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論文

 僕は現在、仕事で暖かいニュージーランドに来ております。
 そこで今週と来週はニュージーランドについてご紹介したいと思いますが、今週はニュージーランドの自然を中心にご紹介します。
 ニュージーランドは北島と南島と呼ばれる2つの島が南半球の南緯34度から47度にまたがって存在しています。
 日本では鹿児島が北緯33度、稚内が北緯45度ですから、丁度、日本と南北逆の位置にあります。
 したがって気象条件は現在がもっとも気温が高く、7月から8月にかけてもっとも涼しくなります。
 面積は北島が11万6000平方キロメートルですから本州の北半分ほど、南島が15万1000平方キロメートルですから本州の南半分と九州を加えた程度です。
 ここまでは似ているのですが、大きく違うのが人口です。現在、ニュージーランドの人口は415万人ですから日本の30分の1程度で、したがって人口密度は日本の24分の1、日本と比べれば満員電車と数人しか乗っていない車両という程度の差になります。

 この2つの島の自然条件は大きく違っています。
 ニュージーランドは太平洋プレートとオーストラリアプレートが重なり合った場所にあるのですが、北島はプレートの境界に近いために火山活動が活発で、北海道に似た形をした島の中心に琵琶湖よりもわずかに小さいタウポ湖という湖があります。
 これは現在から2万6500年前の大噴火でできた火口に水が溜まり、さらに西暦181年の大噴火で面積が広がった湖です。
 その周辺には現在でも地熱が吹き出している場所がたくさんあり、間欠泉や泥が地中から湧きあがってくるマッドプールがありますし、当然、温泉も各地にあります。
 そこで先週は若い女性とタウポ湖でカヌーをし、一緒に温泉に入りました。誤解のないように申し上げますが、すべてテレビジョン番組の仕事です。

 北島が火の島であるとすれば、南島は反対に氷の島で、富士山よりも高い標高3754メートルのマウント・クックをはじめ多くの高い山があり、サザンアルプスと呼ばれていますが、そこには氷河があります。
 マウント・クックの位置は南緯44度くらいで、日本に置き換えてみると北海道の大雪山系の位置に相当します。大雪山系には氷河はまったくないのに、なぜニュージーランドにあるかというと、その位置に関係があるのです。
 サザンアルプスは南西から北東にかけて海岸に沿って切り立っていますが、そこに偏西風が当たって大量の雨や雪を降らせます。山頂付近では年間1万5000ミリメートル、山麓でも5100ミリメートルです。
 日本では、もっとも降水量が多いといわれる屋久島で1万ミリメートル、紀伊半島の大台ケ原で5000ミリメートルから8000ミリメートルですし、大雪山系の麓にある旭川では1000ミリメートル程度ですから桁違いの降水量です。
 それらの雨や雪が凍って氷河になり、南半球最大のタスマン氷河もありますし、森林の中を流れる珍しい氷河もあります。
 大量の雨のために山腹はレインフォレスといわれる森林地帯になっており、氷河がその森林の中を流れてくるのですが、これは世界に3つしかなく、そのうち2つがニュージーランドにあるフランツ・ジョセフ氷河とフォックス氷河なのです。

 もうひとつニュージーランドで紹介したい自然は生態系です。
 ニュージーランドの動物というと「キーウィ」という鳥を想い出す方が多いと思いますが、ご存知のように飛ばない鳥です。
 「キーウィ」以外にも、ニュージーランドには「タカヘ」「カカポ」など飛ばない鳥がいますし、絶滅してしまいましたが、世界最大といわれる「モア」という身長3メートルもある「ダチョウのような鳥もいました。
 なぜ飛ばない鳥が誕生したかというと、ニュージーランドという島国の誕生の経緯と関係があります。
 現在から6億年ほど前、南半球にはゴンドワナ大陸という超大陸があったのですが、1億年ほど前に分裂しはじめ、南極大陸、南アメリカ大陸、オーストラリア大陸などが誕生したのですが、ニュージーランドはゴンドワナ大陸の生物を乗せたまま現在の位置まで流れ、8000万年近く孤立していました。
 しかし、その時期にはニュージーランドには2種類のコウモリと海辺に泳いできたオットセイ以外には哺乳類が居なかったので、地上は安全で飛ぶ必要がなかったのです。
 それからはるかに後の千数百年前に人間が到来し、食料にしたり、持ち込まれたイヌやネコの餌食となって、「モア」は絶滅し、それ以外の飛ばない鳥も激減してしまい、現在は保護されている状態です。

 もうひとつゴンドワナ大陸の面影を残しているのが南島の南端のフィヨルドランド国立公園にあるシダ類が茂っている森林です。
 ここには200種類以上のシダが生息し、最大のブラックツリー・ファーンは高さ20メートル、一枚の葉の長さが5メートルという巨大な植物です。
 人間が到来する以前、ニュージーランドの北島は全体が森林に覆われていたのですが、次々と伐採されて4%を残すだけになってしまいました。
 しかし、人口が少なかったために、海岸はほとんど自然のまま残され、「イエローアイドペンギン」「フィヨルドランドペンギン」「ブルーペンギン」という3種類のペンギンのコロニーが至る所にあります。
 ニュージーランドは一度は大きく自然を壊してしまったという反省から、現在は環境保全省を設立して、環境保護を徹底しています。訪問していただいて、日本にはない自然を体験していただければと思います。





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