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論文

 今年の1月に発表された「2004年日経優秀製品・サービス賞」のひとつにアップル・コンピュータが発売した「iPODmini」が選ばれて表彰されました。
 その影響で様々な携帯型デジタルオーディオプレーヤーが次々と発売されています。これは小型のハードディスクや半導体メモリーを搭載した手のひらに入るような装置で、その中に音楽情報を記録しておき、歩きながら音楽を聴くことのできるもので、最新の製品では50時間分の音楽を記録させる製品まで登場しています。
 世界全体では2003年に1330万台の生産台数でしたが、昨年は2850万台になり、今年は5300万台になると予測されているほど、爆発的に伸びています。
 電通がインターネット・アンケートで調査して8月10日に発表した「今年上半期の注目商品」でも、ブログや薄型テレビなどと争って6位に挙げられています。

 この状況を一気に加熱させたのが、今月4日にアップル・コンピュータが日本でも開始した「iTunesミュージックストア」です。これはインターネットを経由して自分の「iPOD」に音楽をダウンロードするサービスですが大ブレークしました。
 アメリカでは2003年の4月からサービスを開始し、最初の7日間で100万曲がダウンロードされ、この1年3ヶ月で5億曲以上がダウンロードされたという大成功で、現在、アメリカの音楽配信サービスの8割を独占しているのですが、日本では最初の4日間で100万曲のダウンロードを突破し、アメリカ以上の速度で普及しています。

 このようなサービスは日本でも昨年から10社近くが行っているのですが、最大手のレーベルゲートが提供する「Mora」でさえ、ひと月のダウンロード曲数が45万曲ですから、4日で100万曲というのが如何にすごいかが分かります。
 その秘密はいくつかありますが、まずハードウェア本体が売れていることです。7月時点の日本国内でのシェアはアップルの「iPOD」が35%で1位、ソニーの「ネットワークウォークマン」が20%で2位ですから、圧倒的です。
 第二はダウンロードできる音楽の数の差です。「iTunesミュージックストア」は最初から100万曲を提供していますが、他は「Mora」が20万曲、「エキサイトミュージックストア」が11万曲、「オリコンスタイル」が11万曲、「OCNミュージックストア」が10万曲など大差があります。
 第三は1曲あたりの価格の差で、アメリカでは均一99セントですが、日本ではレコード会社の足並みが揃わず150円から200円ですが、9割は150円に設定されています。国内の既存サービスは150円から360-370円でしたから勝負にならず、一気に値下げ競争になりました。オリコンスタイルは157円から315円であった値段を150円から210円に、東芝EMIも270円の提供価格を150円から200円にと連鎖反応です。
 第四はすべての曲が30秒間は無料で試聴できることです。まさに黒船到来という状況です。

 このように音楽分野では、CDのようなモノからネットワークへという転換が始まり、今年は「音楽配信元年」とも言われていますが、他の分野でもネットワーク配信が動き始めています。
 現在、日本でも電子新聞が増加し、数百に新聞をインターネットで読むことができますが、どちらかと言えばまだまだ紙の新聞が中心です。
 ところが、8月4日に、アメリカの『ニューヨーク・タイムズ』が現在は紙の新聞と電子新聞で別々になっているニュース編集局を2007年に統合すると発表して話題になりました。これまでは紙の新聞に掲載された記事の一部が電子新聞でも読むことが出来るという状態だったのですが、次第に電子新聞の内容を充実し、有料の方向に進めるという構想のようです。
 これまで新聞社は電子新聞を有料にするかどうか検討してきましたが、ニューヨーク・タイムズの影響で一気に電子新聞主体に動く可能性もあります。

 書籍の世界でも異変が始まっています。世界最大の書籍のインターネット販売の会社「アマゾン」は2001年10月10日から「ルック・インサイド・ザ・ブック」というサービスを開始しました。これは当面2万5000冊の本について、それまでの表紙だけではなく、目次や著者紹介、本文の一部など約30ページも見ることができるようにしたのですが、2003年10月23日からは12万冊の書籍の3300万ページを無料で見ることの出来る「サーチ・インサイド・ザ・ブック」というサービスを開始しました。これは一言で言えば、リアル書店ではできたがサイバー書店ではできなかった立ち読み機能をネット社会に持ち込んだものです。
 日本でも7月18日にアマゾン・ジャパンが今年中には始めると発表しています。あらゆる分野でリアルワールドとサイバーワールドの戦争が始まっているということです。





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