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論文

 明後日の6月1日から3日までの3日間、横浜で第5回アフリカ開発会議が開かれます。アフリカの開発と貧困対策を支援しようという目的の国際会議です。
 英語では「TICAD(ティカッド)」と略されますが、最初のTは東京の意味で、そこからも分かるように日本政府が中心になって、国際連合、世界銀行、アフリカ連合などと共同で開催する国際会議です。
 1993年10月に東京で第1回が開催されて以後、5年毎に開催されていますが、前回の2008年に開催されたときには、41人の国家元首を含むアフリカの51カ国の首脳、アジアや欧米の34カ国の代表など、合計3000人以上が参加する大規模なものでした。

 そこで今日はアフリカについて様々な側面から紹介したいと思います。アフリカ大陸は日本の80倍の面積の土地に約10億人の人々が生活し、国際連合に加盟している国だけでも54ケ国もある地域です。
 アフリカに関心が集まる第一の理由は、やはり経済目的です。
 現在、アフリカ全体で人口は10億人ですが、2050年には22億人と2倍以上に増加するので、大市場になるという期待です。
 実際、2001年のアフリカ全体のGDPは60兆円弱でしたが、10年経った2011年には190兆円弱と3倍以上に成長しています。
 また、日本の経済成長は2011年にマイナス0・8%でしたが、アフリカ全体では3・4%ですし、ガーナなどは13・7%を達成しています。

 2001年に「BRICs」という言葉が作られました。これは成長が期待されるブラジル、ロシア、インド、中国という4カ国の頭文字を集めた造語ですが、最後のsは小文字で、上記の4カ国などという意味でした。
 ところが、2011年からは最後のSも大文字になり、サウスアフリカ、すなわち南アフリカ共和国が加わっています。
 しかし何といっても世界がアフリカに関心をもつのは豊富な鉱物資源です。
 ダイヤモンドの産出は世界の65%、プラチナも65%、コバルトは56%、クロムは41%、マンガンは34%、金は16%ですし、埋蔵量についても同様、多くがアフリカに集中しています。
 5月18日には東京で「日本アフリカ資源大臣会合」が、明後日からのTICADの前哨戦として開かれ、アフリカの15カ国の担当大臣が出席して資源開発について議論していますが、日本の関心を示しています。

 しかし、経済の視点だけからアフリカを見るのは間違いで、社会面でもアフリカは世界への影響力を持っています。
 例えば、国際連合の事務総長は現在の韓国出身のパン・ギムン総長まで8人が就任していますが、6代目のプトロス・ガリ(エジプト)、7代目のコフィー・アナン(ガーナ)と2名がアフリカ出身で、1992年から2006年まで14年間の複雑な世界のとりまとめをしていました。
 また、国際オリンピック委員会の115人の委員のうち15人はアフリカで、4人の副会長のうち1人もアフリカ(モロッコ)という具合です。
 ちなみに猪瀬東京都知事はニューヨークに2020年のオリンピック大会誘致の応援依頼に出掛けたそうですが、北米は6人しか理事がいないので見当違いですし、イスラム教国の委員は20名以上ですから、ニューヨークタイムズでの発言は大失敗であることが分かります。

 また男女の格差が小さいということでも日本より進んだ国が数多くあります。
 世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表する男女格差指標で、最新の調査の135カ国中、格差の少ない方から数えて、アフリカではレソトが14位、南アフリカが16位、モザンビークが23位、ブルンジが24位、ウガンダが28位など、101位の日本よりはるかに上位に位置しています。
 これは数多くの内戦によって男性が多数死亡したという影響もありますが、ルワンダなどは憲法で議席の30%は女性にすると決め、その結果、56%が女性議員になっていますし、南アフリカも45%で3位です。
 参考のために日本は11・3%で99位です。

 もちろん、良い面だけではなく、問題もあります。
 まず貧富の差が大きいことです。
 所得上位10%の平均所得と下位10%の比を計算してみると、ブラジル、コロンビアに次いで3位が南アフリカで44倍、ナイジェリアが21倍で5位、ケニアが19倍で7位、ウガンダが15倍で10位、コンゴ民主共和国が15倍で11位とアフリカに集中しています。
 このような所得格差の重要な原因は汚職や不正蓄財ですが、それを監視しているCPIという組織が世界の176カ国について評価しています。
 2012年の評価では、176位、つまり最下位がソマリア、173位がスーダン、165位がチャドとブルンジ、163位がジンバブエと赤道ギニアなど最下層に集まっており、30位のボツワナがアフリカでは最上位です。
 報道の自由についてはフリーダムハウスという組織が197カ国を評価していますが、194位がエリトリア、190位が赤道ギニア、182位がソマリア、179位がガンビアとコンゴ、177位がエチオピア、174位がスーダンとルワンダなど、これも同様に下位に集中しており、最上位のナミビアでも64位です。
 日本は記者クラブ制度の存在のため、評価は低く40位です。
 同様に民主主義が浸透しているかという調査も167カ国について実施されており、チャドが166位、中央アフリカが162位、赤道ギニアが160位、リビアが158位、ギニアビサウが157位、エリトリアが152位、スーダンが151位と下位に集中しています。
 これも日本は22位で何とか面目を保つという順位です。

 エイズの感染率でも問題があり、2011年の状態は、世界平均が0・8%であるのに比べ、アフリカ南部は4・9%ですが、そのなかでも南アフリカは17・3%にもなっています。
 このような長所と短所が混在するアフリカですが、やがて中国やインドを抜いて世界最大の人口を抱える地域になることは確実ですから、資源という経済目的だけではなく付合っていくべき地域だと思います。





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