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論文

 一昨日の11日に、麻生首相が首相官邸での記者会見で「消費税の引き上げ時期については、経済情勢が2年でうまく行ったら、その時に関連法案を国会に提出する。
 3年経って経済情勢がうまく行ってなければ、その時に考える」と説明し、さらに「行政改革を実行し、景気対策を行った結果、経済のパイが大きくならない限り増税はできない」とも言っています。
 この消費税の引き上げについては、歴代内閣の重要課題であり、福田前首相も今年の1月に社会保障の財源について消費税で賄う意向を示し、G8サミットを控えた6月にも、消費税の引き上げ時期について決断しなければならない大事な時期だという発言をしています。
 そこで今日は、政府にとっても国民にとっても関心の的である消費税について考えてみたいと思います。

 国家を運営するために必要な資金の主要な財源は企業や国民からの税収ですが、これは大きく、所得課税、資産課税、消費課税に分けられます。
 所得課税は個人所得税や法人所得税のように、個人や企業の収入に課税するもの、資産課税は所有している固定資産や相続する資産に課税するものです。
 今日の話題である消費課税は、入湯税やゴルフ場利用税のように、消費した段階で課税される直接消費税と、関税や酒税のように消費する前の段階で課税する間接消費税に分けられますが、消費税は後者の間接消費税の一種です。
 これは一般的には付加価値税(Value Added Tax)といわれ、世界で最初に導入したのはフランスで1954年のことですから、税金のなかでは比較的新しいものです。
 しかし、現在ではアメリカを除く、すべての先進国で採用され、世界全体でも130カ国以上が導入しており、国家の税収の中でも基幹的な税目になっています。

 日本では竹下首相が内閣の命運をかけて1988年に消費税法を成立させ、翌年4月1日から課税が実施されました。
 当初は3%でしたが、1997年の橋本首相のときに、国税分の4%と地方税分の1%を合計した5%になり、現在に至っています。
 この消費税の特徴は、専門用語で水平的公平性といわれる、だれもが同等に負担すること、世代間公平性といわれる、働いて収入がある世代だけに負担が集中しないこと、消費は景気に大きく左右されないので税収が安定しているなどです。
 しかし一方、収入の多い少ないに関係なく同等に負担するために、低所得者ほど負担の割合が大きくなるという問題があります。

 しかし、現在、国と地方自治体で長期の借金が860兆円にも膨らみ、その返還と金利の支払いである国債費が国家の歳出の24%にもなるという破綻状態から脱却し、まずプライマリーバランスを回復する、すなわち国債発行による新たな借金を除いた国家の歳入と、過去の借金の元本や金利の支払いを除いた歳出が同じになる状態にするためには、消費税率の引き上げが必要ですが、国民の毎日の生活に直結するために、選挙を考えるとなかなか実施できないというのが現実で、小泉首相でさえ先送りしてきたほどの難問です。

 そこで世界を見渡したとき、日本の消費税はどの程度かを調べ、消費税の引き上げが必要かどうかを考えてみます。
 消費税の税率が高いのはヨーロッパ諸国で、とりわけ高いのが北欧諸国です。
 高い方から列挙してみると、デンマーク、スウェーデン、ノルウェイは25%、フィンランドが22%、ハンガリーとイタリアが20%、フランスが19・6%、ドイツが19%、イギリスが17・5%、スペインが16%などと高く、低い国はニュージーランドが12・5%、オーストラリアが10%、韓国が10%などで、日本と同じ5%の国はカナダ、台湾程度しかありません。
 その結果、2006年について、税収全体に占める消費税の比率は、ドイツの29%、フランスの25・9%、スウェーデンの24・9%、イギリスの22・2%、デンマークの21・3%に対し、日本は14・3%しかなく、消費税の負担が少ないことが分かります。
 もちろん、低所得者層の負担を軽減するために、多くの国では食料品についての消費税は低く設定されており、イギリス、アイルランド、カナダ、オーストラリアなどはゼロ、フランスは5・5%、ドイツやスペインは7%などにしています。

 このように国際比較をしてみると、日本の消費税率は低く、国や地方自治体の長期債務の返済も考慮すると、税率を上げることもやむを得ないという気もしますが、その見返りに、どのような恩恵を受けられるかが国民としては重要な関心です。
 北欧諸国は消費税だけではなく、所得税率も高いのですが、その結果、教育は大学も含めて無料、医療も大変に安価です。
 そうすると働いている元気な間は税金の負担が大変ですが、退職して引退するようになっても安心して生活できるという見返りがあります。
 しかし、日本は税金の負担が低い代わりに、後期高齢者の医療保険負担が問題になっているように、高齢になってからの医療や福祉の負担が生活を圧迫するようになります。
 これから数年、消費税率の引き上げが日本の政治の重要な課題になりますが、一昨日の麻生首相の発言にあるように、行政改革を確実に実施し、無駄な予算を大幅に削減し、負担の増加に比例して医療や福祉の恩恵も増える社会を実現する必要があると思います。





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