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論文

 一昨年の11月にロシアが批准しましたので、昨年2月16日から京都議定書が効力を発揮することになり、ほぼ1年が経過しました。
 そこで今日は、それによって日本の義務となっている目標を達成するために、どのような努力をしなければならないかを考えてみたいと思います。

 そもそも京都議定書とは何かということですが、これは1997年12月に京都で開催された国連気候変動枠組条約第3回締約国会議という長い名前で、通称はCOP3といわれる国際会議で採択された国際条約です。
 その大きな目的は地球温暖化の原因となっているであろうと推定されている二酸化炭素に代表される温室効果ガスの排出を世界各国が協力して減らしていこうということです。
 世界全体の二酸化炭素の排出量の24%を排出して1位のアメリカと、13%を排出して2位の中国、4%を排出している5位のインドが対象外となっている不十分な内容ですが、日本は批准してしまいましたので、減らさざるを得ません。
 その日本に課せられている約束は、2008年から2012年までの期間に、1990年を基準にして二酸化炭素などの排出を6%減らすということです。
 そこで日本が1990年に排出していた二酸化炭素の量を調べてみると、10億4800万トンでした。そこから6%減らすということですから、6300万トンを減らして9億8500万トンにしなければならないということです。
 それでは現在、どこまで減っているかというと、2004年で11億8200万トンになっていますから、逆に増えてしまっているのです。
 したがって現状から目標値に到達するためには17%近く減らさなければいけないという大変な状況です。
 どのくらい大変かというと、体重80キログラクの人が5キログラムの減量をして75キログラムにする予定だったのが、気を許している間に90キログラムになってしまったので、これから15キログラムも減らさなければいけないということになっているというわけです。しかも、その80キログラムというのは、それ以前から相当に努力して減らした数字ですから、余計に大変なのです。

 それぞれの国が100万ドルの生産をするために、どれだけの二酸化炭素を排出しているかという数字を2002年について調べてみると、ロシアは7677トン、中国は3078トン、アメリカは539トンですが、日本は304トンで、ロシアの25分の1、中国の10分の1、アメリカの2分の1弱でしかありません。これは世界で7番目の好成績です。
 すでに大幅に減量してしまっていたのですが、国際条約に基づく約束ですから、実施しないと2013年以後に罰則が科せられますので必死の努力をしなければいけません。

 そこで、どのような分野で増えているのかを調べてみると、オフィスなど業務部門といわれる分野から排出される二酸化炭素が14年間で35%も増え、家庭からの排出が30%、交通手段からの排出が21%ということですから、ここが努力をする必要があります。

 すでに色々な努力がなされており、例えば交通手段では燃費のいいハイブリッドカーが開発されていたり、家庭電化製品でも10年前に比べて5分の1近い電力消費の電気冷蔵庫が開発されていたりしますので、それらを使うことも重要ですが、今日は情報通信技術が効果があるという話しを紹介させていただこうと思います。
 例えば、ITSによって渋滞に巻き込まれないで空いている道路を走ったり、駐車場案内システムによってウロウロしないで駐車場に向かうことができたりすると、2010年までに0・1%の二酸化炭素の削減が可能と推計されています。
 また、最近は総務省でも実験的に採用していますが、毎日、役所に通勤しないで自宅でコンピュータとインターネットを使って仕事をするという在宅勤務が増加すると0・3%の削減、本を買うときに書店まで出かけないでインターネットで購入するようにすると、0・6%の削減が可能です。

 ずいぶん細々とした節約のようですが馬鹿にしたものではなく、そのような細々とした節約を合計すると、3・6%の削減になるのです。
 これは京都議定書の約束の6割になりますし、現在の目標の17%に対しても20%以上の削減ですから、相当の効果です。
 重要なことは、これらは苦労しなくてもできる削減だということです。自動車をスイスイ走らせて削減、満員電車に乗らなくて削減、わざわざ書店まで行かなくて削減というように、楽をして削減できるということです。
 ITというのは便利さだけではなく、環境問題にも貢献する技術だということを知っていただければと思います。





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