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論文

 明日7月20日は人類の歴史の中で重要な飛躍をした記念すべき日です。38年前の1969年7月20日、アポロ11号に乗った3人のうちニール・アームストロングとエドウィン・オルドリンの2人が月着陸船イーグルに乗り移って月面に着陸し、アームストロング船長が人間としては初めて月面に立ちました。
 アームストロング船長が月面に足跡を記したときの「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては巨大な飛躍である」という言葉が有名です。
 現在までのところ、人間は月にまでしか到着していませんが、機械だけであれば、地球の近くにある水星、金星、火星はもちろん、木星、土星、天王星、海王星にも探査機が送られていますし、太陽系の中を周回している彗星にも、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、日本が探査機を送っています。

 これらの探査はどのような目的で行われているかというと、もちろん、宇宙の誕生や太陽系の誕生の仕組を解明したいということもありますが、生命体の存在を調べたいということも目的になっています。
 太陽系内の惑星や衛星には、人間に匹敵するような知的水準をもつ生物は存在していないようですが、広大な宇宙の中には、どこかに人間程度かそれ以上の知的生命体がいるのは確実で、それを調べたいという本能のような好奇心が人間にはあるのだと思います。
 実際、今年4月24日に欧州南天文台(ESO)が地球から20・5光年の彼方に、直径が地球の1・5倍、質量が5倍、13日間で恒星の周囲を回っている惑星を発見したと発表しています。この表面温度は0℃から40℃なので、水も存在し、生命が発達している可能性は十分にあるということです。

 その歴史を調べてみると、すでに1959年に2人の学者がイギリスの『ネイチャー』という科学雑誌に「星間通信の探査」という論文で「地球外に文明社会が存在すれば、我々はすでに、その文明と通信するだけの技術的能力を持っている」という内容を発表し、科学界に衝撃を与えました。
 それが契機となって、翌年に「オズマ計画」が実施されました。これは生命体が存在している惑星を持つ可能性が高く、かつ地球から近い(10・5光年)2個の恒星(クジラ座タウ/アリダヌス座エプシロン)を選び、アメリカのグリーンバンク国立電波天文台の電波望遠鏡を向けて150時間の観測を行いましたが、意味のある信号は受信できませんでした。

 ところが翌年、フランク・ドレイクという学者が銀河系の中に知的文明が存在する可能性を推定する「ドレイクの方程式」を提唱し、いくつかのパラメータを設定して計算してみると、どれも確率が1以上になる、すなわち、地球以外にも知的生命が存在しているということで、俄然、研究が活気づき、1961年にSETI会議が開催され、本格的に取組むということになりました。
 このSETIは「Search for ExtraTerrestrial Intelligence」の頭文字を取ったものですが「地球外知的生命探査」という意味です。
 これは宇宙から飛来してくる電波を電波望遠鏡で受信して、その中に規則的な信号があれば、文明水準の高い生命体が発信している可能性があると判断するという研究です。
 しかし、研究はなかなか進展せず、1980年にカリフォルニア大学バークレイ校で第一歩となる「セレンディップ計画」が始まったのですが、翌年、SETI計画に付ける予定であったNASAの予算が否決されたりして難航しました。

 この計画が飛躍すると同時に世界中の関心を集めるきっかけとなったのが、1999年から始まった「SETI@home」計画です。これは受信した宇宙からの電波を解析するために、個人の持っているPCを借用するという方法です。
 プエルトリコにあるアレシボ電波望遠鏡(2020年12月1日に崩壊)が集めた電波を、インターネットを経由して個人のコンピュータのスクリーンセイバーに送り、コンピュータを利用していないときに計算して結果を返送するという仕組です。
 開始3ヶ月で世界中の40万人が協力し、2005年12月に新しい方式に移行する時期には600万人という数字になり、世界で最高能力のコンピュータと言われるほどで、分散型コンピュータの象徴となりました。
 しかし、この膨大な研究の成果は、現在のところ、魚座と牡牛座の方角から1420Mhの信号が3回受信されたという程度ですし、仮に人間が到達できない何10億年の彼方に規則的な電波を発信する惑星があるということが分かって、どれほどの意味があるかということですが、先週末に北海道のサロベツ原野で、降る星の如くという星空を眺めていると、どこかに自分たちと同じような生命が居るということは考えたくなるし、スピルバーグ監督の映画「ET」が現在でも日本の暦代映画興行成績の9位にあることや、SETI@homeに何百万の人が協力するという事実を見ると、多くの人々がロマンを感じるテーマだということだと思います。





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