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論文

 昨年あたりから盛んに広報活動が行われていますが、日本の地上テレビジョン放送がデジタル放送に切り替わるまで2年半を切りました。
 最近、テレビジョン受像機の値段も急速に安くなっているので、地上デジタル放送を見る事の出来る新しい装置に買い替えようと考えておられる方も多いのではないかと思いますが、売り場に行くと様々な種類の受像機が並んでおり、どれを買ったら良いか迷われる方も多いと思います。

 そこで今日は、様々なテレビジョン受像機の技術の長所短所をご紹介したいと思います。
 テレビジョン放送の歴史は意外に長く、原理はすでに1880年代にドイツで発明され、画像を遠方に伝送する技術開発は、外国でも日本でも1920年代に成功していました。
 実際の放送はドイツが1936年にベルリンで開催した第11回オリンピック大会で実況中継をしたのが最初で、その後、イギリス、アメリカも1930年代に放送を始め、日本も1939年に実験に成功し、1940年に東京で開催予定の第12回オリンピックで実況中継する計画でしたが、日中戦争が拡大してオリンピック大会の開催を返上し、テレビジョン放送も中止になりました。
 戦後、アメリカ占領軍(GHQ)がテレビジョン放送の研究を禁止していましたので出遅れましたが、1953年からNHKと民間放送局である日本テレビ放送網が放送を開始し、現在に至ったという歴史があります。

 初期の受像機はブラウン管、もしくはCRTという大型の真空管を使った装置です。
 これは電子銃といわれる装置から真空管内に発射される電子ビームを制御して、蛍光塗料を塗った緩やかな曲面のガラス板に当てて発光させる技術で、テレビジョン受像機だけではなく、コンピュータやオシロコープなど様々な機器のディスプレイ装置に使われてきましたが、2002年に世界の市場の半分以下になり、昨年では15%程度のシェアになりました。
 それに代わって登場してきたのが、まとめてフラットディスプレイと言われる装置で、現在、発売されている商品を技術で分けると、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機EL(PEL)という3種類の技術が主流です。

 2007年の世界全体のディスプレイ装置の市場では、84%が液晶ディスプレイ装置、9%がプラズマディスプレイ装置、有機ELを使った装置は0・5%ですし、2012年の市場予測でも、それぞれ87%、9%、1・5%で大きな変化はありません。

 そこで8割以上を占める液晶ディスプレイ装置から始めたいと思いますが、まず液晶とは何かというと、液体の「液」と結晶の「晶」を合成した言葉であることからも分かるように、液体と固体の中間の性質をもつ物質で、これに電圧をかけると分子の方向が変わる性質があります。
 この性質を利用して、裏側に並べた発光素子(LED)の光を前面の液晶パネルと偏光フィルタで制御して画像を作るという技術です。

 次にプラズマディプレイ装置ですが、ガラス板に細かい溝を掘り、その中に光の三原色である赤・緑・青を発光する蛍光体を置き、その表側と裏側に電極を並べたガラス板を合わせて、間に電圧をかけると紫外線を発光するガスを封入します。
 そして光を出すべき位置の電極に電圧をかけると、その位置にある蛍光体が光って画像が表示されるという仕組です。

 昨年、ソニーがもっとも薄い部分では厚さ3ミリという11インチのテレビジョン受像機を発売して話題になったのが有機EL装置です。
 有機化合物の分子でエネルギーの高い状態から低い状態に移るときに発光する性質を持つ物質があり、物質により赤・緑・青の光の三原色を発光します。
 この物質を厚さ1万分の1ミリメートルという薄い電極の間に入れ、電圧をかけるとエネルギーの高い状態になり、それが元の状態に戻るときに発光するという仕組です。

 技術の説明は良く分からないから、それぞれの長短を説明しろということだと思いますが、実は、この原理の違いを理解しておくと、長短が分かりやすいのです。
 第一は視野角の広さといわれる特徴です。つまり正面以外から見ても同じように見えるかどうかということですが、液晶ディスプレイは一番奥にある発光管の明暗を見ることになりますので、横から見ると見にくくなります。
 一方、プラズマディスプレイと有機ELディスプレイは表面近くにある物質が直接発光しますので、どの方向から見ても同じように見えます。

 第二はサッカーの試合のように動きが素早い画面を見ると、液晶の場合、応答速度が遅く画面が流れる傾向にあり、これはプラズマと有機ELが優れています。
 いずれも技術改良によって液晶ディスプレイの性能は向上していますので、以前ほど見劣りしなくなりましたが、技術の基本的性質としての差はあります。

 第三は画面が奇麗かどうかですが、これは画面のコントラストが大きいほど奇麗と言われ、有機ELは液晶ディスプレイの100倍位程度のコントラストがあり、僕も実際に見ましたが、なかなか奇麗な画像です。次いでプラズマディスプレイです。

 それ以外に消費電力の少ないのは有機EL、液晶、プラズマの順番、薄さでも有機ELは非常に薄い製品が可能です。
 そういう点では有機ELが優れているようですが、現状では寿命が十分ではない、大型の装置を作るのに困難などの問題点があり、結果として値段が高いという欠点があります。
 しかし、いずれも技術開発が進んで、性能は急速に向上していますので、どれが絶対に優れているということはありません。店頭で実物を見比べ、見る環境や利用目的、そして値段で決めるということだと思います。





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