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論文

 今日は世界の三大飲料について御紹介したいと思います。
 今年の夏は東日本では平均気温が平年より0・5度高く、一時的に酷暑でしたが、西日本では平年より0・3度低く、2003年以来、11年ぶりの冷夏となりました。
 特に西日本は広島地方に大変な被害をもたらした豪雨の影響もあり、日照時間が平年を下回る地域が多数ありました。
 そのような影響で今年の夏は清涼飲料の売上が芳しくなかったようですが、とにかく夏の頂点が終わり、そろそろ温かい飲み物の季節に移りはじめました。
 そこで世界の三大飲料を眺めてみようというわけですが、世界三大**には諸説があり、例えば「世界三大夜景」というとナポリ、香港、函館という説や、モナコ、香港、長崎という説などがありますし、「世界三大スポーツイベント」というとFIFAワールドカップ、オリンピック大会は当選確実ですが、3番目にはF1レース、ツール・ド・フランス、ラグビーワールドカップが登場して決着がついていません。

 同様に世界三大飲料も、コーヒーと紅茶など発酵茶は当選確実ですが、3番目はココアや、最近日本でも流行しはじめた南米大陸で消費されているマテ茶、発酵させない日本茶が挙げられます。
 そこで今日は日本茶を3番目として比較してみたいと思います。
 まず消費量を比較してみると、コーヒーは2013年、世界全体で900万トンが消費されており、紅茶など発酵茶は2009年の数字ですが395万トン、日本茶は10万トン程度ですから、量的には格落ちという印象ですが、値段となると負けていません。

 まずコーヒーですが、一般に高価なコーヒーとされているのはインドネシアのスラウェシ島で栽培されている「トラジャ・コーヒー」です。
 これは17世紀末にオランダが標高1000mから1800mで気温が年間20℃から22℃の高原地帯で栽培を始めましたが、第二次世界大戦中に衰退していました。
 1970年代になって、日本の会社がアラビカ種のコーヒーの栽培を復活させ、現在、トラジャ・アラビカ・コーヒーの頭の文字を集めて「トアルコ・トラジャコーヒー」として販売されています。
 これは100gで1000円程度ですから、コーヒー1杯では原価150円ですから格別に高いというほどではありませんが、インドネシアには桁違いに高価なコーヒーがあります。
 「コピ・ルアク」というコーヒーで100g1万円程ですから、1杯のコーヒーに15gのコーヒー豆を使うとして豆代だけで1500円という値段です。
 飲んでみたいという方のために製法を御紹介しますと、インドネシアのマレージャコウネコが生のコーヒーの実を食べると、コーヒー豆になる種は消化されずに糞の中に残っていますので、それを集めて洗って乾燥させ煎ったものです。
 インドネシア語で「コピ」はコーヒー、「ルアク」はジャコウネコの意味ですから、名前のままのコーヒーです。
 ジャコウネコは真っ赤に熟した甘味のある実だけを選んで食べるうえ、ジャコウネコの腸の中の酵素の働きで種が発酵し、独特の香りがつくとして珍重されているそうです。
 これは世界一高価なコーヒーということで、役に立たない発明発見を表彰するイグノーベル栄養学賞を1995年に受賞しています。

 しかし、紅茶になるとさらに高価なものが存在します。
 インドのダージリン地方のマカイバリ茶園で満月の夜に摘んだ新芽を手揉みで発酵させた「シルバーニードルズ」という紅茶の最高級品は100g1万5000円程度で販売されていますので、コピ・ルアクの5割増ということになります。
 日本茶にも高価なものがあり、「最高傑作玉露 屋敷の茶」という製品で、8g入の袋30個で5万4000円ですから、100gに換算すると約22500円で、シルバーニードルズの1・5倍ですし、お茶一杯が1800円という計算になります。

 しかし、世界は広く、まだまだあります。
 「節約ZINE」というウェブサイトに紹介されているのですが、台湾では蛾の幼虫が茶ノ木を食べて出した糞を拾い集めたものは100gで100万円、1杯分で6000円ほどになります。
 究極は中国の福建省北部の武夷山(ぶいざん)の上に4本だけ育っている茶ノ木から年間800gだけ採取される葉で作ったお茶で、20gの落札価格が280万円だったそうですから、100gでは1400万円、8gでお茶を出すとして、一杯112万円になります。
 お茶1杯で軽自動車1台という計算になります。
 しかも、原木を保護するため、2007年を最後に葉の採集を禁止にしたそうですから、いまでは幻の茶になりました。

 ところが最近、2006年創業の日本のベンチャー企業「ロイヤル・ブルーティ・ジャパン」がワイン並のお茶の販売をはじめました。
 太田昌孝さんが生産した平成25年の第52回農林水産祭で天皇杯を受賞した茶葉を使用し、3日間かけて水出ししたお茶をワインボトルに詰めた「キング・オブ・グリーンMASAスーパープレミアム」は15本限定で1本税込み32万4000円です。
 書道家武田双雲の筆になる文字が印刷された桐箱入とはいえ、ボトルの容量は750ミリリットルですから、小さい湯呑み茶碗1杯を70ミリリットルとすると1杯で3万円ということになります。
 フランスのブルゴーニュの赤ワイン「ラ・ターシュ」の2010年ものが日本で30万円前後で売られていますから、アルコールが入っていないのに超高級ワイン並です。

 嗜好品の世界には、歴史的に一般庶民の常識とかけ離れたものが存在しますが、世界を旅行すると、食事のときにお茶を無料で提供してくれるのは日本の特徴ということに気付きます。それが超高級品になるのは複雑な心境です。





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