今日はテニスの観戦方法を紹介するのではなく「ウィンブルドン現象」といわれる社会現象について御紹介したいと思います。 このテニス大会は正式には「ザ・チャンピオンシップス」と言われるテニス大会ですが、ロンドン郊外のウィンブルドンにあるテニスコートで開催されるので、通称「ウィンブルドン大会」と言われています。 1877年から男子シングルスのみで競技で始まった140年の歴史をもつ由緒ある大会ですが、1884年から女子シングルスと男子ダブルス、1913年から女子ダブルスとミックスダブルスが追加され、現在の形になりました。 最初はイギリスの国内大会でしたので、優勝者は当然イギリス人でしたが、次第に外国人が参加しはじめ、1907年にオーストラリア人(ノーマン・ブルックス)が優勝してから外国人が優勢となり、1936年にイギリス人(フレッド・ペリー)が優勝して以来、外国人が優勝する大会となり、2013年にアンディ・マレーが優勝するまで77年間、自国選手は優勝できませんでした。 日本のことわざで言えば「庇を貸して母屋を取られる」という状態になり、これを「ウィンブルドン現象」または「お座敷稼業」というようになったのです。 ここまで御紹介すると、すぐに思い当たるのが、日本の大相撲やゴルフ大会です。 大相撲は幕内だけに限ってみても、1990年代は4、5人が外国人でしたが、2005年頃から一気に2桁になり、最大の2011年には幕内力士42人中19人、45%が外国人になりました。 現在でも36%の15人が外国人で、最高位の横綱は3人ともモンゴル出身という状態です。 国内ゴルフ大会についても、女子では毎週、アン・ソンジュ、シン・ジエ、イ・ボミなど韓国人が優勝の常連ですし、最近では台湾のフェービー・ヤオ、タイのチュティチャイなども登場しています。 男子でも、今年の7回の大会のうち3回で韓国のキム・キョンテが優勝し、それ以外にもチョ・ビョンミンなど2人が優勝しており、日本のゴルフ大会もウィンブルドンと同じ状態になっています。 このような状態に対して、外国人の参入を規制する対応が取られています。 大相撲は正式ではないにしろ国技ということになっているため、上位を外国人に占拠され、勝負に勝てば良いという、相撲の精神を理解しない外国人が増えることに対する国民感情を慮って、1990年代から規制が行なわれています。 まず1992年には現役の外国人力士を総数で40名以内に制限します。 2002年には総数の制限を止めて、各部屋に1人だけ認めることに変更し、54部屋があるので、54人に増加しました。 そこで外国人を帰化させて日本国籍にするという抜け道が登場し、2010年には帰化した力士も含めて1部屋で外国出身者を1人にしました。 サッカーは「UEFA・EURO2016」のようなナショナルチームの対抗試合は別ですが、クラブチームが戦うイギリスの「プレミアリーグ」、スペインの「リーガ・エスパニューラ」、イタリアの「セリエA」などはEU国籍の選手は外国人と見なさないので、イタリアのインテルやイギリスのアーセナルでは先発選手全員が自国以外という場合まで出現しています。 一方、日本の「Jリーグ」の場合、いくつかの例外規定はありますが、外国人は各チーム3名までを原則としています。 日本のプロ野球では、入団する外国人選手には制限がありませんが、試合に出場登録できる選手には「投手と野手で合計4人まで」と決められています。 一長一短がありますが、スポーツ以外のウィンブルドン現象を見るとヒントがあります。 イギリスはサッチャー政権のときに金融市場の規制緩和をしました。 その結果、イギリスの銀行が何行も外国資本に買収されましたが、ロンドンの金融街シティは世界の金融センターいう立派な座敷に発展しました。 ウィンブルドン大会もだれでも受入れる大会にした結果、イギリス人は勝てないものの、一地方の大会から世界四大大会の有名座敷になりました。 外国に競合する団体がない相撲は別にして、自国選手の人数に固執すれば、ピート・ローズがイチローの日米通算安打4000本達成のときに「日本の記録も加えるなら、自分のマイナーリーグのときの安打数を加えてくれ」と言ったように、水準が違うということなるし、サッカーのようにワールドカップやオリンピックが目標となる分野では、自国の水準で満足しているのは得策ではないと思います。 カーター大統領の安全保障特別補佐官をしたブレジンスキーが書いた世界戦略の本の中で、アメリカがソビエト連邦を崩壊させて世界最強の国になった原因は、世界一の軍事力、経済力、技術力以外に「粗野ではあるが世界若者を魅了して止まない文化力をもったことだ」と書いています。 田中将大も前田健太も、あまりバントなどしないで振り回すだけの粗野なメジャーリーグに憧れて行ってしまいますし、松山英樹も岩田寛も、宮里藍も宮里美香も上田桃子も規制のないアメリカのPGAやLPGAに行ってしまいます。 さらに閉鎖的な年功序列の講座制が残っている日本の大学に見切りを付けて、大学からアメリカへ行ってしまう若者も増えています。 やはり、外国人に席巻されるからといって閉鎖的にすればお山の大将にはなれるものの世界からは評価されません。 開かれた桟敷にして、そこの主になれるように努力をすることが重要だと思います。 |
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