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論文

 自動車を運転しながらお聞きいただいている方も多いかと思いますが、交通事故には注意しながら運転していただきたいと思います。
 昨年の交通事故の統計によると、原因の75%が安全運転義務を怠ったためです。
 その中では安全を十分に確認しなかったことが最大の原因ですが、それに次いで、脇見運転、漫然運転などが大きな原因になっています。その漫然運転のなかでも多いのが居眠り運転です。
 最近では睡眠時無呼吸症候群(SAS)のため居眠り運転になってしまう事例も増えて社会問題になっています。
 居眠り運転によって事故が起きれば大変ですが、そうではなくても居眠りは社会に損失をもたらすということを計算した結果が話題になっています。

 日本大学医学部の内山教授が、ある大阪の企業の社員約3000人に質問をし、その結果をまとめたものです。それによると、37%の人が夜間に十分な睡眠が取れないと訴えており、その人たちは毎月5回は勤務中に眠気をもよおすと答えています。
 これは睡眠が十分に取れているという人の2・7回の倍近い数字です。さらに仕事の効率は4割低下すると答えていますし、遅刻や欠勤も多いという結果も出ています。
 この結果を日本全体に拡大し、眠気による損失を計算すると年間3兆4700億円になるという訳です。これは日本のGDPの0・7%に相当しますから無視できない金額です。
 アメリカでも同様の推計があり、これは約10兆円でGDPの0・8%ですから、どこも同様の問題を抱えていることになります。

 このような知らない間に社会の巨大な損失になっている例はいくつもあります。
 日本の道路で発生している渋滞が延時間でどれくらいになるかを、平成15年に警察庁が発表していますが、38億時間だそうです。
 これに平均の時間当たりの労働賃金3150円を掛算すると、結果は12兆円になります。渋滞さえなければ、さらに12兆円分の仕事ができたというわけです。これはGDPの2・3%にもなりますから、最早無視できない数字ですし、一人あたりでも年間30時間、渋滞に巻き込まれており、9万円の損失になります。
 また、渋滞のなかで無駄に消費しているガソリンを計算すれば、数字はさらに数千億円は増えることになります。
 そこでITS、とりわけ道路の混雑状況をリアルタイムで知らせてくれるVICSを導入すると効果があるといわれ、30%の自動車がVICSを装備すれば、渋滞は6%減るという計算がされています。金額に換算すれば7200億円の効果になります。

 タバコの社会的損失も相当な金額になり、タバコが原因で死ぬ人世界では年間400万人、日本では10万人と推定され、日本について計算すると、そのための医療費増分が3兆2000億円、死亡のためにGDPが減少する分が2兆円、タバコが原因の火事で消防活動にかかる費用や吸い殻を清掃する費用が2000億円など、合計で5兆6000億円の損失になっています。
 そうすると、愛煙家からは税金を納めているから十分だろうという反論がありますが、これは1兆9000億円ですし、タバコ産業の雇用や経済波及効果などを計算しても9000億円、合計で2兆8000億円ですから、やはり損失の方が大きいということになります。

 別の例では自殺の影響です。世界の自殺率を調べてみると、上位は旧ソビエト連邦のリトアニア、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンなどが上位で、日本は10番目で世界でも自殺の多い国です。
 日本の数字を見ると、90年代は2万2000人から2万3000人でしたが、98年に3万人を突破し、以後、3万人前後で推移しています。
 自殺された方は思いあまってということなので、これについて経済損失を計算するのは不謹慎かも知れませんが、もし、これらの方々が元気で働かれたらという仮定で計算すると、2万人台であった95年から97年は平均すると1兆8000億円程度だったのですが、3万人台になった98年以後は年平均2兆5500億円になります。

 今日、ご紹介しただけでも合計すると24兆円でGDPの4・7%にもなります。それ以外にもエイズなど性病の蔓延による損失や、食べ過ぎのための肥満による損失など、社会には見えない様々な損失が隠されています。これらを無くして行くだけでも経済は発展できるのです。





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