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論文

 今週はリスナーの皆様からいただいた質問に御答えしながら、今年、環境問題や科学技術の分野で話題になったことをご紹介していきたいと思います。
 環境の分野での今年の話題は何と言っても京都議定書が発効したことです。これはすでに1997年12月に京都で開かれた「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」で採択された京都議定書が、アメリカが離脱したために発効できなかったのですが、昨年の11月にロシアが批准したために、発効の条件が整い、今年の2月に発効したということです。
 その結果、日本にとってはどのようなことが起こるかというと、2008年から2012年までの期間に、二酸化炭素の排出量を1990年の状態から6%減らすということが要求されることになります。
 この京都議定書に関係して「地球温暖化現象は炭酸ガスの排出に起因するところが大きいとされていますが、そのメカニズムを教えてください」というご質問があります。
 そのメカニズムは温室効果といわれます。ガラス張りの温室は中で暖房をしているわけではありませんが、太陽光線が降り注ぐと室内が暖かくなります。これは太陽光線が直接空気を暖めているのではなく、地面を暖めるのですが、その暖められた地面は赤外線を放射します。この赤外線が温室の外に出て行ってしまえば室内は暖まりませんが、ガラスで反射されて室内の空気を暖めるため、次第に暖かくなるというわけです。
 地球の場合、大気中にある二酸化炭素がガラス板の役割をして、地面から放射される赤外線を吸収するので、その量が増えてくると大気の温度が上がるという仕組です。ちなみに過去100年で大気の温度は1℃くらい上がったのですが、今後100年では最悪5・8℃上がると予測されています。

 その炭酸ガスが増える原因は石油や石炭を燃やすことです。石油や石炭や天然ガスは化石燃料といわれ、それを燃やすと大量の二酸化炭素が排出されます。それに関連して「子供のころから石油はあと30年で枯渇すると言われてきましたが、いまだに枯渇したとは聞きません。結局、石油はいつまでもつのでしょうか?」という質問をいただいています。
 石油が30年とか40年で枯渇するという数字の意味からご説明したいと思います。地球に石油がどれだけあるかを人間が探して確認できた量を「確認埋蔵量」といいます。それを現在、1年間に採掘している量で割算した数字を採掘可能な年数という意味で「可採年数」といいます。これが後30年とか40年という数字です。
 そうすると、新しく石油の埋蔵が発見されれば年数は増えますし、採掘する量が増えれば年数は短くなります。そこで両方の数字を調べてみると、1990年頃までは確認埋蔵量は順調に増えてきましたが、90年以後は横ばいで増えていません。
 その一方、石油の採掘は着実に増えています。そして、中国などの自動車利用が増大するために、アジアでのエネルギー消費は今後15年で2倍近く増えると予測されていますから、確実に可採年数は減って行くと思われます。

 最近、国民が一喜一憂したのが、日本の打ち上げた探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」に着陸したかどうかということでした。現在のところ、着陸はしたが、岩石を採掘するための弾丸を発射したかどうか不明であり、地球へ戻る軌道には乗ったが、姿勢制御装置が故障して無事戻ってくるかは不明という状態になっています。
 これについても「今回に限らず日本の宇宙開発のトラブルはよく聞きます。最近では中国が有人ロケットを打ち上げて無事帰還させるなど、日本を追い抜いたのではないかと感じがします。日本の技術水準は高いのか低いのかどうでしょうか?」というご質問が来ています。
 今回の「ハヤブサ」の飛行がどの程度の困難なものかを考えてみたいと思います。
 「いとかわ」は540m×270m×210mのジャガイモのような形をした岩石の塊ですが、「ハヤブサ」は2年4ヶ月をかけて20億キロメートルを飛行し、到達したのですが、これは日本の裏側にあるサンパウロを飛んでいる5mmほどの蚊を東京から狙って撃ち落とす程だということです。
 アメリカは今年の7月にディープインパクト計画でテンペル彗星にインパクターと言われる装置を衝突させていますが、「ハヤブサ」のように着陸させて物質を持ち帰る実験は世界で最初です。そういう意味では日本の技術が遅れているというわけではないと思います。
 有人ロケットについては、アメリカ、ロシア、中国が成功させていますが、日本は現在のところ、方針として有人ロケットを打ち上げないと決めていますし、成功させている三か国は軍事技術の一部として膨大な予算を使って開発していますので、比較は難しいのですが、結果だけからすれば遅れているということになると思います。しかし、限られた予算で何を目指すかを検討すべきだと思います。





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