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論文

 先週末3日間、三陸海岸でシーカヤックをしてきました。三陸は東北地方の太平洋に面した地域で、南から陸前、陸中、陸奥という3つの地域の名前から名付けられた一帯です。
 日本最大のリアス式海岸として有名で、青森県の南部から宮城県の北部までの200キロメートルの区間に断崖絶壁が続いているという場所です。
 8年程前に初めて三陸海岸をカヤックで通過して、知床半島と並ぶ絶景だと感動しました。とりわけ太平洋から押し寄せる大きなうねりが岩に当たって砕ける様子は東山魁夷さんの日本画のような景色で、雄大という言葉そのものでした。
 このような素晴らしい自然があるということを多くの人に知ってもらいたいと考えていたのですが、何しろ外海なので波が荒く、今回も3-4メートルの波を突破していかなくてはならず、ある程度のカヤックの経験がないと危険で、だれもが楽しむというわけにはいきません。

 そこで3年前に、岩手県の増田知事と相談して「海旅・三陸」というプロジェクトを立ち上げました。これはサポート体制を万全にして、素人でも安全にカヤックで三陸海岸の海を楽しむと同時に、地域の伝統文化なども理解できるようにしようというものです。
 昨年、実験的に1日だけ実行したのですが、快晴無風という天候に恵まれて、初心者でも岩と岩の間をくぐり抜けたりでき、大成功でした。
 そこで、ついに今年、第1回目を開催したということです。もちろん200キロメートルの海岸全部を漕破しようとすると、1週間以上かかりますから、三陸海岸の名所とでもいうべき、北山崎、浄土が浜、碁石海岸を3日間で体験できるという企画でした。
 初回にもかかわらず、日本全国8時のファンという何人かの方々も含め、延べ100人以上の方に参加いただき、何人かは荒波で転覆ということもありましたが、漁船やヨットが5-6隻という万全の救助体制で楽しく体験していただきました。

 海のカヤックが素晴らしいといっても、これには興味のない方もおられると思いますので、今日は三陸海岸ならではの海の幸をご紹介したいと思います。
 第一は「ホヤ」です。これは紀伊半島より北側の海岸であれば獲れる海産物ですが、三陸海岸が最大の産地です。体長15センチメートル、直径10センチメートルほどの卵形をした原索動物で、岩などに付着して、海中のプランクトンを食べて成長します。外側は朱色をしたイボイボのある硬い外皮に覆われているので、「海のパイナップル」ともいわれますが、内側に黄色い肉質の袋があり、ここを食べます。
 食べ方は、酢の物にしたり、煮物にしたりしますが、最近では薫製も販売しています。僕が食べたなかで一番美味しいと思ったのは、皮のついたまま炭火で焼いたものです。最近は養殖物が多いのですが、天然物は格別の味です水揚げして数時間すると、オクタールとかシンチアノールという成分が生成され、独特の臭いがするので、敬遠する人も多いのですが、臭いの強いチーズのように病み付きになる味です。

 第二は「マンボウ」です。この魚は世界の温帯から熱帯の海に生育していますが、大きい物では全長4メートルにもなって、海の表層をゆっくりと泳ぎ、身体を横にして浮かんでいることもあります。
 これは特別にマンボウ漁があるわけではなく、定置網に入ったり、通りかかった漁船が獲る程度で、あまり市場には出て来ない魚です。淡白な味の白身の肉を酢みそで食べるのが一般的です。

 最後は「マツカワ」です。これはカレイの一種で、体長80センチメートルにもなる魚で、体の表面が松の樹皮のようにザラザラしているために「松皮」といわれるようです。肉がコリコリして大変に美味しいのですが、乱獲で減ってしまい、10年程前には三陸地方では1年に数匹の水揚げがある程度になり、漁師さんが食べてしまうので、一般の人たちの口に入ることはないという「幻の魚」でした。
 ところが岩手県が県を代表する魚にしようと、岩手県水産技術センターで養殖の研究を始め、釜石で養殖されるようになりました。現在では不振の製鉄業に代わり、釜石を代表する産業になりつつあります。
 釜石ではもうひとつ養殖に成功している魚が有ります。チョウザメです。チョウザメはワシントン条約で輸入禁止に成りましたので、養殖の成功は素晴らしいことですが、今回は残念ながらキャビアにはお目にかかれませんでした。
 岩手県は宮城県と並ぶ漁業王国ですから、これ以外にもウニ、ホタテ、サケ、マグロ、サンマなど海の幸が揃っていますので、来年の「海旅・三陸」にはぜひお出でいただければと思います。





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