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論文

 ニュージーランドに2週間でかけている間に、かなり日焼けしましたが、オークランド空港に到着して、建物の外に出たとき、最初に感じたことは日差しが随分と強いということでした。
 案内してくれた現地在住の方に伺ったところ、ニュージーランドの紫外線の降り注ぐ量は日本の5倍から7倍ということで、タウポ湖というニュージーランド最大の湖で、2時間ほどカヌーをしただけで、真っ黒になってしまうほどでした。そこで今日は紫外線について考えてみたいと思います。

 空中を飛び交う電磁波は波長によって分類されます。
 人間の目で見ることのできる電磁波は、個人差がありますが、ほぼ波長が360ナノメートル(ナノメートルは1メートルの10億分の1)から830ナノメートルで、これを可視光線と呼びます。
 これよりも波長の長い部分を赤外線、短い部分を紫外線と呼びます。英語で赤外線はインフラレッドと言いますが、これは赤より下という意味で、紫外線のウルトラバイオレットは紫より上という意味です。
 UVカット化粧品とかUVカットサングラスという言葉がありますが、このUVはウルトラバイオレット、すなわち紫外線のことです。

 紫外線は波長で400ナノメートルから100ナノメートルの範囲ですが、これを人体へ影響する力によって3段階に分け、可視光線に近い部分(400〜315ナノメートル)をUVA、遠い部分(280〜100ナノメートル)をUVC、その中間(315〜280ナノメートル)をUVBと言います。
 紫外線が皮膚に当たるとビタミンDが生成され骨軟化症を防ぐ効果があるので、人間にとって必要ですが、当たりすぎると皮膚ガンや白内障の原因になります。
 これは紫外線が人体に当たると遺伝子情報を書き込んだDNAが傷つくのですが、普通は自動修復して元に戻ります。ところが何度も自動修復していると書き間違いが起こり、それがガンの原因になるというわけです。
 また白内障は目のレンズである水晶体を構成するタンパク質が紫外線によって変化し、濁ってしまうことが原因です。
 そういう視点から紫外線は生物にとって有害ですが、幸いなことに、地球の上空の10キロメートルから30キロメートルにあるオゾン層が紫外線を防いでくれているのです。

 地球の歴史の中で、生物は約40億年の歴史がありますが、90%の時間は海中で過ごし、陸上に上がってきたのは4億年前のことです。
 それは紫外線を防ぐオゾン層が形成されていなかったからで、数十億年かけてオゾン層ができ、ようやく上陸できたのです。
 オゾン層は生物にきわめて有害なUVCはほぼ完全に遮断し、UVBもほとんど遮断し、地上に到達する紫外線の99%はUVAという生物への影響の少ない紫外線になるように調整してくれています。

 ところが、以前から話題になっているように、このオゾン層が減り始め、南極上空にオゾンホールと呼ばれる、オゾン層の薄い部分ができてしまいました。
 その原因は冷蔵庫を冷やすためや、ヘアスプレーの缶の中の圧縮空気に使われていたフロンという物質です。
 フロンは空気中に放散されると10数年かけて成層圏まで上昇し、そこでオゾンを破壊するのです。
 このフロンはゼネラルモーターズの技師トーマス・ミッジリーが1928年に発明した画期的な物質で、大量に生産され使用されてきたのですが、1974年になってフランク・ローランドとマリオ・モリーナという2人の学者が、フロンはオゾン層を破壊するという学説を発表し、実際の観測で事実だと分かりました。
 この成果により、2人は1995年にノーベル化学賞を受賞しています。
 そこで国際条約で製造や使用が禁止されましたが、10数年かかるサイクルですから、これまでに空中に放出された大量のフロンが影響してオゾンホールは現在でも拡大し、過去30年間で6倍になり、2006年10月には過去最大を記録しています。

 そこでニュージーランドですが世界地図を見れば分かるように、ニュージーランドは南米大陸の南端に次いで南極に近い位置にあるため、オゾンホールの影響を大きく受けているというわけです。
 オゾン層の減少の影響については「1・2・3ルール」といわれる法則があり、オゾン層が1%減ると紫外線が2%増え、皮膚がんは3%増えると言われていますから、なかなか深刻な問題です。実際、ニュージーランドは皮膚がん発生率世界一です。
 ニュージーランドの新聞やテレビジョン放送の天気予報では、明日の紫外線量の予測が報道されています。
 紫外線の人体への影響について、UVインデックスという国際的な目安が作られており、レベル1〜2であれば外出は問題なし、3〜7の場合は、外出の場合は日陰を利用するようにし、長袖の上着を着て、サングラスと帽子を着用、そして日焼け止めクリームを塗る、8以上であれば外出を控え、どうしても外出する場合は服装に十分に注意するということになっていますが、それを地域ごとに報道しているのです。

 日本では大丈夫かということですが、気象庁の観測データによると、沖縄では6月から9月の4ヶ月間は平均して8以上になっていますし、札幌でも1年に何日かは8以上になっていますから、安全という訳ではありません。
 心配される方は気象庁のホームページで紫外線の予測情報を見ることができますので、それを参考に外出のときに服装などを決められたらいいと思います。





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