TOPページへ論文ページへ
論文

 現代社会は石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料に依存して成立していますが、これらの化石燃料の問題は大きく2つあります。
 第一は、このまま消費していくと石油があと40年程、天然ガスが70年程で枯渇すると推定されている問題、第二は化石燃料を使用すると二酸化炭素が出るので、地球温暖化を加速するという問題です。
 この問題を根底から解決することは難しいのですが、いくつか新しい可能性が出てきました。

 第一の枯渇については、新しい資源が期待されるようになったことです。
 これまでも「オイルサンド」とか「オイルシェール」といわれる資源は少しずつですが掘削されてきました。   
 「オイルサンド」は「タールサンド」ともいわれ、原油を含んだ砂岩が地表付近に存在しているもので、岩石が頁岩の場合は「オイルシェール」と呼ばれます。
 原油は高温の水を砂岩の層に注入して油分を分離させる方法で採集されますが、当然、地下から自噴してくる普通の方法よりは費用がかかりますし、油分を抽出した後に残る土砂を産業廃棄物として処理する問題も抱えています。
 しかし、カナダのアルバータ州やベネズエラのオリノコ川流域に大量に存在しており、世界全体では普通の原油の2倍以上が存在していると推定されています。
 この量を現在の年間消費量で割算すれば180年分くらいには相当し、在来の原油の延命効果はあることになります。

 さらに新顔が「タイトオイル」といわれる資源です。
 これはタイトサンドといわれる硬い砂岩に含まれている油分を抽出するもので、以前から資源として期待されていましたが、地下の硬い岩から採取することが難しい状態でした。
 ところが最近、技術開発が進み、昨年あたりから本格的な採掘が始まりました。
 埋蔵量は既存の石油の5倍以上と推定され、これも現在の年間生産量で割算すると200年分近くになります。
 この「タイトオイル」には、いくつかの利点があります。
 昨年、メキシコ湾でBPの海底油田の掘削施設が爆発し、大量の原油がメキシコ湾に流出する事故がありましたが、現在の世界全体の原油生産の40%近くは海底油田からですし、確認されている油田の埋蔵量の50%は海底にあります。
 ところが「タイトオイル」は陸地の浅いところにあり、掘削事故の危険が少ないという利点があります。
 その結果、採掘費用が相対的に安価という利点が生じます。海底油田の場合、一本の油井を掘るのに5年程の時間と100億円程の費用がかかり、結果としてバレルあたり約60ドルになってしまいますが、タイトオイルの場合は1ヶ月程度で油井の掘削が完了するため、半額以下で済むということです。

 そして、世界の石油消費量の3割弱を消費している最大の石油消費国アメリカにとって幸運なことに、アメリカの本土の下に大量に存在するということです。
 私たちは石油というと産地はサウジアラビアを連想しますが、最近は国別ではロシアが最大の産地になっており、2009年の世界全体の産出量の12%がロシアで、サウジアラビアは9%です。
 もちろん中東諸国では、イランが4%、イラクが3%、アラブ首長国連邦が3%、クウェートが2%ですから、中東合計ではロシア以上ですが、ロシアの産出量が急速に増大していることが分かります。
 しかし、既存の油田が次第に枯渇していくと、次はアメリカが石油産出の首位になる可能性も出てきたということです。

 振り返ってみると、20世紀初頭までは砂漠で遊牧生活をしていたアラビア半島の国々が石油の発見によって、世界有数の富裕国になりました。
 またイギリスは1960年から掘削を開始した北海油田によって好況になり、ノルウェーも北海油田によって、一人あたりの国内総生産が世界2位になっています。
 そしてロシアやアメリカという大国も資源に恵まれて、さらなる発展をしようとしているわけです。

 日本だけがエネルギー自給率わずかに4%という恵まれない国だったわけですが、ようやく日が当たってきました。
 「メタンハイドレート」です。
 これは水深500mから2000mほどの海底から数10mから数100メートルの地下に、メタンが100気圧以上で圧縮されて固体になっているものです。
 この固体のメタンは数10気圧の低い気圧の状態にすると、気体になり、火を点けると燃えるという物質です。
 このメタンハイドレートが日本列島周辺の海底に大量の存在していることが分かったのです。
 比較的採掘の容易な鉱脈が静岡県の御前崎沖から和歌山県の紀伊半島沖にかけての南海トラフに存在することが分かっており、その量は現在の日本の天然ガスの使用量の13年分くらいになるようですし、さらに四国沖から鹿児島県の大隅半島沖までの海底には、それ以上の量があると推定されています。
 そこでこの春から、政府は札幌市にある産業技術総合研究所のメタンハイドレート研究センターで採掘の屋内実験を開始する予定です。
 メタンは燃やしたときの二酸化炭素排出量が石油の半分程度ですから、地球温暖化対策にも有効です。
 ただし、メキシコ湾の事故のように、掘削に失敗してメタンハイドレートが海上に噴出すると、今度は温暖化の効果が二酸化炭素の21倍にもなりますから、慎重な開発が必要ですが、ついに日本にも日が当たってきたのかも知れません。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.