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論文

 エネルギー資源は自然の中から得られる石油や石炭を一次エネルギー、それらから加工した電気や温水などを二次エネルギーと言いますが、現在、世界全体の一次エネルギー供給は石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料が80%、核燃料が5%、残りの15%が再生可能エネルギーとか自然ネネルギーと呼ばれる資源です。
 日本は化石燃料が84%、核燃料が11%、再生可能エネルギーが5%で、多少構成が違いますが、化石燃料に大半を頼っているということでは同じ構造です。
 この化石燃料は有限な資源で、いずれは枯渇するという問題、資源が一部の地域に偏って存在しているという問題、そして利用する時に地球温暖化の原因とされている二酸化炭素を排出する問題があり、依存する比率を下げていこうというのが世界共通の目標になっています。

 その重要な方法が、再生可能エネルギーの比率を上げるということで、歴史のある水力エネルギー以外に、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマスエネルギーなどの利用が促進されています。
 その中でも本命は太陽エネルギーですが、この利用方法は大きく、光を利用するものと、熱を利用するものに分けられます。
 光を利用する方法は太陽電池に太陽光を当てて電気を発生させるもので、良く知られていますが、熱を利用する方法はそれほど話題になっていません。
 そこで今日は太陽熱を利用する再生可能エネルギーについてご紹介しようと思いますが、何故かというと、今日が「太陽熱発電の日」だからです。

 太陽熱発電というのは、太陽の熱を鏡などで一点に集めて高温にし、その熱で水を蒸気にして蒸気タービンを回転させて発電する方法です。
 原理は火力発電と同じですが、重油を燃やして水を蒸気にする代わりに、太陽の熱で水を蒸気にする訳です。
 日本では1973年のオイルショックの後に、一次エネルギーを石油に依存する比率を下げるため様々な研究開発が行われましたが、その一環として香川県の仁尾町(現在は三豊(みとよ)市)の海岸に、1978年から2000kwの太陽熱発電所が建設され、1981年8月6日に運転開始されたという訳です。
 場所は塩田の跡地で太陽の日照時間が長いという理由で選ばれたのですが、実用になる程の日射量がなく、4年後に中止され、それ以後、日本では本格的な太陽熱発電は行われていません。

 ところが世界では最近になり、太陽熱発電が見直され、アメリカではネバダ州の砂漠に6万4000kwの出力の「ネバダ・ソーラーワン太陽熱発電所」が2007年に建設され、1万4000世帯に電力を供給する予定ですし、スペインではアンダルシア地方のグラナダの付近に建設されていた5万kwの「アンダソル1」がこの7月から正式運転を開始し、さらに「アンダソル2」「アンダソル3」の建設も始まっています。
 インドでもドイツの技術協力により、50万kwの太陽熱発電所が建設される予定ですし、オーストラリアでは、100平方kmの牧場に太陽光を集める装置と、その中央に高さ1000mの煙突を建設し、太陽光を集める装置で暖められた空気が煙突の中を秒速15.6mで上昇し、内部にある32期の風力タービンを回すという20万kwの発電所も計画されています。
 太陽熱発電は日射量が多いことと、数10平方kmという広大な土地が必要なために、日本には適していない再生可能エネルギー利用方法ですが、日本が先進的であった太陽熱利用方法があります。

 太陽熱温水器です。これは住宅の屋根の上などに畳2畳分程の集熱器と温水の貯湯槽を一体にした装置を設置し、太陽熱で水をお湯に変えるものです。
 1980年頃には年間75万台近くが販売され、世界一の普及率を誇っていましたが、最近では販売台数も5万台以下になり、中国、ドイツなどに大きく抜かれています。
 それどころか現在、稼動している太陽熱温水器を数万円の費用を支払って撤去する家庭が増えているそうです。
 その結果、1999年には世帯普及率が11・5%でしたが、2004年には7・3%に下がっています。
 理由の一つとして夜間電力を利用した温水器やヒートポンプでお湯を沸かすエコキュートなどが普及しはじめたこともありますが、もう一つは何と格好が悪いからということだそうです。
 太陽熱温水器は設置する場所の緯度と同じ程度の傾きにしておくと効率がいいのですが、最近の住宅の屋根は建材が進歩して瓦屋根では22度、鉄板などの屋根では17度程度ですから、屋根の上に鉄骨で骨組みを作って傾きを大きくする必要があります。それが格好悪いという訳です。

 ところがオーストラリアでは「エナジー・エフィシエント・ホームズ政策」の一環として電気温水器から太陽熱温水器へ転換すると12万円程の補助がオーストラリア政府から、7万円程の補助がニューサウス・ウェールズ州から出されるので、急速に普及しはじめ、今年の2月から5月までで1万1000以上の家庭に補助が出されています。
 家庭のエネルギー消費の30%近くは給湯に使われているので、これを太陽熱に転換できれば、1家庭あたり年間4トンから5トンの二酸化炭素の排出削減が可能になりますから、無視できない量です。

 このように世界と比較すると、日本の動きは逆行していることになります。
 かつて日本では、多くの都市が路面電車を撤去しましたが、最近になり環境への負荷を減らす交通手段として新たに建設しようという動きがありますし、商品も使い捨てが流行した時代から、現在では修理して使うという考え方が主流になりつつあります。
 太陽熱発電は地形や気象条件から難しいとしても、太陽熱温水器は見直すべきではないかと思います。





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