TOPページへ論文ページへ
論文

 ゲームソフトウェアに「カーマゲドン」というゲームがありますが、最終戦争という意味で、現実にもそのような大事件が発生しています。
 今年の7月15日(金)の深夜から、ロサンゼルスを南北に走る高速道路405号線が2日間に亘って補修工事のために通行停止になった事件です。
 平均で片道4車線、広いところでは片道7車線もある大動脈で、世界三大渋滞道路の1本ですから、いくら週末とはいえ通行禁止になれば大混乱になるだろうと、市民は戦々恐々でした。
 そこで「アルマゲドン」にかけて「カーマゲドン」と名付けられたのですが、これはなかなか良くできた名前で、日本語でアルマゲドンは「終末」であり、カーマゲドンは「週末」に実施されたという訳です。

 自動車王国ロサンゼルスにも、現在では鉄道が復活しメトロレールが5路線、路線延長140kmほどが走っていますが、周辺人口を含めると1800万人の大都市は依然として自動車に依存していますから、2日間も高速道路が使用中止になれば終末的状況になると予想されたのも当然でした。
 ところが、完全な肩すかしで、405号線に接続している道路の交通量は普段の30%にしかならず、ほとんど問題は発生しませんでした。
 それは週末に自動車を使わないようにという大々的な広報活動と、鉄道やバスを無料にした成果ですが、結果として、自動車がなくても何とかなるではないかという気持を市民にもたらしました。

 なぜ2ヶ月も前の話題をご紹介したかというと、今日、9月22日は世界規模で実施されている「カーフリーデー」すなわち自家用車を使わないようにするという運動が行われている日なのです。
 この始まりは1997年9月9日に、フランスの大西洋岸にあるラ・ロシェルという人口8万人弱の都市で、町の中心部で自家用車の通行を禁止する「車のない日」の実験が行われたことです。
 実施してみると意外に人気があり、そこで翌年にフランスの環境省が全国34都市で実施することにし、日付も9月22日としました。

 この運動は次第に拡大し、1999年にはフランス以外にイタリアとスイスが参加して164都市、2000年にはEU全域で758都市、2001年にはEU域外にも拡大して996都市になりました。
 さらに2002年に欧州委員会(EU)が、9月16日から22日の1週間を「ヨーロッパモビリティウィーク」とし、その最後の22日を「カーフリーデー(タウン・ウイズアウト・マイカー)」として、EU加盟国全体が参加する制度に発展させました。
 この行事によって、1日限りですが、都市の中心部に自家用車を使用禁止にする地域を設定し、日常生活に支障がないことを市民が実感することを目指しています。

 毎年、全体の行動を象徴する標語が作られ、2007年は「ストリート・フォー・ピープル(道路は人間のため)」、2008年は「クリーンエア・フォー・オール(人々に奇麗な空気を)」、2009年は「インプルービング・シティクライメート(都市環境の改善)」、昨年は「トラベル・スマーター・リブ・ベター(賢く移動し生活を優雅に)」が掲げられ、今年はEUの政策として実施されるようになってから10年目になる記念の年なので、やや過激な「オルターナティブ・モビリティ(自動車以外で移動を)」になっています。

 参加都市は、当初はフランス国内の都市だけでしたが、現在では世界全体の普及し、今日、「カーフリーデー」を実施している都市は42の国と地域で2012にもなっています。
 もっとも多いのがスペインの628都市、次がオーストリアの452都市、三位がフランスとハンガリーで103都市になっています。
 ヨーロッパ以外では、ブラジル(8)、カナダ(1)、エクアドル(1)、アルゼンチン(1)、台湾(1)が参加しています。

 日本はどうかが気になると思いますが、日本は2004年から参加し、今年実施しているのは、仙台、さいたま、横浜、逗子、松本、福井、高松、那覇の8都市です。
 実際、どのようなことが行われるかをご紹介しますと、仙台市では16日から今日まで「せんだいモビリティウィーク2011」とし、仙台駅の中央通路と市役所の1階大広間で公共交通促進の活動を紹介するパネル展示をしています。
 さいたま市では、18日と19日に大宮駅前の公園で広報活動をしたり、一部の道路を通行止めにしてオープンカフェにし、昨日は「マイカー利用を控える日」として市民に自家用車を使わないように協力を依頼しました。
 どちらかと言えば広報活動中心の印象ですが、ヨーロッパでは平日にも関わらず、都心の広域を自家用車通行禁止にし、徒歩や自転車で多くの市民が通勤するなど、カーフリーデーの名前に相応しい行事を実施しています。

 なぜ、このような差があるのかというと、海外のほとんどの都市では自治体が主催者として実施していますが、日本では「カーフリーデー・ジャパン」という民間組織が事務局となり、それぞれの都市も任意団体が中心となっているので、活動費も寄付などによって捻出するという苦労があり、なかなか拡大しないという問題があります。
 しかし、社会は官から民への時代ですから、民間団体が行政を動かしていくことも有意義だと思います。
 自分の町で実行したいという方々は、インターネットで「ヨーロッパモビリティウィーク&カーフリーデー日本公式サイト」にアクセスし、メンバー登録をし、さらにヨーロッパ運営委員会に参加手続きをすると様々な情報が得られますので、ぜひ新しい移動時代を地域から実現されたらと思います。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.