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論文

 一昨日、第47回衆議院選挙が公示され選挙戦が始まりました。
 唐突な選挙に至った大きな根拠は消費税を10%に値上げすることの延期の是非について国民に信を問うということになっています。
 消費税は最高のハンガリーの27%からカナダの5%まで様々ですが、世界の50カ国以上で実施されており、それほど珍しい税金ではありません。
 国家を運営する財源として税金は必要ですから、政府は知恵を絞って色々な税金を検討していますが、珍しいものも少なくありません。

 歴史的には珍しい税金は多数あり、オランダのアムステルダムの運河沿いには間口が狭く奥行きの長い4、5階建ての住宅が並んでいますが、これは16世紀後半から17世紀にかけて、間口の幅によって課税された影響ですし、日本でも天明年間(1780年代)の田沼意次の改革のときには間口に応じた税金を徴収したため、京都などに「ウナギの寝床」と言われる細長い町屋が出現する原因になりました。
 これらは驚くほどではないかも知れませんが、驚くような税金もあります。
 フランスのルイ15世の時代にはイギリスとの七年戦争や王室の浪費の影響で財政難になり、財務長官は空気に税金をかけようとしましたが、国民の大反対で実施できず、逆に自身が退官する羽目になりました.
 18世紀初頭のロシアのピョートル大帝はスウェーデンとの北方戦争のために税収を増やす必要があり、帽子税、ヒゲ税、風呂税、煙突税、キュウリ税など、色々な物に課税をしようとしましたが、いずれも国民の反対で大半は実現しませんでした。

 このような過去の事例だけではなく、現代にも意外な税金があります。
 最近、話題になっているのが「ソーダ税」です。
 炭酸飲料に1缶あたり10円程度を課税しようという制度です。
 これは税収を増やすという目的もさることながら、「肥満税」と呼ばれることもあるように、肥満など生活習慣病を減らして医療費の削減を狙ったものです。
 一昨年、ニューヨーク市で導入が決定されましたが、清涼飲料水業界の反対と、課税される場所が映画館や飲食店に限定されていたため、ニューヨーク州の裁判所が制度に一貫性がないと差し止めたため実現しませんでした。
 しかし、カリフォルニア州バークレーでは来年1月から実施されることになりましたし、アメリカの30以上の都市やフランスでも検討されています。

 この「国民の健康を願っての税金」は、それ以外にもデンマークでは2011年10月からバターやチーズなど乳製品に課税する「脂肪税」が導入されました。
 しかし、食品価格が値上がりし、国民が隣国のドイツへ買い出しにいくようになって国内の小売業が不振になったため、2012年12月に廃止となり、1年2ヶ月の寿命でした。
 しかし、ハンガリーでは2011年9月から「国民の肥満防止を目的として」導入されている、スナック菓子、清涼飲料、ビスケットなどに課税する通称「ポテトチップス税」があります。
 税金はポテトチップス1kgあたり約96円、包装されたビスケットは約48円ですから、500グラム入のポテトチップスを1袋買うと50円程度の税金がかかることになります。

 ブルガリアは人口の減少が急速になったため、1968年に「独身税」を導入し、20歳以上の独身者には収入の3%から5%の課税をすることにしました。
 人口は1980年の886万人から5年後の1985年には896万人にわずかですが増えましたが、それ以後、減少しはじめたため、1989年に廃止されました。
 その廃止の影響かどうかは不明ですが、それから25年後の今年は720万人と30年間で180万人近く人口が減ってしまいました。
 少子化が社会問題になっている日本でも検討の価値はあるかもしれません。 

 贅沢品には税金をという発想も古来あり、日本では1957年から麻雀牌、トランプ、花札などに「トランプ類税」がかけられていましたが、1989年の消費税導入とともに廃止になっています。
 ドイツ、オランダ、スイスなどに存在する「イヌ税」や、日本で民主党政権時代に浮上した「ペット税」もこの類いかもしれません。
 しかし、イタリアでは財政再建のために年収50万ユーロ(約5500万円)以上の富裕層には一般の所得税に3%を上乗せした特別税を課す法案が提案されたことがあります。
 しかし、ベルルスコーニ首相の失脚とともに消滅しましたが、仮に成立していれば富裕層が海外に移住してしまい、逆に税収が減るという結果になるということが憂慮されました。

 環境問題など社会の問題を解決する税金も存在します。
 ロンドンには平日の午前7時から午後6時半に中心部に自動車で入ると8ポンド(約1500円)を支払う「渋滞税」が2003年から実現しており、この制度によって渋滞が30%減少したとされています。
 ニュージーランドは人口440万人の国ですが、ヒツジが3000万頭、ウシが1000万頭飼育されています。それらの家畜のゲップが地球温暖化に影響するという理由で、羊1頭につき約6円、牛1頭につき40円前後が課せられ、その税収で温室効果ガスの削減について研究するそうです。

 このように歴史を見ても現状を見ても、税金は為政者と国民の知恵比べの感があります。
 もちろん、社会を維持するためには財源が必要ですから、税金は避けて通れない制度です。
 しかし、 中国の五経(ごきょう)の一つとされる『礼記(らいき)』には「入るを量りて、出ずるを為す」という言葉があります。
 すなわち、どれだけの収入があるかを想定して、その範囲内で支出せよという意味ですが、現在の国家財政は、とにかく支出して何とか収入を得ようという逆転状態です。
 その結果、国と地方自治体の借金は1000兆円にもなり、国債費といわれる謝金の利払いが予算の4分の1にもなっています。
 過疎地域に高速道路や鉄道を整備するとか、人の住んでいない地域にまで巨大な防潮堤を建設するなど、再検討すべき歳出は数多くあります。
 ぜひ、収入に見合った支出をする方向に転換すべきだと思います。





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