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論文

 先週の17日にアメリカ航空宇宙局(NASA)が、木星の衛星の一つエウロパの表面を覆っている厚い氷の下に、アメリカの五大湖に匹敵する巨大な湖が存在する可能性があると発表しました。
 そうなれば当然、そこに生物が存在するかも知れないという期待が高まり、この発見に尽力したテキサス大学の研究チームは「生命の存在する可能性が高まった」と発表しています。
 実は、1960年代末に、地球の南極の氷の下4000mに、琵琶湖の20倍以上の面積をもつボストーク湖が発見され、その水温はマイナス3度と推定されており、まだ発見はされていませんが、生物の存在する可能性はあるとされていますから、エウロパにも生物が存在するかもしれないという期待は唐突ではありません。

 このエウロパはどのような星かというと、木星には65個の衛星が発見されていますが、それらのうち4個は1610年にガリレオが手製の望遠鏡で発見している比較的大型の衛星で、その中の4番目の大きさで、月の90%くらいの直径をもつ衛星です。
 このエウロパに生命が存在するという考えは以前からあり、有名な意見はSF作家アーサー・クラークが『2001年宇宙の旅』の続編として1982年に書いた『2010年宇宙の旅』に紹介されています。
 中国の宇宙船チェン号がロケットの推進剤として使う水を補給するためにエウロパに着陸しますが、そこに棲息していた生物に妨害されて全滅し、その後にソビエト連邦のレオーノフ号が着陸して、2001年宇宙の旅で行方不明になったディスカバリー号を発見するという話が展開します。
 そして結末は、1万8000年後の西暦20001年に飛び、ある生物がエウロパで進化し、原始的な社会を構成しているということになっています。

 アメリカの宇宙船ではなく、2010年には中国とソビエト連邦の宇宙船が活躍しているという想定は、すでに中国が人間の宇宙飛行に成功している現状や、現在では宇宙ステーションと地球を連絡する手段はロシアの「ソユーズ」しかないという状況を適確に予測しているという点でもアーサー・クラークのSF作家の能力を証明していますが、早い時期からエウロパに生物が存在することを予言していたことでも流石という内容です。

 ただし、水は生命の存在に必須の条件の一つですが、もう一つの条件として生命が活動するためのエネルギー源が必要です。
 ところがエウロパに注ぐ太陽の熱量は地球へ入射する30分の1程度ですし、厚い氷の層を通せば、100分の1以下になりますから、生物が活動するエネルギーとしては十分ではありません。
 そこでアーサー・クラークは木星表面で核融合が進行し、小型の太陽となってエウロパなどを暖めるという筋書きにしています。
 実際には、エウロパの内側を回っている衛星のイオでは火山活動が確認されていますから、エウロパでも地熱が発生しているとすれば、生命の可能性は期待されることになります。

 このような地球以外に存在する生物は地球外生命体、そのなかでも人間に匹敵する知能をもつ生物は地球外知的生命体と呼ばれ、人類は関心を持ってきました。
 この関心を科学的な問題にしたのが、アメリカの天文学者フランク・ドレークで、1961年に7個の変数の掛算からなるドレーク方程式という数式を提言し、その答えが地球の人類と交信できる知的生命体の存在する惑星の数になるということを示しました。
 その変数とは、銀河系で恒星が形成される頻度、その恒星で生命が存在することの出来る範囲にある惑星の平均的な数、その生命体が知的生命体にまで進化する比率などですが、ドレークが仮定した変数を代入すると10になり、少なくとも10個は存在すると期待される数値になりました。

 そこで、そのような知的生命体を探索しようというSETI(サーチ・フォー・エクストラテレストリアル・インテリジェンス)という計画が登場しました。
 そのひとつは地球から宇宙にメッセージを送るアクティブSETIと呼ばれるもので、1972年と73年にNASAが打上げたパイオニア10号と11号に、人間の男女の姿や太陽系の構成を示す図を描いた金属板を取り付けて、宇宙に送り出しました。
 さらに1974年には、プエルトリコにあるアレシボ電波天文台から2万5000光年の彼方にある球状星団M13に向けて電波が送信されました。
 もうひとつはパッシブSETIと呼ばれ、宇宙の知的生命体が発信している電波を受信しようと、電波望遠鏡で宇宙から飛来する電波を受信し、そのなかから規則的な信号を探しだすという努力が続けられています。
 しかし、残念ながら、これまでのところ、いずれの試みにも反応はありません。

 このような探査とは別に、天体観測の精度が上がり、地球と同様に水が液体の状態にある惑星を探す努力も進んでいます。
 そのなかで話題になったのが、地球から20・4光年の距離にあるグリーゼ581という恒星の周囲を回っている惑星です。
 これまで6個の惑星が発見されていますが、そのうち581c、581d、581gの3個は液体の水が存在する可能性があり、そうであれば生命体が存在する可能性もあると期待されています。

 人類と宇宙人の関係については、H・G・ウェルズの小説を原作とした『宇宙戦争』、テレビジョンのシリーズ作品『V』、『インディペンデンス・デイ』など、宇宙人が地球に襲来するという映画も多く作られていますが、1977年の『未知との遭遇』、1982年の『E.T.』など両者が友好関係を築く映画に人気があります。
 とりわけ『E.T.』は、1997年に『タイタニック』に抜かれるまでは世界最高の興行収入を記録しました。
 天涯孤独の人間が両親を捜し出す物語に人気があるように、人間も宇宙で孤独な存在ではないということを証明したいのではないかと思います。





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