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論文

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会も、今週の初めに追加種目の候補が8種類決まり、次第に準備が進んでいますが、このような大規模な国際スポーツ大会では、競技の場所を提供するだけではなく、開催される地域の文化を世界にアピールする場所にすることも重要な目標になっています。
 そのような文化としては、最近では和食や温泉、伝統芸能などが常連になっていますが、日本人にとっては常識となっているようなことも、海外から日本に来る人にとっては立派な「おもてなし」になるという視点も重要だということを実例で紹介してみたいと思います。

 動画サイトの「ユーチューブ」で「7分間の奇跡」という1分40秒ほどの動画が人気になっています。
 これは東北新幹線の列車が東京駅に到着し、乗客が降りた後、次の発車まで7分間しかない間に清掃員の人たちが車内をテキパキと清掃し、終わると一列に並んで一礼をする様子を早送りで紹介する内容で、アメリカのジャーナリストが製作した動画です。
 ユーチューブでも260万回以上視聴されていますし、香港の動画サイトに移植されたものは1週間で700万回も視聴されています。
 中国のツイッター「微博(ウェイボー)」にも紹介され、「トイレを見れば中国の新幹線が負けていることが分かる/これが可能なのは、乗客がゴミを車内に捨てないからだ/民度が高くなればゴミも少なくなる」などの反響があるそうです。

 このような我々が当たり前と思っているのに、違う視点から見ると素晴らしいという日本の特徴は大きく3種類に分けられます。
 「安全」「清潔」「便利」です。
 安全で驚かれるナンバーワンは、地方の道路沿いにある「野菜や果物の無人販売所」です。
 ツイッターなどで「イギリスではモノのついでにカネまで盗んでいく」「アメリカならカネを奪われて、農家の人はぶん殴られる」「こういう社会に住みたい」などの反響があります。

 同様に「自動販売機」も驚きの対象です。
 外国にもありますが、それらは駅構内や繁華街など人通りの多い場所にしか設置されていないのに、日本では田舎の畦道にまであり、外国から来た人は金庫が無人地帯に放置されていると驚きますが、これも安全な国ならではの特徴です。
 参考までに日本国内には自動販売機は550万台あり、アメリカの770万台より少ないのですが、人口あたりでは日本が2・7倍普及しています。
 小学生が一人で電車通学することも安全な国を象徴していますが、「自分の国では法律違反で通報される」「フロリダでは200メートル先の中学校まで親が子供を自動車で送っていく」と驚かれています。

 「清潔」の分野での圧倒的1位は「トイレ」です。
 自動開閉する便器の蓋、排便するときの音を消す「音姫」、洗浄する温水の温度や強さの微調整など、やり過ぎの感もありますが、清潔では外国人の支持を受けています。
 それを示す世界の空港のトイレの清潔さの順位では関西国際空港が1位、成田国際空港が2位に入り、その効果もあり、空港全体の清潔さでも2位が羽田国際空港、3位が中部国際空港、4位が関西国際空港、6位が成田国際空港と、日本の主要空港はすべて10位以内という成果をあげています。
 「モノクル」という雑誌が世界の主要都市を実際に訪問した人のアンケート調査で順位をつけていますが、都市全体の清潔さで東京は1位であり、16項目の総合順位でも2位になっています。
 さらに10位以内に、9位京都、10位福岡と3都市が入っています。
 それ以外に清潔の視点から評価されているのは、室内で靴を脱ぐ習慣、マスクをしている人が多い、水道水が飲める、セルフサービスの食堂などで食器や残飯を客が片付けているなどが驚きの対象になっています。   

 「便利」についても多くのサービスが驚きをもって評価されています。
 「コンビニエンス・ストア」はアメリカが元祖ですが、日本でガラパゴス的発展をし、狭い空間にも関わらず品揃えが豊富という以外に、様々な請求書の支払、チケットの購入、プリントサービスなどが可能ということが便利と評価され、ガラパゴス現象であったものが逆輸出され、世界標準の方向に向かっています。
 「100円ショップ」も人気です。
 アメリカには1ドルショップ、ヨーロッパには1ユーロショップがありますが、日本は圧倒的に品数が多く、しかも100円で買えるとは想像できないほどの品もあることで好評です。
 正確に到着する「鉄道」も「便利」と人気です。
 新幹線で「1分遅れて到着し申し訳ありませんでした」という車内アナウンスは伝説になっていますが、世界の鉄道で圧倒的な正確さです。
 数十年前にブラジルに行ったときに現地の人から面白い話を聞いたとこがあります。
 日本の政府要人がブラジルで鉄道移動するとき、事前に領事館の人からブラジルの鉄道は大幅に遅れますからと言われていたのですが、当日、ほぼ定刻に駅に列車が入ってきたそうです。
 要人が「俺くらい大物が来ると政府も気を遣って正確に運行するな」と言ったところ、24時間遅れの到着だったという笑話のような本当の話です。
 その正確さのために、日本の鉄道の利用者数は世界で圧倒的に多く、駅での年間乗降客数の順位では1位の新宿駅の12億6000万人から23位までが日本の駅で、外国で最初に登場するのは24位のパリ北駅で1億9000万人、25位の台湾の台北駅の1億8000万人などですが、50位までの45駅が日本の鉄道駅です。
 もちろん、いい点だけではなく、住宅を借りるときの敷金、礼金、仲介手数料などが高い、役所の手続が煩雑、包装が過剰、テレビジョン番組が下らないなど批判もありますが、様々な国際大会を日本人には当たり前過ぎて気付かない「おもてなし」を世界に発信する機会に出来ればと思います。





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