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論文

 今週もアイルランドに居るのですが、アイルランドの西側にあるアラン島という離島に来ています。
 そこで今日はアラン島について紹介させていただこうと思います。
 アイルランド島の南西にゴールウェイという都市がありますが、そこから40kmほど沖合に、3つの島がありますが、それがアラン島です。
 一番大きな島がイニシュモア島といわれ、面積39平方キロメートルですから、伊豆大島の半分くらいの面積で、人口はわずか900人です。それ以外の2つの島はさらに小さく、人口はそれぞれ300人ほどの離島です。
 このアラン島は、日本ではアランセーターで名前が知られていると思いますが、実はしばらく前までは、アイルランドの固有の言語であるゲール語しか通用しないという、ケルトの伝統を強く残した島で有名でした。
 さらにアイルランドの劇作家ジョン・ミリングトン・シングが1898年から1902年まで2番目の島であるイニシュマーン島に滞在し、そこでの生活を文章にした『アラン島』という文章でも知られています。

 今回、僕がアラン島に来ているのは3つの島をカヤックで渡りながらケルト文化を紹介するというテレビジョン番組の撮影のために来ているのです。
 なぜアラン島を選んだかというと、あるドキュメンタリー映画を見たのがきっかけです。 
 「長編ドキュメンタリー映画の父」と言われるロバート・フラハティというイギリスの映画監督がいるのですが、彼が1934年に『マン・オブ・アラン』という題名の1時間15分ほどの記録映画を製作しています。
 これは製作した年に「ヴェネチア国際映画祭最優秀外国映画賞」を受賞したほどの名作ですが、アラン島の一つイニシュモア島に生活する漁師の自然と闘いながら生活する様子を記録したものです。
 完全な記録映画ではなく、現地の人に出演してもらって撮影しているのですが、この島の厳しい生活を淡々と描いて感動的な作品です。
 例えば、この島は巨大な岩で出来ており、その岩盤がむき出しでほとんど土がありません。そこで海岸で海草を集め、切り立った崖を登って海草を運び、岩のわずかな隙間に海草を埋めます。
 その一方で、岩の割れ目にわずかに溜まった砂を集めてきて、その海草の上にかけて土を作るのです。
 さらに、その土が大西洋からの強風で飛ばないように、岩を割って周囲に積上げて石垣を作るという大変な苦労をしてジャガイモを育てるのです。
 漁も大変で、木の骨組みに布を貼り、その上からコールタールを塗った「カラハ」という小舟を3、4人で漕いで沖に出て、ジンベイザメなどを銛で突いて獲ります。
 あるとき沖で漁をしていると天候が変わって海が荒れ始めるので、あわてて戻って来るのですが、岸で船が壊れてしまうというような場面も出てきます。
 このような荒海と戦うという姿に感動し、ぜひこの海をカヤックで渡りたいと以前から考えていたのですが、今回実現することになったという訳です。





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