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論文

 今年の4月は4年に1回の統一地方選挙が行われ、東京都の知事選挙も候補者が次第に明らかになって話題が盛り上がっています。そこで今日は統一地方選挙について、ご紹介させていただきたいと思いますが、特定の選挙について候補者の品定めということではなく。統一地方選挙という仕組についての話題です。

 戦後の昭和22年に地方自治法が制定され、現在の都道府県制に移行するとともに、知事が官選から公選になりました。それを契機に全国一斉に首長と地方議会議員の選挙を行うことになり、昭和22年4月に第1回の統一地方選挙が行われたのです。
 本来、首長と地方議会議員の選挙日は、それぞれの自治体で決めることになっているのですが、それらの選挙の投票日を統一するという臨時特例法を4年ごとに制定して、統一地方選挙を実施してきたのです。
 そして通例は4月の第2日曜日に、都道府県と政令指定都市の首長と議会議員、第4日曜日に、それ以外の市区町村の首長と議会議員の選挙を行うことになっており、今年も通例に従って4月8日と22日に行われます。

 同じ日にすることについては2つ理由があります。第一は一斉に行えば有権者の関心が高まり投票率が向上するということ、第二は選挙にかかる経費が削減出来るということです。
 総務省の推定では、統一地方選挙で選挙を行うと、投票率は5〜10%向上し、費用は60億円節約出来るそうです。
 ところが初回の昭和22年こそ、すべての選挙が統一地方選挙で実施され、統一率は100%でしたが、回を重ねるごとに統一率が下がり、前回の平成15年では平均36・26%、今回は29・49%と過去最低となり、4月に行われる選挙は全体の4分の1強という程度になってしまいそうです。
 理由は市町村合併がおこなわれると、その時点で首長と地方議会議員の選挙が行われるのでずれてしまうことになりますが、今回は平成の市町村大合併の後なので、一気に低くなったわけです。
 もう一つの理由は、最近のように知事や市町村長が不祥事で辞任に追い込まれると、不規則な時期に選挙が行われ、これも統一率を下げてしまいます。
 実際、4月の統一地方選挙で知事選挙を行うのは13都道府県と、47都道府県の28%でしかありません。

 鶏か卵かの判定は難しいのですが、統一率の低下とともに投票率も下がり、昭和38年の第5回の統一地方選挙までは投票率は80%前後でしたが、次第に下がって前回は50%台にまで下がってしまいました。
 そこで現在、2つの動きがあります。一つは再統一するための検討で、方法としては、現在は完全にバラバラに実施されている選挙を毎年1回か2回に集約する、一部の首長や議員の任期を延長して平成23年の統一地方選挙に合わせるなどが議論されています。
 別の動きは、開票を迅速にして選挙にかかる経費を削減するという運動です。選挙にかかる費用は大雑把にいうと1票1000円と言われていますが、その費用の大きな部分が、開票に動員される役場の職員の超過勤務手当です。

 そこで開票にかかる時間を短くすれば、結果を早く選挙民に知らせることが出来ると同時に、費用も減るという一石二鳥の効果が期待されるという訳です。
 これは前の三重県知事で現在は早稲田大学マニフェスト研究所の所長でもある北川正恭教授が音頭をとって推進している活動です。
 その根拠は、地方自治法の第2条14項に「事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに。最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と書いてあるからということです。
 具体的には昨年8月6日に行われた長野県の知事選挙で小諸市は前回の選挙のときの半分の45分で終了するという目標を立て実行し、結果として34分で開票を終了しました。
 また昨年12月10日に行われた茨城県議会議員選挙では、取手市が挑戦し、地元のキャノン取手事業所から開票所の机の配置などに付いて指導を受け、前回より職員数を減らしたにも関わらず、75分かかっていた開票が42分で終わっています。
 早稲田大学マニフェスト研究所では、もし全国の市町村で開票時間を1時間短縮すると、超過勤務の単価を時間当たり3531円、開票に参加する人数を約31万人として、掛算すると11億円の節約になるということです。

 急いで間違いなどが起こるのではないかと心配をしますが、実際は集中力が高まり不注意な誤りは減っているそうです。
 そして作業をする人が協力して目標を達成するという雰囲気になり、盛り上がり効果もあるという一石三鳥にもなっているようです。
 選挙は国民が意思表示をできる重要な機会ですから、ぜひ参加していただきたいと思いますが、このような開票の裏側を知って投票をされるのも楽しいのではないかと思います。





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