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論文

 VISTAというと,現在はもっぱらマイクロソフトが1月30日に6年ぶりに発売した、PC用の新しいOSのことですが、もう一つ、最近の話題になっているVISTAがあります。
 これはベトナム、インドネシア、南(サウス)アフリカ、トルコ、アルゼンチンの5カ国の名前の頭文字を集めたものです。
 同じような国の名前の頭文字を集めた略号ではBRICsが有名です。これはゴールドマン・サックスというアメリカの投資顧問会社が、G7の次に発展する国として、ブラジル、ロシア、インド、中国が有望だと2003年に発表したものです。
 ゴールドマン・サックスはBRICs用の投資信託ファンドを発売して2兆円近い売上を達成したので、二匹目のドジョウを狙って、BRICsの次に発展する国々として「ネクスト11」を2005年に発表しました。
 これはバングラディッシュ、エジプト、インドネシア、イラン、韓国、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナムの11カ国ですが、玉石混淆という印象が強く、市場には受入れられませんでした。
 そこで登場したのがVISTAですが、これは外国の発明ではなく、日本でブリックス経済研究所の代表を務めている門倉貴史さんが命名したもので、BRICsの次に発展すると期待されている5カ国を表した名前です。

 確かに2005年の経済成長の数字を見てみると、ベトナムが8・4%、インドネシアが5・6%、南アフリカが4・9%、トルコが7・4%、アルゼンチンが9・2%という高い数字で、このVISTA5カ国を平均すると7・3%となります。
 この年、アメリカは3・5%、日本は2・7%、イギリスは1・8%、フランスは1・4%、ドイツは0・9%であり、G7の7カ国平均の経済成長は2・5%ですから、VISTAの勢いが分かると思います。
 世界の経済は、これまで牽引して来たG7、急激に成長して今後20年足らずの間にG7を追抜いて行くBRICs、そして次に控えているVISTAという構造で理解できるということです。
 ブリックス経済研究所の推計によると、その3つのグループの名目GDPは、2010年には34兆ドル、7兆ドル、1兆5000億ドルですが、2030年には57兆ドル、42兆ドル、10兆ドル、2050年には70兆ドル、94兆ドル、28兆ドルという構成になるということです。
 現在ではG7の23分の1程度でしかないVISTAの経済力は20年後には6分の1、40年後には2・5分の1まで迫って来るというわけです。

 その根拠の第一はBRICsと同様に天然資源が豊富だということです。
 例えば、金の産出量は南アフリカが世界の15%で1位、銅はインドネシアが7%で世界3位、錫はインドネシアが25%で世界2位、クロムに至っては南アフリカが世界の半分という状態です。
 埋蔵量についても、金の40%が南アフリカ、ニッケルの9%がインドネシア、マンガンの80%が南アフリカ、クロムの11%が南アフリカに存在しています。
 2番目は、トルコ以外は一次エネルギーが自給できているどころか、輸出国ということです。南アフリカは世界5位の石炭産出国、インドネシアは世界6位の天然ガス産出国です。
 3番目は人口が増大していくことで、ベトナムは現在の8000万人から2030年には1億1000万人と138%の増大、トルコは7300万人から9400万人と130%、アルゼンチンは3800万人から4700万人と124%の増大と予測されています。
 G7が少子高齢社会で消費も停滞していくなかで、VISTAは人口が増大し、個人消費も急速に増大していますから、世界が投資対象国として注目するというわけです。

 インドネシアはやや政情が不安定ですが、それ以外は安定しているので、世界各国が積極的に直接投資を進めています。
 南アフリカについて見ると、2000年には8億5000万ドルであった海外からの直接投資が2005年には58億ドルと6・8倍に増え、ベトナムでは同じ期間に20億ドルから43億ドルと2倍以上に増えています。
 アルゼンチンなどはほんの数年前までは国家財政が破綻すると言われていたほどでしたが、現在では回復していますし、トルコも2000年前後には金融危機に直面していましたが、現在ではEUへ加盟する交渉を始めるほどに回復しています。
 そして南アフリカはサーカーのワールドカップを2010年に開催し、2016年のオリンピック誘致競争では、東京の最大のライバルになるほど、国際社会での地位を確立しています。

 もちろん、すべてが素晴らしいというわけではなく、現状では貧富の格差が大きいという社会問題や、ベチナムの鳥インフルエンザが象徴するような衛生状態などの問題はありますが、長期的な見通しをもって、これらの国々と付き合って行くことが必要だと思います。





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