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論文

 これからモンゴルの首都ウランバートルに出発するところですが、モンゴルというと連想するのは白鳳や朝青龍などの大相撲での活躍や、ドイツ、ロシア、カザフスタン、モンゴルの4カ国が合同で制作し、日本の俳優浅野忠信が主演して今年のアカデミー賞外国語映画賞の候補作になった大作映画「モンゴル」などですが、最近では、資源大国として世界から注目されています。
 モンゴルという国を漠然と知っている方は多いと思いますが、正確にご存知の方は少ないのではないかと思います。
 そこで最初に、モンゴルという国の概略をご説明したいと思います。
 モンゴル国は北はロシア、南は中国という大国に挟まれた位置にあり、面積は日本の約4倍ありますが、人口は263万人で、日本の50分の1程度でしかありません。
 緯度は北海道より北になるうえに乾燥地帯であるため、冬は非常に寒く、今日あたりでも、首都ウランバートルで最高気温が2〜3度、最低気温はマイナス10度以下という厳しい気象条件です。

 国としての歴史は一昨年、チンギス・ハンが1206年に即位してから800年目を記念して「大モンゴル建国800周年」の盛大な行事が行われましたが、そのチンギス・ハンと後継者であるフビライ・ハンの時代にアジアからヨーロッパにまたがる広大な世界帝国を築きました。
 しかし、その帝国が崩壊してからは低迷し、清王朝の支配下にありましたが、1921年に君主制人民政府が成立し、1924年に人民共和国になります。
 そして1992年にモンゴル国憲法を採択し、モンゴル人民共和国からモンゴル国に国名を変更し、現在に至っています。

 日本との関係は1972年に国交を樹立して親密な関係にあり、2006年は「日本におけるモンゴル年」、2007年は「モンゴルにおける日本年」とされ、2006年8月には小泉総理大臣、2007年7月には皇太子殿下が訪問されています。
 モンゴルからも昨年はエンフバヤル大統領、今年はオヨーン外務大臣が訪問され、交流が深まっています。
 経済協力でも日本はもっとも多額の協力を行っており、2000年から2006年までの累積で500億円以上を援助しています。
 そのような背景もあり、2004年にモンゴルの国民2000人を対象に行ったアンケート調査で、「最も好きな国」としてはアメリカに次いで33・4%、「ぜひ行ってみたい国」もアメリカに次いで31・8%でしたが、「最も親しくすべき国」では37・4%で1位でした。
 日本がモンゴルに経済協力や技術協力をしていることは知られており、「日本は信頼できる国」と答えた比率は50%になっています。

 最近、モンゴルが世界から注目されているのは資源大国としてです。
 2006年のモンゴルのGDPの20%、輸出の74%、外国の直接投資の48%、国家の歳入の20%が鉱業によるという数字で明らかなように、鉱業大国です。
 2006年の統計で、世界の亜鉛鉱石の生産の1・1%、金鉱石の1%、銅鉱石の0・9%、モリブデン鉱石の0・8%というのがモンゴルの生産量で、それほど世界の上位ではありませんが、これはまだ大規模な開発が行われていないからであり、例えばウランの確認埋蔵量は6万2000トンで世界14位ですが、未確認埋蔵は139万トンで世界最大規模ですし、金鉱石の埋蔵量も30万トン以上あり、世界最大の金産出国である南アフリカの年間産出量の800年分に相当する量です。

 これらの鉱山の中心はエルデネット鉱山というモンゴルの北部にある地域に集中し、銅鉱石が日本の輸入量の10年分に相当する1400万トンも埋蔵されており、モリブデン鉱石やタングステン鉱石などのレアメタルも大量にあります。
 しかし、現在、注目されているのは南部のゴビ砂漠にあるタバン・トルゴイ炭田やオユ・トルゴイ鉱山で、例えばタバン・トルゴイ炭田はオーストラリア全体の石炭生産量の10年分はあると推定されています。
 これを採掘していけばモンゴルの経済発展は飛躍するのですが、問題は砂漠地帯であるために水がないことです。
 そこで北部の標高1200mの場所を流れているヘルレン川の表流水や地下水を南部の標高700mのゴビ砂漠まで引こうという計画が登場してきました。
 これは延長740kmの導水路を総額で870億円かけて建設する大規模な工事で、日本が官民共同計画として実現可能かを検討するための調査に今回、モンゴルに出向くということです。

 日本はモンゴルへの経済援助や技術援助は世界一の規模ですが、資源の採掘の権利の取得では大きく出遅れてしまっています。
 2006年時点で、鉱業権の取得の1位はイギリスで542件、2100万ヘクタール、2位の中国が343件で220万ヘクタールですが、日本は5位で128件、110万ヘクタールにしか過ぎません。
 国内に鉱物資源がほとんど存在しない日本にとって、ロシア、中国に次いで「第三の隣国」といわれる友好関係にあるモンゴルを支援する一方で資源を確保するということは重要な国家戦略だと思います。
 今回、サンジャーギーン・バヤル首相や他の閣僚にもお目にかかる予定なので、計画が実現するように努力したいと思っております。





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