TOPページへ論文ページへ
論文

 情報社会の発展は日進月歩ではなく、秒進分歩だといわれ、大変な勢いで進んでいますが、日本は知らない間に遅れてしまい、2005年から2006年の数字ですが、携帯電話の人口あたりの普及率は世界で34番目ですし、時間あたりの通信料金は世界で安い方から47番目という高い国になっています。
 コンピュータも人口あたりの普及率は20番目、インターネットのブロードバンド回線の普及も世界で18番目です。唯一自慢できるのは、ブロードバンド回線の利用料金が世界一安いということくらいです。
 これらの数字で見ると日本は情報後進国になってしまった感がありますが、日本が先端を進んでいる分野があります。その実証実験が今週から東京で始まり、どなたでも参加できますので、今日は、その実験の概要をご紹介したいと思います。
 その名前は「東京ユビキタス計画・銀座」という実験で、今週の日曜日の1月20日から始まり、3月1日(土)まで行われています。

 ユビキタスという言葉はどこにでも存在するという意味で、情報通信の分野では「いつでも、どこでも、だれでも」利用することのできる通信技術の意味で使われています。
 具体的な例をご紹介したほうが分かりやすいと思いますので、現在、銀座で行われている実験の主な内容をご紹介したいと思います。
 この実験を体験するためには、後ほどご紹介する実験事務局に申し込んで、ユビキタス・コミュニケータという携帯電話より一回り大きい端末装置を借り、それを首から下げて銀座の街にでます。
 どのようなサービスがあるかというと、まず道案内です。銀座の中央通と晴海通の沿線で行きたい場所を端末装置の画面の地図で指定し、例えば、地下通路から出発すると「この先30メートル先を右に曲がり、そこにある階段を上がって地上に出てください」というような案内が音声と画像で示されます。
 階段を上がると「20メートル直進した左側です」と案内され、近付くと「左手が目的の建物です」というように到達できます。カーナビゲーションの歩行者版という感じです。

 その建物が実験に参加して情報を発信していると、建物の歴史や特徴などの解説を聞くこともできます。
 しかし、この技術開発の当初の目的は「自律移動支援システム」であるため、視覚障害や聴覚障害の方や車椅子で移動する方への案内が充実しています。
 例えば、視覚障害の方は無線の受発信できる白杖を黄色いタイルに当てて歩くと、そこから案内情報が送られてきますし、車椅子の方には、車椅子で利用できる公衆便所の場所、通路にある段差の高さ、車椅子で上下できるエレベータの位置などの情報も案内されます。
 楽しいサービスも始まっています。「銀ブラモード」といわれる内容で、歩いているとディスクジョッキーが、その場所に関係のある銀座の話題を提供してくれます。
 それ以外にも、地下通路を歩いているときに、地上の光景をパノラマ写真で見ることができるとか、外国語も英語、中国語、韓国語で案内があるとか、携帯電話にQRコードを読み込んでおくと、一部の機能は携帯電話でも利用できるようになっています。

 関心がある方「東京ユビキタス計画・銀座実験事務局」03-4519-5040で、9時30分から17時30分まで受け付けています。
 この体験は人数制限があるので、満員で駄目であった場合には、銀座以外でも類似のサービスが行われているので、そちらで体験することも可能です。
 東京の上野動物園では無料で貸してくれる端末装置を持って園内に入ると、檻の前で、中にいる動物の解説をしてくれますし、六本木にできた東京ミッドタウンでは有料ですが端末装置を借りて内部を歩くと、あちこちに置いてある彫刻などの芸術作品の解説を聞くことができます。新宿にある伊勢丹の本店の屋上庭園「アイ・ガーデン」でも、会員になると、端末装置を借りて、庭園にある植物の説明を受けることができるようになっています。

 このユビキタス技術の目指していることの第一は精密住居表示を確立することです。
 現在、住居表示には7桁の郵便番号が使われていますが、東京などでは一つの郵便番号の中に2000軒ほどの家があるので、一軒一軒を識別することはできません。また、現在位置を確定するのもGPSがありますが、精度が10メートル程度ですし、地下街や建物の中で利用できません。
 そこで地上・地下の様々な施設や場所に「ユーコード」と名付けられた番号を次々に振っていくと、建物、郵便ポスト、電柱などの位置を明確に示す地図を作製することが可能になります。
 これを一般に情報公開すれば、道案内や荷物の配達、災害のときの避難や誘導などに利用できますし、新たなビジネスを作り出すことも期待されます。
 もう一つ重要なことは多数の人々が参加して地図を作製する仕組みが必要だということです。
 例えば、車椅子で移動する場合、公的な仕組みで1センチメートル程度の段差がどこにあるかを調べることは実質的に不可能です。
 多くの人が手分けして調べたり、気が付いた人が連絡して情報を集積していくことが必要です。
 そのように、官だけではなく、産業界も一般の人々も参加して生活しやすい社会を作っていく手段をユビキタス技術が創り出すことが重要なのです。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.