TOPページへ論文ページへ
論文

 今日は環境問題を考えるうえで参考になる話題をご紹介したいと思います。
 最初は「2トンの結婚指輪」という話です。結婚されたときに金の結婚指輪を交換される方々が多いと思いますが、この重さは2トン以上もあるのです。
 金を作るためには、大量の金鉱を掘り、それを粉砕し、水を流して選別するなど大量の物質を動かします。大体、金1グラムについて350キログラムの物質を動かしているのです。そこで5グラムから6グラムの金の指輪の材料のためには、約2トンの物質が処理されて誕生したというわけです。プラチナもほぼ同じです。

 ダイヤモンドはさらに大変で「10トンの指輪」になります。1カラットのダイヤモンドというと相当なものですが、これは0・2グラムです。1グラムのダイヤモンドを掘り出すためには平均して53トンの岩を掘り出しますので、1カラットのダイヤモンドのためには10トン以上の物質が動かされているのです。

 このように私達が日常使っている材料は、その背後に大量の物質を背負っているという意味で「エコロジカル・リュックサック」と言います。
 様々な工業製品を生産する場合、使用する材料を減らして軽くする努力をしますが、それは結果として大変な節約になります。例えば、あるメーカーが大型テレビジョンを従来製品より11・5キログラム軽くしましたが、それは背後に背負っている「エコロジカル・リュックサック」を380トンも軽くしたことになります。
 目先の製品の背後にある隠れた資源やエネルギーを知って、節約することが重要だというわけです。

 ちなみに結婚7周年を銅婚式、25周年を銀婚式、50周年を金婚式、60周年をダイヤモンド婚式といいますが、銅は1グラムにつき0・4キログラムのリュックが必要で、銀は7・5キログラム、金は350キログラム、ダイヤモンドは5万3000キログラムですから、人間もモノの価値をよく知っていると思います。

 第二は日本人の生活には地球が2・5個必要という話です。私達の食べる食料を育てるためには田畑が必要です。また排出した炭酸ガスを酸素と水に戻すためには森林が必要です。当然、住宅などの建物を建設するための土地も必要です。
 このように一人の人間が生活するために必要な土地の面積の合計を「エコロジカル・フットプリント」といいます。つまり人間が自然環境の中に残す足跡というわけです。

 そこで地球全体で利用可能な土地の面積を地球全体の人口で割算してみると、一人あたり1・9ヘクタールの土地があることになります。ところが現在の日本人は4・8へクタールを使っていますから、不足する分は他国の領土を利用していることになります。
 例えば、日本の食料自給率は40%で、海外から60%を輸入しています。日本国内にある農地面積は470万ヘクタールほどですが、日本に輸出する食料を生産している海外の農地面積は1200万ヘクタール以上あります。
 そこでもし、世界中の人々が日本人と同じ程度の生活をしたら、どのくらいの面積が必要かを計算してみると、実は地球2・5個分の土地が必要ということになるのです。

 アメリカがもっとも資源やエネルギーを使用する生活をしており、一人あたり9・7ヘクタールの土地を利用していますが、もし世界中の人間がアメリカ人並みの生活をするようになると、地球は5・6個も必要ということになります。
 如何に先進諸国の現在の生活が異常な状態であるかが分かると思います。このようなことも頭において私達は生活する必要があります。

 もうひとつ「フード・マイレージ」という概念を紹介したいと思います。先程紹介したように、日本は食料の60%を海外から輸入していますが、当然、それらは長距離を輸送されてきます。そこで1トンの食べ物を1キロメートル輸送して消費地に運んで来たことを1フードマイルと呼びます。
 この単位で日本の食料事情を測定してみると、5800万トンの食料を平均して1万5500キロメートル輸送していますので、フード・マイレージは9000億トンとなり、世界最大です。
 他国では、アメリカが2960億トンキロメートル、イギリスが1880億トンキロメートル、フランスが1040億トンキロメートルです。
 日本人1人についてみると4000トンキロメートルで、一人あたりの食料輸入量が420キログラムなので、割算してみると、1人について食料の年間輸送距離は1万キロメートル弱になります。

 それを解決しようとして登場したのが「地産地消」です。これは自分の生活している土地の周辺の食べ物を食べようという運動ですが、もちろん、新鮮な食べ物を食べられるとか、安全な食べ物を入手できるという利点もありますが、フードマイレージを減らすという効果も重要です。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.