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論文

 今日5月3日は安倍内閣になって改正議論が盛んな現行の憲法が施行された憲法記念日の祝日ですが、もう一つ「ゴミの日」にも指定されています。
 言わずもがなですが、5月3日に掛けて廃棄物について考えようというわけです。ちなみに、5月30日は「ゴミゼロの日」です。

 そこで今日はゴミについて様々な話題をご紹介したいと思います。
 まずゴミは何種類あるかということから始めたいと思います。現在は多くの自治体が家庭のゴミを回収するときに分別収集をしていますが、多いのは5種類から8種類に分けている自治体で、全体の36%になります。
 しかし、熊本県の水俣市では22種類に分別することを義務付けており、日本全体で20種類以上に分けて出すことにしている自治体は120以上もあります。
 もっとも細かく分別しているのは、木の葉を「つまもの」ビジネスにしたことで有名な徳島県上勝町で、2003年9月に2020年までにはゴミをゼロにするという宣言を発表し、そのために何とゴミを34種類に分けています。

 上勝町のホームページで調べてみると、「カン」は「アルミ缶」「スチール缶」「スプレー缶」と3種類に分け、「ビン」は「透明ビン」「茶色ビン」「リサイクルビン」「それ以外のビン」の4種類、「紙類」は「紙パック」「段ボール」「新聞・折込みチラシ」「雑誌・コピー用紙」と4種類に分けなければなりません。
 上勝町は四国山地の山の中にある人口2000人の小さな自治体ですが、ゴミ収集車もゴミ焼却所もなく、町に1ケ所しかないゴミステーションへ午前7時半から午後2時までの間に、住民が自分で持ち込まなければなりません。
 このような細かな分別をしている結果、ゴミの再資源化率が80%にもなっています。日本全体の再資源化率が2002年で16%程度ですから、80%がいかに高い数字かが分かると思います。

 このような分類は住民がゴミを出すときの基準ですが、国全体の政策を検討するためのゴミの分類は、もう少し簡単で、まず「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に二分され、さらに「一般廃棄物」は家庭から出てくるゴミとオフィスなど事業所から出てくるゴミに分けられます。
 産業廃棄物はゴミを排出する企業などが処理しなければならないのですが、一般廃棄物は自治体が処理する必要があるので、この一般廃棄物について考えてみたいと思います。
 世界各国の一人あたりゴミ排出量と一人あたりのGDPの関係を調べてみると、比較的はっきりと比例しており、豊かな社会ほどゴミの量が多いことが分かります。
 例えば、アメリカは一人あたり年間760kgもゴミを出しますが、トルコは約半分の390kg、メキシコは4割の310kgです。

 この原則を根拠に岡山大学の環境理工学部の方々が、世界全体のゴミの量を予測しておられますので、その数字を紹介させていただきたいと思います。
 論文によると、2000年には一般廃棄物が16億トン、産業廃棄物が111億トンの合計127億トンでしたが、2050年には一般廃棄物が32億トンと2倍になり、産業廃棄物が240億トンと2・2倍になるという結論になっています。
 2002年に日本の社会が消費した物資の総量が20億トンで、ゴミになった量が6億トンですから、どの程度かがお分かりいただけるかと思います。
 問題は大量のゴミの処理ですが、大きく3種類の方法で処理されています。
 第一はそのまま空き地に捨てる方法、第二は焼却などによって減量して捨てる方法、第三はリサイクルして資源として再利用する方法です。

 日本の場合、第一の方法が4%、第二の方法が78%、第三の方法が17%になっており、この処理のために年間2兆4000億円、国民一人あたりで1万9000円近くが使われています。
 色々な問題がありますが、日本の大きな問題は埋立てる最終処分場が無くなりつつあるということで、一般廃棄物はあと10年分、産業廃棄物は数年分しかなく、最近では各地で「ゴミの掘り起こし」が始まっています。
 これは以前に埋めたゴミを掘り出して焼却し、容積を減らして埋め戻すという作業ですが、新潟県巻町(まきまち)では、町内の処分場の8割までを使ってしまったので、今後10年から15年は掘り起こしを続けて、40年以上延命をする計画です。

 しかし、何と言っても有効な方法は再資源化です。これについてはエネルギーの無駄だと言う学者も居られますが、以前にもご紹介したマテリアル・インテンシティ(MI)という概念で考えると、やはり重要です。MIは人間に取って有用な物質を手に入れるために、どれだけの資源を必要とするかという数値です。
 例えば、1トンのアルミニウムを手に入れるためには、原石であるボーキサイトや精錬の過程で必要な物資の合計が85トン必要です。
 ところがアルミ缶などを回収してリサイクルすると3・5トンの物資で1トンのアルミニウムが得られる、すなわち24分の1で良いということになります。
 このリサイクルでもっともエネルギーを必要とするのは家庭などから回収し、分別する段階です。そこで徳島県上勝町のように、住民がゴミを細かく分別してステーションまで持参すれば、その段階のエネルギーを大幅に減らすことができ、リサイクル率も上がります。
 我々がゴミ問題の深刻さを認識して積極的に協力することが重要だということです。





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