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論文

 週末から北海道の知床半島をカヤックで周回していたのですが、海岸でキャンプをしている場所でヒグマに遭遇するという目に遭いました。
 朝4時頃、テントの外で寝ていた仲間の1人が僕ともう1人が寝ているテントに来て、ヒグマがいると伝えてきました。あわてて起きてみると、20mほど先の海岸に2歳くらいのヒグマがこちらを向いていました。
 クマスプレーという撃退用の装置を手にして、大声を出したところ、ヒグマは崖を登って山の中に消えて行きホッとしたのですが、もう一つのテントで寝ていた2人が起き出してきて、実は30分ほど前に、テントを外側から押されたので、強風か仲間のいたずらかと思っていたが、どうもヒグマが外からテントを押していたらしいというので、大騒ぎになりました。

 大自然の中では、このようなこともありますので十分な注意が必要ですが、普通の場所でも様々な自然現象による災害が発生しています。
 そこで1960年に定められたのが、明日9月1日の「防災の日」で、全国の自治体などで防災訓練などが行われます。
 なぜ9月1日が防災の日になっているのかは、ご存知の方が多いと思いますが、今から83年前の1923日9月1日に、東京地方で伊豆大島、相模湾を震源とするマグニチュード7・9の直下型地震が発生し、大被害になったからです。
 家屋の全壊が約11万戸、半壊が約11万戸、焼失した家屋が21万戸以上、死者と行方不明者が約10万5000人という大被害になりました。

 しかし、天災は地震だけではありません。地震に伴う津波や台風があります。津波の被害は2004年のスマトラ沖地震により、23万人から31万人の死者が出た事例が圧倒的ですが、日本でも1707年の宝永地震は巨大地震が遠州灘沖と紀伊半島沖で同時に発生したため、高知県沿岸などでは波の高さが5mから8mの津波になり、3万人以上の人々が亡くなっています。
 台風の被害は1970年にはバングラディシュで50万人、1839年にはインドで30万人など地震の被害に匹敵する死者が発生しています。
 日本では、それほどではありませんが、1959年の伊勢湾台風では4697名、1954年の洞爺丸台風では連絡船の沈没があったこともあり1761名、1958年の狩野川台風では1269名が亡くなっています。

 このような災害を少なくするためには、台風、津波、地震などの発生を予知できればいいということで、これまで様々な努力がなされてきました。
 台風については、気象衛星による観測情報とスーパーコンピュータによる進路予測計算の進歩により、比較的正確な情報をインターネットの画面でも見ることができるようになっていますが、時間との戦いである津波や地震の予測でも、実用技術が開発され、実際の運用も始まっています。
 津波については苦闘の歴史があります。1952年から専門家が取組み始めましたが、当時は手作業で、地震の発生から17分もかかり実用にはなりませんでした。しかし1980年にコンピュータを導入して14分に短縮されましたが、1983年に100人の犠牲者が出た日本海中部地震では予報より前に津波が到着してしまいました。
 そこで技術開発をして7分で予報できるようにしたのですが、その直後の1993年に発生し、200人以上の犠牲者がでた北海道南西部沖地震では3分で津波が到着してしまいました。
 そこで気象庁は10万の津波のケースをあらかじめシミュレーションしてデータベースを作成し、地震が発生したら、その中からもっとも近い状態のデータを検索し、予報までの時間を3分から5分程度に圧縮することに成功しました。そして現在、これを1分から2分程度に縮める努力が進んでいます。

 地震については、この8月から世界でも例のない「緊急地震速報」の運用が開始されました。地震が発生すると毎秒6〜8kmで伝わるP波(縦波)と毎秒3・5〜4・5kmで伝わるS波(横波)が生じます。地震の大きな揺れは遅いS波が引き起こしますので、この差を利用して、P波をキャッチして直ちに計算を開始し、予報を出すという仕組です。
 ただし、社会に広く知られていないまま情報を発表するとパニックになる可能性があるので、現在は鉄道会社や建設現場など67機関だけを対象にしています。
 仮に震源から100km離れた場所では、両方の波の時間差は20秒から30秒ですから、ほんのわずかな時間しかありません。
 実際、平成16年2月から今年の1月まで試験運用をして427回の緊急地震速報を発信しましたが、そのうち震度5弱以上の地震13回について、S波が到着する以前に予報が出せたのは4回で、一昨年の新潟県中越地震では間に合いませんでした。
 しかし、一部の鉄道会社では速報を受信すると自動的に警報を出すシステムを構築し、運転士に緊急停止指示を伝えるようにして利用しはじめています。
 自然現象の予報は大変難しいものですが、少しずつ進んでおり、さらなる研究開発が期待されます。





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