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論文

 今日は明治5(1872)年に日本で初めて全国の戸籍調査が実施された日です。
 これは、その年の干支の名前を採って「壬申戸籍(じんしんこせき)」と呼ばれ、前年に成立した「戸籍法」に基づいて実施されたものですが、それを記念して、今日は「人口調査記念日」になっています。

 それ以前は、徳川幕府が命じた宗門人別改帳(しゅうもんにんべつあらためちょう)によって、人口の把握が行われていましたが、これはキリスト教を禁止した幕府の制度に合わせて、各藩の大名が住民の信仰の状況を調べるための手段で、全国一律の仕組ではなく、それほど正確な調査ではありませんでした。
 この壬申戸籍は全国一律の方法による画期的な調査で、その結果、男が約1680万人、女が約1631万人、合計3311万人が当時の日本の人口になりました。
 その後は、この人数を基準にして、毎年の増減をもとに計算していたため、転出や転入の届け出なしで移動する人数が把握できず、次第に誤差が拡大していき、正確な人口が分からなくなりました。

 そこで明治38(1905)年に国勢調査を実施することに決定したのですが、日露戦争が始まったために延期となり、大正9(1920)年10月1日に日本では初めての国勢調査が行われ、男が2804万人、女が2825万人、合計5596万人が日本の人口になりました。
 明治初期の3311万人から、140年近く経過した現在、日本の人口は約1億2770万人と4倍近く増えましたが、2006年頃に頂点になり、現在は緩やかに減少しています。
 それを象徴するのが一人の女性が生涯に何人の子供を設けるかを示す合計特殊出生率といわれる数字で、人口を維持する最低限とされる2・08を切ったのが1974年で、それ以後、ひたすら下がり続け、2005年には1・26になり、先進諸国の中ではほぼ最低になってしまいました。
 2006年には1・32、2007年には1・34とわずかに増加しましたが、この程度で推移するとして単純に計算すれば、100年後には1億人を切り、500年後には1000万人になり、1000年後には最後の日本人が1人だけ生き残っているということになります。

 そのような日本を尻目に、今月13日にフランスの国立統計経済研究所が、昨年のフランスの合計特殊出生率が前年の1・98を0・04上回り2・02になったと発表しました。これはアイルランドと並んでヨーロッパで最高の数字です。
 少子化担当大臣まで任命しているにもかかわらず成果が現れない日本からすれば何故かということになるわけですが、1月27日の読売新聞の記事を参考に調べてみると、フランスと日本の違う点がいくつか浮かび上がってきます。

 第一は出産や育児に対する公的支援の違いです。
 日本では3歳未満まで毎月1万円、それ以後は、第1子と第2子については5000円、第3子以後は1万円が支給されますが、小学校を修了すると打ち切られます。
 一方、フランスでは第1子には支給されませんが、第2子が生まれると1万5000円、第3子も生まれると3万5000円、第4子も生まれると合計5万4000円が支給され、それ以上の場合は一人につき1万9000円が加算されます。
 しかも所得に関係なく20歳未満の子供すべてに支給されますから、日本と比べると大差です。
 それに関係があるかどうかは明確ではありませんが、内閣府が2005年に世界各国で行った調査で、子供をさらに増やしたいかという質問に対して、フランスは69%が増やしたいと答えているのに対し、日本は43%で、増やしたくないと答えた比率のほうが53%で多いという結果になっています。

 第二は婚外子の比率が高いことです。
 すなわち未婚の母から生まれる子供の比率が多いことで、フランスでは昨年52%になっています。しかも1980年には11%でしたから急増したことになります。
 スウェーデンも40%から55%に増大していますが、いずれも合計特殊出生率が急速に回復している国ですから、少子化対策として有効かも知れません。
 参考までに、日本は1980年に0・8%、2005年に2・0%で、日本以外の先進諸国の中で最低のイタリアの13・8%と比較しても低い数字です。
 これは一面では伝統的な道徳精神が維持されていると言えなくもありませんが、世界の潮流とは離れているということは事実です。

 もう一つ、日本が世界の潮流と離れている数字があります。早朝から、このような話題を取り上げるのが適切かどうか分かりませんが、事実を紹介したいと思います。
 それは世界各国の年間の性交回数です。
 イギリスの避妊具のメーカーであるデュレックス社がインターネットを利用して、41カ国を対象に行っているアンケート調査ですが、1年間に何回セックスをしていますかという質問への回答です。
 1位のギリシャは年間138回ですから1週間に2・6回、フランスは120回で1週間に2・3回ですが、日本は調査対象の41カ国の中で最低の45回で1週間に0・9回という結果になっています。
 日本より一つ上位のシンガポールが73回ですから、一国だけ蚊帳の外という感じがしないわけでもありません。
 調査方法の詳細が明確にされていないので、確定的には言えませんが、この日本人のセックスに関する淡白さも少子化に影響しているかも知れません。
 しかし、世界全体では人口が現在の67億人から40年後の2050年に90億人を突破すると予測され、それが社会問題や環境問題の最大の原因でもありますから、日本人は減少しても幸福に生活できる方法を模索して世界に浸透させることが貢献になるのではないかと思います。





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