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論文

 今日はテレビ番組の撮影でドイツのフライブルクという都市に来ています。
 ここはドイツの国土全体の南西の角で、西側がフランス、南側がスイスという場所です。有名なシュバルツ・バルト、黒い森といわれる森林地帯で人口20万人の都市の周辺は深い森に囲まれており、「森とゴシックとワインの都市」ともいわれています。
 古い歴史のある都市で、ゴシックといわれる根拠となっているミュンスター大聖堂は1200年から建設が始まり、1513年に完成した建物ですし、フライブルク大学は500年以上の歴史があります。

 しかし、今回フライブルクに来ているのは、この都市が「環境首都」といわれているからです。
 1993年にドイツ環境自然保護協会が選定し、その影響もあって、ここには「太陽物理学研究所」「ソーラーエネルギーシステム研究所」「国際太陽エネルギー協会」など、多数の環境問題に関係する研究所や団体が集まっています。

 フライブルクが環境に目覚めたのは、10キロメートルほど西側にライン川が流れているのですが、1970年代に、そこに原子力発電所を建設する計画が発表され、住民が反対運動を展開したことです。そしてチェルノブイリ原子力発電所の事故が発生した1986年に原子力発電所建設を中止になりました。
 そこでただ反対するだけではなく、エネルギーを節約したり、環境への負荷を減らす活動を次々と行ってきました。
 すでに1960年代の終わり頃から、公共交通を利用するような政策を作り、自転車専用道路を作ったり、都心への自動車の乗り入れ規制をしたり、住宅地では自動車は時速30キロメートル以下に制限したりというような政策を実行してきたのです。
 とりわけ有名なのが1984年から始まった「レギオカルテ」といわれる交通切符です。これを6000円くらいで購入すると、フライブルクのあるドイツだけではなく、隣接するフランスとスイスの3カ国の地域の公共交通手段が乗り放題になる制度です。
 約2600キロメートルの路線が自由に利用でき、しかもレギオカルテは他人に貸すこともできるので、大変に得な仕組になっています。
 またパークアンドライドと言って、例えば中央駅の付近に自動車を停めて、市内は路面電車やバスで移動することも推進されています。都心に乗り入れは可能ですが、駐車場の料金が非常に高いので、パークアンドライドを利用する方がはるかに得になる仕組です。

 細かい工夫も色々とあり、そもそも日本のように自動販売機がどこにでもあるという社会ではないのですが、たまにある自動販売機も紙コップが自動で出てくる訳ではなく、マイコップを持って行かないと利用できない機械になっています。
 家庭には蛍光灯式の電球が市役所から一個だけ配られていますが、それを購入して使うとか、ゴミの分別回収も当然おこなわれています。
 エネルギーを創り出す方法も独自の工夫がなされ、ブンデスリーグに参加しているサッカーチームの競技場がありますが、その屋根の大半が太陽電池になっており、しかも市民が株券のように購入して、発電した電気を売却した利益で配当が貰えることにもなっています。
 ゴミはリサイクル可能なものはすべてリサイクルに回し、それ以外は燃やすのではなくて、郊外に埋め立て、それによって発生するメタンガスをパイプで発電所に送り、電気と熱を作っています。

 さらにユニークなことは、太陽電池は雨や曇りのときには十分な発電が出来ませんが、そのときには工場の仕事の内容を変更して、電気をあまり使わない作業をするという会社さえあります。晴耕雨読ではありませんが、天候に合わせて仕事をしているのです。
 とりわけ重要なことは、学校での環境教育が徹底していることで、例えば、生徒がノートブックを買うときには「再生紙のノートブック」を買うようにと指示され、教科書は無償貸与であるが、使った後は次の下の学年の生徒に回され、ボロボロになるまで何度も使われています。そうなると生徒もカバーをして丁寧に使用するということにもなります。

 百貨店の過剰包装や、スーパーマーケットでビニール袋を無料でくれる仕組や、至る所に自動販売機があり無駄に電力を使っている日本の実情と比べると、別世界のようで、改めて日本の環境意識が遅れているかを実感します。
 フライブルクでは自転車で通勤することがスマートで、大型自動車などで移動すると軽蔑さえされているようで、色々な意味で参考にする必要があると思いました。





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