TOPページへ論文ページへ
論文

 昨年の冒頭は2回に渉って、1年間の話題になるキーワードを予測したのですが、厳正に判断してみると、4勝2敗4引き分けというところだったと思います。特に空振りは、4月から銀行預金のペイオフが解禁になって、色々と問題が発生するかも知れないと予測しましたが、銀行の経営が改善されてしまい、何の問題も起きませんでした。
 もう一つは、やはり4月に知的財産高等裁判所が創設されて、社会の話題になると予測しましたが、これも一般社会には関心が無く、話題になりませんでした。
 唯一の金星は、日本の人口減少が年内に始まるという予測で、これは年末にその通りになりました。

 どうも一年後に結果が分かる予測は不利なので、今年は10年後の日本はどうなっているかという予測をご紹介したいと思います。これは都合のいいことに、昨年末に「10年後の日本」という題名の本が文春新書として出版され、47の項目について2015年の状態を予測していますし、国立国会図書館調査・立法考査局が同じ題名の報告書を発表して、30の項目について予測していますので、それを参考にすれば、責任逃れにもなるというわけです。

 第一は、もっとも確実な予測で人口です。10年後の2015年には人口が140万人は減っているということです。140万人は現在の人口の1%強で、たいしたことはないと思われるかも知れませんが、岩手県や愛媛県の人口に匹敵すると考えると結構な人数です。しかもこの数字は控えめで、400万人以上減るという予測も別にあります。
 日本には約4万7800の集落がありますが、過去40年間で1700ほどが消滅し、今後さらに2200ほど消滅すると予測されていますから、まさに地域の崩壊が始まるということです。
 そのため東北地方では郊外の孤立した住宅から中心部の公営住宅へ移転してもらう政策が進んでいますし、国も5階建ての住宅の上2階分を壊して3階建てにする方法も検討し始めているのです。

 そうなれば、人口が増えるという前提で組み立てられた社会制度は破綻し、第二の確実な予測は社会基盤の整備の目標が変更せざるをえなくなるということです。
 例えば、高速道路は今後も建設が予定されていますが、その根拠は2030年まで需要が増加し続けるという予測があるからです。
 しかし、地方の人口が減って行けば、そのような需要は発生しないという意見もあります。空港もダムも需要予測のときに人口の大幅な減少を前提としていないため、あちこちで破綻しています。
 もうひとつ考えなければいけないことは、建設すればそれに比例して維持補修の費用も増大するということです。
 実際、2000年には建設費用の30%が維持補修費用、2010年には42%、2020年には50%以上と予測されています。

 さらに重大な第三の予測は年金制度が崩壊するということです。財務省の報告書では団塊世代への退職金と企業年金が株主資本を超える企業が東証一部上場企業の1割、50%以上になる企業が2割と予測されており、一流企業の3割が経営危機になりかねないとされています。
 企業の破綻も問題ですが、さらに深刻な問題は国家の財政の破綻が回避できるかどうかで、これが第四の予測になります。すでに国と地方自治体の長期債務残高は1000兆円に近付いていますが、これがどうなるかです。
 この問題を解決する第一歩はプライマリーバランスを黒字にする、すなわち、国債費を除いた歳出額を税収など公債発行以外の収入で賄えるということですが、国立国会書館の予測では2012年度に達成ということになっています。
 これは昨年の衆議院選挙の自由民主党のマニフェストで2010年代初頭に黒字にすると宣言していますから、それに合わせただけで、あまり現実味はないと思います。
 しかし、仮にプライマリーバランスが黒字になるといっても、これは安心できるとではなく、家計に例えれば、とにかく借金とその利息の支払いは忘れて、今年の必要な支出は今年の収入で賄うというだけのことですから、1000兆円の長期債務は減らないどころか、金利だけは毎年増えていくということです。

 それはともかく、プライマリーバランスを黒字にするためには歳出削減も必要ですが、ともかく増税ということになります。
 簡単な増税の対象は消費税ですから、第五の予測は10年後に消費税がどれだけになっているかです。平成17年度のプライマリーバランスは約16兆円で、一方、消費税を1%上げると2兆5000億円の増収になります。そうすると16兆円を稼ぐためには6.4%上げて、11.4%の消費税率にすればいいということになります。
 これは北欧諸国の25%やヨーロッパ諸国の16%から20%と比べれば、高いわけではないので、10年後は15%程度にはなっていると思います。
 新年早々、暗い話しばかりでしたが、来週は明るい2015年の話しをさせていただきます。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.