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論文

 今週日曜日の2月1日13時に、長野県と群馬県の県境にある浅間山に関して、気象庁地震火山部が噴火予報・警報を、これまでのレベル2からレベル3に引き上げて、入山規制をしました。
 そうしたところ、翌日2日の未明に実際に噴火し、噴煙が2000メートルほど上がり、8キロメートル離れた軽井沢測候所付近まで長さ50センチメートルほどの石が飛んできたり、千葉県の君津市や、横浜市、川崎市、東京都千代田区などでも火山灰が観測されました。
 1日の発表のときに、火山課長が「これまでの観測結果から、大規模噴火につながるようなことはないとみられる」と発言しており、噴火の予報と言い、その規模の予測と言い、正確であったことが賞賛されています。
 そこで、今日は火山の爆発の予報についてご紹介したいと思います。

 日本列島は太平洋を取り巻く環太平洋火山帯にあり、とりわけ太平洋プレートとフィリッピン海プレートがユーラシアプレートの下側に潜り込んでいく場所の上にあるので、世界有数の火山地帯です。
 かつて火山は、浅間山のように現在でも活動している「活火山」、富士山のように噴火の記録はあるが現在は活動していない「休火山」、噴火の記録はないが地質的に火山である「死火山」に分けられていましたが、なかなか区分が難しく、現在では「過去1万年以内に噴火した火山、および現在、活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義しています。
 日本では、北海道の羅臼岳、十勝岳から、九州の雲仙岳、開聞岳など108(2017年時点では111)が存在します。
 したがって、これまでも火山の噴火による被害は何度もあり、人的災害のあった火山の噴火は記録されているだけでも30回以上発生しています。

 日本最大の被害は寛政4(1792)年に発生した、当時の肥前、現在の長崎県にある雲仙普賢岳の噴火によるものです。
 前年から有感地震が続き、普賢岳から噴煙も上がっていたのですが、収まりかけたように思われた旧暦4月1日(新暦5月21日)、島原の城下町の背後にある眉山(まゆやま)が大地震によって崩壊し、その土砂が城下町を押しつぶして有明海に流れ落ち、およそ5000人が亡くなりました。
 ところが、その土砂が津波を引き起こし、対岸の肥後、現在の熊本県天草を襲い、さらにその津波が反射して、また島原を襲って、津波による死者が1万人にも及びました。これが「島原大変肥後迷惑」です。
 また多くの方が覚えておられると思いますが、この雲仙普賢岳では1991年にも火砕流で43人の方が犠牲になっています。

 日本では非常に多くの人々が火山の付近に生活していますから、天災とあきらめるわけにはいかず、地震の予知とともに火山の予知は重要で、戦前から取り組まれています。
 地震の予知に比べれば、場所が分かっている火山の爆発の予知は容易で、火山性地震を観測することで、かなりは予測が可能になっています。
 そこで重要な作業は、継続的に火山性地震を観測することで、1910年に浅間山が噴火したときから常時地震観測が行われ、以後、焼岳(1912)、桜島(1914)、阿蘇山(1931)、伊豆大島(1939)などと増え、現在では34の活火山が常時監視されています。
 そして1974年から火山噴火予知連絡会が設置され、気象庁が事務局、国土地理院、大学、海上保安庁などが情報交換をしながら、噴火を予知する体制が整っています。

 予知の基本は火山性地震などを継続して精密に観測し、その値が異常になれば警報を発生するということですが、現状では数日前から数時間前程度で可能になっており、今回の浅間山でも1日近く前に警報が発せられています。
 これまでも、1986年の伊豆大島の噴火のときには、4月から予兆があり、11月に噴火が始まり、11月21日には約1万人の島民全員が非難して無事でした。
 さらに2000年の北海道の有珠山(うすざん)の噴火のときには、3月27日に噴火が予想され、29日に気象庁から緊急火山情報が出され、周辺の住民が避難し、その後、31日に噴煙が3500mも上がる水蒸気爆発が起こっています。
 このような水準まで予知は可能になりつつありますが、まだ過去の経験による予測が中心で、地下20kmよりも深い場所のマグマの状態は十分に分かっていないし、相当先まで予測できるような噴火の仕組は十分には解明されていませんので、観測体制を拡大し、研究を重ねていくことは必要です。

 今回の浅間山の噴火については、それまでのレベル2の警戒レベルから、1日にレベル3に引き上げられましたが、最後に、この警戒レベルについてご紹介しておきたいと思います。
 これは2007年12月から開始されたもので、レベル1からレベル5までの5段階で構成されています。
 レベル1は通常の状態で登山者などへの制限はありません。
 レベル2になると、火口周辺に影響する噴火が発生する可能性があるので、火口周辺
     には立ち入り禁止などの規制がなされます。
 レベル3は周辺の居住地域まで影響するような噴火が予想され、入山禁止になります。
     浅間山は現在もこの状態です。
 レベル4は居住地域に重大な影響を及ぼす噴火が予想され、避難準備が必要になります。
 レベル5は実際に噴火が発生し、非難をする段階です。

 日本は最初にご紹介したように、108の活火山があり、四国以外の全国に分布しています。今回の浅間山、そして桜島に出された警報を他所事と思わず、関心を持たれることが必要だと思います。





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