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論文

 現在、北京では来年のオリンピック大会の予行演習として様々な競技種目のオリンピックテスト大会が開かれているのですが、先週、そのカヌー部門に行ってきましたので、北京の最新事情を御所介したいと思います。
 実は、今年から国際カヌー連盟のスポーツと環境を検討する委員になり、その会議がオリンピックテスト大会の会期中に開かれるので出席し、一緒にカヌー競技を見学してきたということです。

 北京に行くのは5年ぶりですが、大きく変わっていました。まず驚いたのが環境整備です。北京国際空港に近付き、飛行機の中から下を眺めると、曲線を使った新しい空港のターミナルビルが見えました。
 北京国際空港は現在、3800mと3200mの滑走路が使用されていますが、すでに満杯状態なので、第三の3800mの滑走路が建設され、今年の10月には滑走路の試験運用、来年2月末にはターミナルビルの試験運営に入る予定で、その突貫工事の最中でした。
 このターミナルビルは98ヘクタールの巨大な建物で、第1から第3までのターミナルビルの面積の合計は130へクタールとなります。
 成田国際空港の建物面積の合計が約60ヘクタールですから、いかに巨大かがお分かりいただけると思います。
 そして、成田国際空港の旅客数は年間3500万人で世界24位ですが、北京国際空港は来年には6000万人となり、世界のベストテンに入る予定です。  

 空港に到着すると、来年の予行演習でオレンジ色のシャツを着た若者が多数待ち構えていて案内してくれる体制が出来ており、日本のアーチェリー選手団やブルガリアのレスリング選手団が同時に到着していましたが、英語の話せる案内係が少なかったり、車の手配のタイミングが合わず、僕も到着してから1時間近く待たされました。このような問題の解決のために訓練をしているのだという感じでした。

 カヌーの会場は北京の中心部とは反対側に、空港から北に10数km行った潮白(チャオバイ)河の河畔に作られており、そこへ行く道路も両側6車線+自転車専用レーンが整備されており、交通信号も残り何秒で信号が変わるという時間が表示され、日本でもあれば便利だと思う最新の技術が導入されていました。
 そして北京オリンピックのキャッチフレーズが「好運北京(Good Luck Beijing)」で、その旗が空港から会場まで、道の両側に立てられており、すでにオリンピック機運が高まっているという雰囲気でした。

 オリンピックのカヌー競技は静水で一定距離を早く漕ぐフラットウォーターと、激流でポールをくぐりながら下るスラロームがありますが、その両方の競技場が同じ場所に併設されています。
 スラロームの激流はポンプで水を汲上げて人工的な水路に流して作り出す最新の施設で、日本では吉野川の大歩危小歩危にもないような激流の連続で、僕などはお金を貰っても下る気はしない急流でした。
 僕が見学に行った日は、女子のスラローム競技が行われていましたが、驚いたのは開催国である中国が一気に強くなっていることでした。
 この競技は伝統的に、ドイツ、ハンガリー、チェコなどが強いのですが、それらの国々の強豪を抑えて、中国選手が2位と8位に入っていました。
 これまで中国はほとんど実績がなかったのですが、ヨーロッパへ選手を送り込み、短期間で一流選手を養成しているようで、国を挙げて取組んでいるという雰囲気で、日本は今回は選手を送っていませんが、真剣に訓練をしないと対抗できないと感じました。

 問題はないかということですが、第一は大気汚染です。2日とも気温が30度以上になる晴れた日でしたが、空港に到着するときも空一面がモヤのかかった状態でしたし、競技場は郊外の林に囲まれた場所にあるのですが、やはり一日中霞んでいました。
 測定結果によると、北京の空気中の粉塵の量は東京の5倍以上で、走っている自動車の車内でも目がしょぼしょぼする状態でしたから、このままではマラソン選手などは大変だと思いました。
 その主要な原因は自動車の排気ガスだということで、僕が行ったときに丁度、その対策として自動車を半減する実験が行われていました。
 これは日本のテレビジョンのニュースでも紹介されていましたが、奇数の日には奇数のナンバープレートの自動車だけ、偶数の日には偶数のナンバープレートの自動車だけに通行許可を与えるという実験で、自動車に乗りながら両側の車を調べてみると、警察のパトロールカー以外は、その通りでした。
 その効果かどうかははっきりしませんが、空港までの移動もまったく渋滞に巻き込まれずに順調でした。

 競技のときの問題は応援のマナーだと言われています。今月1日から8日まで中国の瀋陽で開かれた男子サッカー22歳以下の代表4カ国大会でも、中国人応援団が日本人応援団に紙コップを投げつけるなど問題がありましたが、最近では行政の方からの呼びかけもあり、次第に良くなっているようです。
 もう一つの問題が、日本でも話題になっている安全ではない食品です。今回は国際オリンピック委員会が関係している会議なので、食事は心配ないと思っていましたが、それでもミネラルウォーターは注意深く栓を確認して買いました。

 このような問題もありますが、中国は来年の北京オリンピックと2010年の上海万国博覧会で、国際的な地位を高めようと努力しています。
 これは丁度、1964年の東京オリンピックと1970年の大阪万国博覧会で日本が目指していた状況と瓜二つで、当時の日本も光化学スモッグが1970年に各地で発生し、東京の交通渋滞は酷い状況でした。そういう意味では日本も中国を非難するのではなく、先行した国として情報を提供したり支援をするべきだと思います。





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