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論文

 先週の土曜日に、私の住んでいる団地でフリーマーケットが開催されたので、出店してみました。
 目的の一つは「欲」です。
 自宅にある本が増えて、家庭内紛争の原因になっており、少しずつ整理しようと、しばらく前に800冊ほどを古書店に引取ってもらったところ、8000円、つまり1冊10円でした。
 中には定価が1万5000円もする、なかなか手に入らない本も何冊かあったのですが、厳しい世の中の現実を知りました。
 そこで今回は住んでいるアパートの足元で開かれるフリーマーケットに古書を並べて、もう少し稼ごうと捕らぬタヌキの皮算用で出店したという次第です。
 東京都公安委員会の古物商の登録も済ませ、用意万態で望んだのですが、結果は、200冊ほど並べて3時間の店番をした結果、15冊が売れ、売上は2600円でした。
 出店料は無料で、机や椅子も無料だったので経費はかかっていませんが、時給にしてみれば870円で、マクドナルドのアルバイト並でした。

 実はもう一つの目的がありました。
 昨年から流通業の仕事に関係するようになったのですが、これまでまったく経験のない分野なので、自分でモノを売ってみれば多少は分かるのではないかと思ったことです。
 専門の方には常識だと思いますが、いくつか分かったことがありました。
 第一は立地が重要ということです。
 まず私の店の立地ですが、申込んだのが遅かったことも影響して、会場の端の人通りの少ない場所を割振られたため、3時間の間に冷かしも含めて立寄った人が数十人でしたから、逆に15冊も売れたのは立派だったかもしれません。
 さらに建物で囲まれた中庭のような場所が会場で、外部の人は入って来ないし、住人は2000人程度ですが、行楽日和で出掛けている人も多く、会場自体に立寄った人が200人いたかどうかで、これも問題でした。
 人が集まる場所に開業しなければ、モノは売れないということです。

 第二は品揃えです。
 私の買った本ですから、環境問題とか技術の歴史などの本が中心で、多くの人が小説などを期待されて覗かれましたが、まったく期待に応えない品揃えでした。
 以前、インターネット古書店を開業したこともありましたが、これはホームページや本の目録を作るために数十万円を投資しましたが、6年ほど運営して10万円も売れない赤字のため、閉店しました。
 そこで日本で売上がベスト5に入るインターネット古書店を運営している友人に、その秘訣を聞いたところ、売れる本を揃えることだ、というごく普通の答でした。
 彼は毎週のように業界の競り市に出掛けて、売れそうな本を落札して販売していたのですが、自分の不要になった本を売ろうという精神では商売にならないことを痛感しました。

 第三は値段です。
 私の向いの店は5つくらい新品のゴミ箱や手動の掃除機などを売っていましたが、すべて100円から300円程度で、15分くらいで完売して、さっさと店仕舞して帰って行きました。
 一方、隣の店は、貰い物の酒などを売っていましたが、定価の半額くらいの値付けであったため、最後までかなりが売れ残っていました。
 薄利多売で処分するか、少数精鋭で稼ぐかは難しい課題だと実感しました。

 折角、フリーマーケットの経験をしたので、このようなマーケットの実情を調べてみたところ、なかなかの規模だということが分かりました。
 商業統計表の自動車を除く中古品小売業の年間売上を調べてみると、1988年には1000億円程度でしたが、順調に増加し、20年後の2007年には4300億円になっています。
 これは年率7%の成長ですから無視することはできません。
 この背景には環境問題の解決の方法として3R(リデュース/リユース/リサイクル)が重要といわれるようになり、その中のリユース、再利用が伸びていることが背景にあると思います。

 さらに日本リユース業協会による2012年度の統計によると、リユース市場規模は中古自動車を除いた売上が1兆2000億円程度ですが、衣料品スーパーの1兆5000億円に近い数字ですから、新しい流通業と考える必要があります。
 その内訳はリユース専門店で購入するものが43%、ネットオークションで購入するものが29%、ネットショップで購入するものが25%で、フリーマーケットは3%程度で、金額にして360億円程度です。
 しかし、フリーマーケットが普及しているアメリカでは、全米に定期的に開かれるフリーマーケットが多数存在し、年間に1億5000万人が買物に訪れ、売上は3兆円を越え、日本の80倍以上の規模です。
 仮に人口比でマーケット規模が決まると想定し、アメリカ並になるとすれば、フリーマーケットだけでは1兆2000億円に成長する可能性はあります。

 しかし、ネットオークションとネットショップというインターネットを利用して購入する割合が54%と半分以上になっていることは新しい問題を提起しています。
 まず、私が経験した店の立地が悪いとか、商圏人口が少ないという問題は関係なくなります。
 アマゾンの書籍販売が象徴するように、書店の店頭には置けない膨大な書籍もサーバーの情報として検索できればいいので、品揃えが購買客の期待に一致しないという問題も存在しなくなります。
 さらにインターネットオークションであれば、値段を決めるのも相対でおこなわれることになりますから、どのくらいの値付けをするかを迷うこともなくなります。
 ヨーロッパでは17世紀から存在しているフリーマーケットはリユースの時代には重要な流通形態になる可能性がありますが、ここにもITによる変革の波が押し寄せているのだと思います。





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