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論文

 この「日本全国8時です」は1972年12月にスタートして今年で35年になる長寿番組ですが、森本さんと遠藤さんが出演されるようになってからも、この8月13日に4500回目を迎え、17年以上も続いているということで、おめでとうございますと申し上げるとともに、森本さんと遠藤さんのご努力に感嘆しております。

 しかし、このような長寿番組は上には上があり、ラジオについて調べてみると、1925年から放送を開始しているNHKには、放送開始とともに始まり現在まで82年続いている「株式市況」や、1928年から79年続いている「ラジオ体操」、また戦争中の4年間は中断しましたが、放送開始の1926年から通算すると77年になる「基礎英語講座」などの長寿番組があります。

 戦後から始まった民間放送では、このJRN系列で放送されている「こども電話コンクール」や、遠藤さんが毎朝放送しておられる「歌のない歌謡曲」で、民間放送のはじまった1951年から始まり、何と現在まで56年も放送され、ギネスブックに登録も検討されている長寿番組です。
 それらの中で、同じ人が続けてきた番組では、TBSラジオの「秋山ちえ子の日曜相談室」が最長で、2005年10月に終わるまで48年間も続きました。
 それ以外にも遠藤さんが相手をしておられる「永六輔の誰かとどこかで」が1967年から40年間も続いている番組です。
 現在も放送されている長寿番組はすべて遠藤さんが出演しておられるもので、噂では遠藤さんに国民栄誉賞を贈る検討もされているそうです(笑)。

 そこで今日は長寿番組にあやかって、一般の商品で100年以上に亘って販売されている長寿商品、ロングセラーをご紹介したいと思います。
 第一は「花王石鹸」です。石鹸の歴史は5000年以上ありますが、日本に伝わったのは、鉄砲などと一緒にポルトガル人が持ってきた1543年頃です。
 これが一般に販売されるようになったのは明治時代になってからで、まず洗濯石鹸が明治6(1873)年に製造され、化粧石鹸は明治23(1890)年に長瀬富郎が創業した長瀬商会(現在の花王株式会社)が発売したのが最初です。
 これは1個12銭で、桐箱に入れた3個が35銭でした。輸入の石鹸は1個20銭から30銭でしたから、それよりは安かったのですが、当時のコメの値段が1升6銭から9銭でしたから、コメ2升分に相当し、現在の値段にすれば1個1000円ほどになります。
 この「花王」という名前は、当時の化粧石鹸は「顔洗い」といわれていたので、その「顔」を「花王」にしたのだそうです。
 その後、品質の向上、値下げ、包装のデザインの工夫をするとともに、新聞に1ページの広告をするなど販売戦略により、1970年に発売した「花王石鹸ホワイト」が大ヒット商品になりました。さらに1980年代からはお中元やお歳暮の定番商品ともなり、100年を超えるロングセラーになっています。

 第二は「森永ミルクキャラメル」です。キャラメルはラテン語のサトウキビを意味する「caramella」に由来し、砂糖を焦がした調味料としてのキャラメルとお菓子としてのキャラメルがあります。
 日本に伝わったのは石鹸と同様、ポルトガル人によって16世紀の中頃に「カルメイラ」という名前で伝わってきました。
 僕の子供の頃には、家でお菓子として作っていた「カルメラ焼き」の元祖です。
 お菓子のキャラメルを日本で最初に製造したのは森永製菓を創業した森永太一郎です。 
 佐賀の伊万里出身であった森永は陶器の販売のためにアメリカに渡りますが上手くいかず、一旦帰国して、今度は菓子の技術を学ぶために再度アメリカに渡り、帰国して森永西洋菓子製造所を設立して明治32(1899)年に作った商品がキャラメルです。
 最初はワックスペーパーに包んで1粒ずつ売り、1粒5厘でした。9年後の明治41(1908)年に10粒をブリキ缶に入れて10銭で売り出しますが、当時はもりそばが3銭、たいやきが1銭でしたから、高すぎて売れませんでした。
 そこで大正3(1914)年に、現在も販売されている黄色の紙の箱に20粒を入れ、「滋養豊富/風味絶佳」という言葉を書いた製品を10銭で売り出したところ、爆発的に売れるようになり、これも100年以上のロングセラーになりました。

 第三は「金鳥の渦巻き蚊取り線香」です。これは大日本(ダイニホン)除虫菊株式会社から発売されているのですが、慶応義塾大学を卒業して和歌山県有田市でミカン農園を経営していた上山(ウエヤマ)英一郎が、アメリカにミカンを販売したいと考え、恩師の福沢諭吉からアメリカの会社社長のアモア氏を紹介され、ミカンの苗木を贈ったところ、除虫菊の種をお返しにもらいました。
 その除虫菊を乾燥させて粉にし、おがくずと混ぜて火鉢でくすぶらせると、虫除けになることが分かったのですが、夏に火鉢というわけにもいかないので、線香に練り込む製品を開発し、明治23(1890)年に発売します。
 しかし、線香では40分もすれば燃え尽きてしまうので、困っていたところ、ゆき夫人の「渦巻きにしてみたら」という一言で、現在まで販売されている7時間は保つ「金鳥の渦巻」が明治35(1902)年に発売されたのです。
 これは1967年から現在まで続く「金鳥の夏・日本の夏」という名コマーシャルの効果もあり、100年以上のロングセラーになるとともに、現在ではアジアでも人気商品になっています。

 このような長寿商品に共通する特徴は、時代の要請に応える品質を絶えず提供する努力をしてきたことですが、同時に人々の心に浸透するブランドを確立したことだと思います。
 そういう点からすると、この「話題のアンテナ日本全国8時です」も森本さんと遠藤さんの名声でブランドが確立していますので、長寿番組日本一になるまで続けていただくことを期待しております。





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