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論文

 昨日の特別国会の首相指名選挙で民主党の鳩山由紀夫代表が第93代の首相に決まりました。
 その鳩山首相は、8月30日の衆議院選挙の直後から第一党の代表として、次々と政策を提言しておられますが、どれも従来の政策とは大きく方向転換している内容が多く、賛否両論が起こっています。
 それらの中でも、産業界からの反発が強いのが、9月7日の講演で発表された、京都議定書の基準年である1990年の二酸化炭素排出量に比較して、2020年までに25%排出量を削減することを9月下旬に開かれる国連気候変動サミットで表明するという内容です。
 麻生総理が発表した8%の削減目標のときでさえ、産業界からは反対が強かったのですが、一気にその3倍以上ですから、財界の一部からは「荒唐無稽もいいところだ」という意見が出ています。
 京都議定書で決められた、2012年までに日本が達成する目標が6%で、それでさえ達成はおぼつかない現状では、経済界の危惧は妥当ですが、国家が国際的に公約すれば反対をしているだけにはいかないということになります。
 ありとあらゆる方法を駆使して努力をする必要がありますが、政府の政策や産業界が取組む手段は別にして、個人や家庭で取組むことのできる方法を、今後時々紹介していきたいと思います。

 今日、ご紹介する最初は自動車です。
 そのとき重要なことは、走る時の二酸化炭素の排出だけではなく、製造する時に排出される二酸化炭素から廃棄するときに排出される二酸化炭素まで含めて比較することです。
 これはライフサイクル・アセスメント(LCA)、すなわち、製品の誕生から廃棄まで製品の一生を計算して比較するという考え方です。
 1500ccクラスのガソリン車とハイブリッド車を比較した結果がありますが、ガソリン車の排出する二酸化炭素に比べてハイブリッド車は、ほぼ40%減の60%程度になっていますから、確かに環境への負荷は少ないといえます。

 しかし、個人にとって重要なことは、どちらが安いかということで、これについてはライフサイクル・コスト(LCC)という考え方があります。
 購入するときの費用から、使用している時の費用、そして廃棄するときの費用までを合計して、どちらが得かということです。
 これについては9月8日の『読売新聞』に、1500CCの自動車を、毎年5000km、11年間使用した場合のライフサイクル・コストを計算した結果が発表されていますので御紹介しますと、ガソリン車が年間約50万円、ハイブリッド車が53万6000円となり、ガソリン車の方が3万6000円得になるということです。
 この主要な原因は購入する時の費用が60万円以上も違うということですが、環境のために個人が多少は犠牲を払うということになります。

 次に家庭電化製品について検討してみたいと思います。2000年に発売されたテレビジョン受像機、電気冷蔵庫、エアコンと最新の製品を比較してみると、テレビジョン受像機では二酸化炭素排出量が約40%減り、電気冷蔵庫では60%以上、エアコンでは30%ほど減っています。
 これらの製品の電力消費は、家庭の電力消費の、それぞれ10%、16%、25%なので、先程の削減分を掛算すると、全体の22%程度の電力が減り、二酸化炭素も比例して減ることになります。
 これを電気料金に換算してみると、年間で約4万円になりますから、4、5年もすれば新製品の購入代金も回収できることになります。

 もうひとつ、家庭の電力消費の16%を占める重要な製品は照明器具ですが、この分野に大きな変化が発生しています。
 2012年で現在普及している白熱電球が生産中止になり、電球型蛍光灯やLED電球に移行します。
 これらの重要な特徴は、60wの白熱電球と同じ明るさを得るのに、電球型蛍光灯では10w、LED電球では6w程度で良いということです。
 したがって、電力消費は白熱電球を1とすれば、それぞれ17%、10%で済むということになりますから、家庭で照明に使用している16%の電力消費が2、3%減ることになります。
 それではということで、電気屋さんに行って買おうとすると、白熱電球が100円程度なのに、電球型蛍光灯は1200円、LED電球に至っては、最近、劇的に安くなったとはいえ4000円もします。
 だれもが一瞬手を引っ込めそうですが、白熱電球の寿命が1000時間程度なのに対し、電球型蛍光灯は12倍、LRD電球は40倍もありますから、時間あたりの電球価格はすべて同じです。
 そこで、1日6時間ずつ使用したとすると、1年間の電気料金は、白熱電球で約2600円、電球型蛍光灯で440円、LED電球で260円ということになりますから、蛍光電球であれば半年で、LED電球であれば2年で電球代を回収できることになります。

 家庭から排出される二酸化炭素は、ガソリンで24%、電気で40%ですから、自動車の二酸化炭素が40%減れば全体の15%、3種類の家庭電化製品と照明器で減る分が17%になり、ほぼ3分の2になります。
 家庭から排出される二酸化炭素は日本全体の14%程度ですから、この64%に相当するガソリンと電気で32%減れば、日本全体の3%が減ることになりますから、無視できない数字です。
 やや専門的な複雑な計算をしましたが、重要なことは、塵も積もれば山となるような積み重ねをしていけば、経済的にも得をしながら、不便もなく、二酸化炭素を3%減らす手段があるということです。
 様々な分野で、この塵を積もらせていけば、2020年までに25%を減らすことも荒唐無稽ではないということだと思います。





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