TOPページへ論文ページへ
論文

 今日10月19日は「海外旅行の日」ですが、理由は「遠くに行く」という他愛のない理由ですが、日本人が大好きな海外旅行について考えてみたいと思います。
 良く指摘されていることですが、日本は海外旅行について、海外から日本に出かける人よりも、日本から海外に出かける人の方が圧倒的に多い国です。
 昨年は愛地球博覧会の影響もあり、海外から日本への旅行者数が急速に増加して、前年より60万人も増えて673万人になりましたが、日本から海外への人数も60万人近く増え、1740万人になっています。
 今から20年前の1985年と比べると、出国者数と入国者数の比は、2・1倍から2・6倍と開いています。
 その結果、日本は海外から日本へ来る来訪者については観光小国といってもいいほどで、入国者数については世界30番目で、1位のフランスの14分の1に過ぎませんし、国の人口当たりの人数にすると世界の55位で、1位のオーストリアの57分の1です。
 同じように海外から来た人が使うお金についても、日本は55番目で首位のアメリカの9分の1、GDP当たりでは59番で首位のクロアチアの76分の1というのが実情です。

 このような現状は何が問題かというと、もちろん、外貨を稼ぐことによって経済を活発にすることに不利だということもありますが、国力に影響するからです。
 1997年にブレジンスキーというカーター大統領の補佐官をしていた人が『グランド・チェスボード』という本を書きました。これはアメリカの世界戦略を提案した内容ですが、そのなかで、何故アメリカが世界一の強力な国家になることができたかを分析しています。
 第一は二正面作戦を展開できる程の軍事力、第二は世界の4分の1を占める経済力、第三は多くの分野で最高の技術力をもったことだと書いています。
 ここまでは簡単に理解できるのですが、もう一つ「粗野ではあるが。世界の若者を魅了してやまない文化を育てたことである」と分析しているのです。
 確かに映画はハリウッド製作のものが世界を席巻しています。日本国内での映画の興行収入のうち、アメリカ映画は65%程度を占めていますが、イギリスでは90%以上ですし、かつては映画王国であったイタリアやドイツでも80%近くがアメリカ映画です。

 来年は西武ライオンズの松坂投手もアメリカのメジャーリーグに行くことになりましたが、日本でも韓国でも中南米の国々でも、優秀な野球選手はアメリカのチームに憧れて吸い寄せられていきます。
 文化に入るかどうかは別にして、日本も海外からの留学生が10万人を突破しましたが、アメリカは5・5倍の56万人が毎年留学してきます。
 このような文化力がなぜ重要かというと、安全保障の概念が世紀の転換時点で変化したと言われるからです。
 アルビン・トフラーというアメリカの未来学者や、クリントン政権の国防次官補であったジョセフ・ナイなどが言い出したのですが、ソビエト連邦が強力であった1980年代までは、やはり軍事力が安全保障のためにはもっとも重要であったが、ソビエト連邦が崩壊してからは、経済力の方が力を持つようになったという訳です。
 しかし、世界規模のバブル経済の崩壊により、経済力は相対的に力がなくなり、情報力や文化力がもっとも重要になってきたということです。
 そして、その情報力とは何かということですが、魅力だというのがジョセフ・ナイの意見です。それでは魅力とは何かと言うと、英語でアトラクティブネスと言うように引き付ける力なのですが、ヒト、モノ、カネ、チエを世界から自国に引っ張って来ることが安全保障になるというのです。
 実際、観光客が多ければ経済的にも潤うし、自分の国を理解してもらって、いざというときに手助けもしてもらえると思いますが、普段から交流が無ければ、そのようなことは期待できません。
 また、多数の留学生が来て、居残ってくれれば、他国の優秀な人材で自国の発展を図ることも可能です。しかし、労働者全体に占める割合も、上位の国は20%台であるのに、日本はわずか0・3%で世界でも最低の部類です。

 海外旅行の日というと、日本人が海外へ旅行するということを中心に考えてきましたが、ぜひ、日本の将来のために海外の人びとが日本に来るような努力をしていただければと思います。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.