TOPページへ論文ページへ
論文

 残暑がまだまだ厳しく生活が大変です。とりわけ大都市では暑さが異常で、それを示す数字があります。
 過去100年間で、地球全体の温度は0・6℃上昇したと推定されていますが、ニューヨークでは1・4℃、京都や福岡では2・5℃、東京都心では1905年の13・5℃から2000年には16・6℃と3・1℃も上昇しているのです。
 そして1日の最低気温が25℃以下にならない熱帯夜も、東京では1966年から75年の10年間は平均15・3日でしたが、1995年から2005年の10年間は29・9日とほぼ2倍に増えています。

 その原因の一部は地球温暖化かも知れませんが、大都会の暑さはヒートアイランド現象が主要な原因だと言われています。
 ヒートアイランドというのは、大都会で、アスファルトやコンクリートが太陽熱を吸収して熱を放出したり、冷暖房や自動車から排出される熱が増大したりした結果、局所的に温度が上昇する現象です。実際、都心と郊外では5℃近い温度差があることもあります。

 世界の人口の半分が都市に生活しているといわれる現代の大問題ですが、とりわけ日本のように65%が都市人口という社会では深刻な問題で、昨年7月に「日本ヒートアイランド学会」が設立されたほどです。
 この解決の難しいところは、暑くなるから冷房をさらに使う、自動車にさらに乗るという悪循環になっており、どこかでこの循環を断ち切らないといけないというところにあります。

 そこで今日は現在、取組まれているヒートアイランド対策を色々とご紹介したいと思います。
 都心の面積の25%程が道路ですが、そこに真夏の太陽熱が吸収され、さらに放射されることが、ヒートアイランド現象の有力な原因です。そこでこの舗装を水を含むような材料に変えるということが実施されています。
 真夏に普通の舗装であれば60℃くらいまで温度が上がりますが、透水性舗装にして水分が含まれていると、40℃から45℃に下がります。
 しかし、水が含まれていないと効果が薄いので、打ち水ということになります。これは1平方メートル辺り1リットルの水を撒くと2℃は温度が下がるのですが、この夏の各地で行事として行われたように、人手で撒くのも大変です。
 そこで登場したのが、自動水まき道路です。昨年から、国会議事堂の裏側の道路350メートルの区間に試験的に施工されました。付近の地下鉄のトンネルから湧いて来る水を太陽電池と風力発電で得た電力で汲上げ、路面に撒いています。今年も9月22日まで実験をしていますので、通りかかった方は注意してご覧頂くといいと思います。

 道路だけではなく、コンクリートで出来た建物の屋上や壁面も太陽熱を蓄えて放射するというので、ここを改良しようという努力も始まっています。
 屋上緑化は東京都が条例で一定規模以上の建物では義務付けていますが、最近は壁面緑化が新たに登場してきました。
 表面がツタで覆われた旧い建物がありますが、測定してみると最大で10℃ほど表面の温度が低いそうです。しかし、ツタが建物を覆うのには時間がかかるので、あらかじめ植物を植えたパネルを用意しておき、それを建物の外壁に貼付けるという工法も開発が進んでいます。
 また、屋根に熱を反射する塗料を塗って、建物が熱を吸収しないようにする方法もあります。実験によると、普通の塗料を塗った屋根と熱を反射する特殊な塗料を塗った屋根では、表面温度に20℃ほど差があり、室内の温度も2℃から3℃低くなるという結果になっています。
 東京都では「クールルーフ推進事業」として、条件を満たした塗料を塗る場合には補助金を出しています。
 打ち水と同様に建物の壁面に水を流すという方法も検討されています。光触媒という特赦な素材を表面に塗った材料に水を流すと、表面全体に薄く水が展開します。
 それによって表面温度が7℃下がり、室内の温度が2℃下がったという実験もあります。

 これまでご紹介したものは要素技術ですが、ヒートアイランドが発生するのは都市計画全体の問題という側面もあります。例えば、都心部の緑地面積が少ない、汐留の開発のように高層ビルが林立して風の道を塞いでしまう、大手町や新宿のようにオフィス機能が集中して熱の発生が集中するなどの問題です。
 そこで東京都はヒートアイランド対策推進エリアを、都心地区。品川駅周辺地区、新宿地区、大崎目黒地区に設定し、今日ご紹介したような技術を総合的に適用して解決していこうという政策も始めています。
 しかし、この問題は小さな努力の積み重ねでしか解決できないものなので、一人一人が関心を持って努力する必要があると思います。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.