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論文

 今週の火曜日五月二日は八十八夜でした。
 日本には、ほぼ半月毎に季節を表現する二十四節気という日があります。立春、春分、夏至、冬至、大寒など、現在でも普通に使われているもの以外に、清明、穀雨(こくう)、白露、霜降(そうこう)、小雪(しょうせつ)など、農業が社会の中心で無くなったために、あまり使われなくなったものもありますが、これが季節の変わり目を示す日です。
 それ以外に、さらに細かく季節の変化を示す雑節という日が九つあります。節分、彼岸、入梅、土用、二百十日などが代表ですが、その一つが八十八夜というわけです。
 ご存知のように立春から数えて八十八日目にあたる日ですが、農業では大事な節目になる日で、苗代の籾蒔きなどをする目安になっていました。
 しかし、何と言っても、この日は「夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る」でお馴染みの文部省唱歌「茶摘」で「摘めよ、摘め摘め、摘まねばならぬ、摘まにゃ日本の茶にならぬ」と歌われるように、茶摘みの季節です。
 そこで今日は「お茶」についてのうんちくといきたいと思います。

 最初に何故この時期に茶摘みをするかということです。
 お茶はツバキ目ツバキ科ツバキ属の常緑樹の新芽を材料にしますが、それには、カフェイン、タンニン、アミノ酸、全窒素などが成長とともに増えていきます。そこで育ちすぎると葉が硬くなるとともに、それらの成分が急激に減ってしまうので、いつ摘むかという時期が大切というわけですが、その目安が八十八夜というわけです。
 現在、茶摘みは多い場合、年4回ほど行われます。場所によって時期が違いますが、静岡では最初が4月中旬から5月上旬、二番茶が6月上旬から中旬、三番茶が7月下旬から8月上旬、秋冬番茶といわれる四番茶が9月下旬から10月上旬です。

 静岡の名前が出ましたので、日本のお茶はどこで作られているかを調べてみますと、やはり一位は静岡で日本全体の45%、二位が鹿児島で23%、三位が伊勢茶といわれる三重県が8%、以下、宮崎、京都、奈良、福岡と続きます。
 それでは世界ではどうかということですが、かつてはインドが首位だったのですが、2004年に中国が逆転して世界の26・1%、インドが25・8%、以下、スリランカ、ケニア、インドネシアなどと続き、日本は2・8%で8位です。
 インドやスリランカという名前からも想像できますが、世界の主流は紅茶で、生産量の8割を占めており、日本人が愛好する緑茶は2割程度です。

 お茶というと我々は緑茶と紅茶を思い浮かべますが、世界には、それ以外に青茶、黒茶、黄茶、白茶、また花茶といわれるものもあります。
 お茶の葉には酸化酵素が含まれ、その葉を揉むと細胞が壊れて酸化酵素によって成分が発酵していきます。この程度によって色々な名前がついています。
 酸化発酵をさせないものが「緑茶」ですが、ほんのわずか発酵させたものが「白茶」で、これは産毛に包まれた新芽を太陽に曝したものです。
 次は「黄茶」で、白茶と同じ処理をしてから、もう少し酸化発酵させたものです。さらに発酵を進めると「青茶」になります。これは少し揉んだお茶を球状にして布で包み、しばらく発酵させてから、また乾燥させるという手間をかけたもので、茶葉の色が暗緑色になるのですが、この色を中国では青と表現するので「青茶」と言われます。この代表が「烏龍茶」です。
 完全に発酵させたものが「紅茶」で、美しい紅色になります。
 そして緑茶を麹菌で発酵させたものが「黒茶」で、代表がプーアル茶です。独特のカビの匂いがしますが、食事に合うので飲茶のときに出されます。このお茶は年代物のほうが珍重されます。

 しかし、日本でお茶と言えば、何と言っても「玉露」です。玉露は茶摘みの20日前くらいから茶畑を日除けで覆う「覆下(おおいした)栽培」という方法で生育した木の新芽を手摘みで集めたものです。日光を遮るためにアミノ酸が豊富になり、渋みが少なく、とろりとした味になります。
 そこで気になるお値段ですが、天明元(1781)年創業の静岡県の老舗竹茗堂に伺ってみたところ、今年はまだ玉露の取引が始まっていませんが、昨年の全国品評会での最高値がキロあたり40万円だったそうです。
 これはご祝儀相場という側面もありますが、玉露は一人分で5グラムほどの葉を使うそうなので、割算をしてみるとお茶一杯が原料代だけで2000円ということになります。
 ちなみに、さらに高値だったのは抹茶の原料にする点茶で、キロあたり68万円で取引されました。これでお手前をしていただくと、原料だけで3500円ということになります。
 しかし、このような値段で買う人は居ないので、竹茗堂の最高級品でも100グラム8000円にしてあるそうですから、たまには一杯400円のお茶でも如何でしょうか。





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