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論文

 今日5月10日から16日までの1週間は「バード・ウィーク(愛鳥週間)」です。
 これは1894年にアメリカのペンシルバニア州オイルシティという町のバブコック教育長が4月10日を、野鳥を観察して保護運動をする「バードデー」にしようと提言して始まったものです。
 日本でも、戦後来日したアメリカの鳥類学者オリバー・オースティン博士の勧めで、1947年4月10日に東京の日比谷公会堂で最初の行事が行われました。
 ところが日本の国土は南北に細長いので、4月10日には積雪のため鳥の観察ができない地域があるということで、1950年から5月10日に移され、さらにより多くの人に関心を持ってもらおうと、1週間に延長され、現在に至っています。
 今日から全国各地で、野鳥観察会や植林事業など、様々な行事が行われています。そこで今日は、鳥についての興味深い話をご紹介したいと思います。

 世界の大半の国は自国を象徴する「国花」を定めています。日本は「ヤマザクラ」と「キク」、ヨーロッパでは、イギリスが「バラ」、オランダが「チューリップ」、スイスが「エーデルワイス」、アジアでは、インドは「ハス」、マレーシアは「ハイビスカス」、シンガポールは「ラン」など、やはりその国を想像させる花が選ばれています。
 分かっているだけで100カ国近くが「国花」を制定しています。
 同様に「国鳥」すなわち国を象徴する鳥を定めている国もありますが、これは以外に少なくて、25カ国ほどです。
 日本は「キジ」ですし、世界に知られているところではアメリカの「ハクトウワシ」、ニュージーランドの「キウイ」、インドの「クジャク」、韓国の「カササギ」、イギリスの「コマドリ(ロビン)」、オーストラリアの「エミウ」などがあります。

 最近、この国鳥を定めることで話題になった事件がありました。中国の国鳥問題です。
 4000年以上の歴史を誇る中国で国鳥が制定されていないのは残念ということで、国家林業局と中国野生動物保護協会が事務局となって、2003年から選定作業を始めました。
 そして10種類の鳥を候補として選び、2004年からインターネットで国民投票をした結果、770万票のうち65%の500万票が「タンチョウヅル」に投票され、めでたく決定という直前になって、国務院から待ったがかかりました。
 「タンチョウヅル」の学名が「グルス・ヤポネシス」であり、英語名が「ジャパニーズ・クレイン」であることが指摘され、世界で使用されている学名が変更できないのであれば、「日本」の名前の付いた鳥を国鳥にはできないということになったのです。
 古来、中国では「タンチョウヅル」は寿老人を運ぶ目出たい鳥として「仙鳥」といわれ人気があり、来年開催される北京オリンピックのマスコットの国民投票でも、1位のパンダの110万6484票に肉薄する108万674票を獲得する人気だったので、今回も当然の結果でしたが、最近の中国人の日本への感情を考えると、とても納得できる話ではないということです。

 DNAを調べてみると、日本と中国の「タンチョウヅル」には差があるということが分かったので、マスメディアを動員して学名の変更を運動しろという過激な意見もありました。
 韓国で「日本海」という名前は不愉快だから「東海」にしようとか、「KOREA」だとアルファベット順で「JAPAN」の後になるので、「COREA」に変えろという類です。
 ところが亜種として認められたとしても「グルス・ヤポネシア・チャイナ」のように、日本の後に中国が来るので、さらに問題だということで、結局、それほど投票されなかった「オシドリ」に落ち着きそうです。
 その理由は、いつもオスとメスが行動をともにしており縁起がいいということと、「タンチョウヅル」はIUCN(国際自然保護連合)の発行している「レッドリスト」に「絶滅の危険性が高い種」として掲載されているので、絶滅してしまうと格好がつかなくなるということです。

 確かに、2003年10月10日に佐渡で最後の1羽が死んで絶滅した「トキ」の学名は「ニッポニア・ニッポン」ですから、日本の国鳥にふさわしい鳥ですが、もし「トキ」を国鳥としていたら、中国からもらった99%以上の遺伝子が共通の中国の「トキ」を繁殖させようとしている現在、あまり気分のいい話にはならなかったということで、中国の気持はよく理解できます。

 このIUCNのレッドリストについてご説明したいのですが、これには何種類かあり、完全に絶滅したEX、野生の状態では絶滅したEW、近い将来に野生状態では絶滅するCR、それに近い状態にあるEN、絶滅の危険が増大しているVUなどに分けられます。
 日本では「コウノトリ」「シマフクロウ」「ヤイロチョウ」「ライチョウ」「タンチョウヅル」などが代表ですが、世界の鳥類について2006年のリストで調べると、EXとEWが139種、CRとENで532種、VUで674種が掲載されており、これまで知られている鳥9934種の12%に相当します。
 鳥に限りませんが、野生の動物が消えて行くということは、自然環境が消滅していくことを示しています。この愛鳥週間をきっかけに、周囲の自然を見直していただくといいと思います。





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