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論文

 6月になりましたが、今月20日から北海道がサマータイムの実験を始める予定なので、今日はサマータイムの損と得について、考えてみたいと思います。
 サマータイムというのはご存知のように、夏になったら日の出が早くなるので、時間を1時間とか2時間早めて仕事をし、明るい時間を有効に利用しようという制度です。
 実際、札幌では夏至のときには日の出の時刻が3時55分ですから、9時に仕事を始めると、5時間も明るい時間を損してしまうというわけです。
 英語でサマータイムのことを「デイライト・セービング・タイム」すなわち、日光を有効に使う時間制度というのは、そういう意味です。
 北海道では、昨年は7月の1ヶ月を実験し、今年は6月20日から7月31日までの40日間の実験をしますが、これは普通のサマータイムのように時計を1時間進めるのではなく、時計はそのままで、文化施設や飲食店などの営業時間を全体に1時間早め、会社の就業時間も同様に早めるものです。役所や企業や学校などが自由に参加する方式で、昨年は220の団体が参加しましたが、今年は500くらいの参加を期待しているようです。

 サマータイムを熱心に推進している札幌商工会議所は6つの効果を期待しています。
 第一は経済波及効果で、2時間早めの朝7時から仕事をはじめて午後3時に終わると、余暇時間が増えるので個人消費が増えると考え、1165億円の経済効果があると試算しています。
 第二は明るいうちに帰宅できるので、防犯効果があり、また明るい時間の交通が増えるので、交通事故が減るという期待もあります。
 第三はエネルギー節約で、北海道民1人あたり830円、全体で20億円程度の節約になるそうです。
 第四が北海道を宣伝する効果、第五が環境問題を意識する効果、そして第六が仕事優先の価値観を変え、少子化対策になるということだそうで、だんだんはっきりしない理由になっています。

 いいことだけのようですが、批判もあります。
 第一は労働強化になるという反対意見があります。仕事の開始は早くなりますが、なかなか明るいうちに帰りづらくて、ついついサービス残業をしてしまうという心配です。実際、日本では1948年から夏時間という名前でサマータイムを実施しましたが、労働強化になるという反対が多く、4年間で廃止になっています。
 第二は人間には体内時計といわれる生理的仕組があり、あるとき突然、習慣を変えると順応するのに時間がかかり、逆に交通事故などを起こしやすいという意見を日本睡眠学会が発表しています。
 第三は日本全国一斉に実施する場合の問題です。確かに夏至のときに札幌では日の出が3時55分ですが、那覇では5時37分と2時間も違うので、北海道では明るくても、沖縄ではそれほど明るくはないというような問題も発生します。
 第四が最大の問題です。現在、2004年に発足した超党派の「サマータイム制度推進議員連盟」が今国会でサマータイムを実現するための法案を成立させようとしています。この法案では、3月の最終日曜日から10月の最終日曜日の7ヶ月間、時計を1時間進めることを平成19年から実施しようとしています。
 問題はそれに合わせて、社会にある膨大な数の時計を毎年2回変更しなければいけないということです。
 例えば、日本には16万台の交通信号がありますが、大半がコンピュータシステムによって時刻に合わせて点滅時間が制御されています。そうすると3月と7月に一斉に変更をしなければいけないのですが、その費用が500億円は必要と見積もられています。
 また、現在、家庭にも職場にも膨大な数の時計があります。掛け時計や目覚まし時計のような時刻を示す時計だけではなく、テレビジョン受像機にも、電気炊飯器にも、コンピュータにも、すべて時計が組み込まれています。そうなると、毎年2回、それらの時間変更をしなければなりません。
 普通の時計ならまだしも、家庭電化製品に組み込まれた時計などはだれでも簡単に変更できないものもあります。

 この時計を変更するための手間をお金に換算すると2000億円にもなるという推計もあります。そうなると経済効果も吹っ飛んでしまいますし、さらに鉄道や飛行機などのスケジュール管理をしているコンピュータの時計の変更は、下手をすると交通事故の原因にもなりかねません。

 私個人の意見は、北海道が実施しようとしているような、時計を変化させないサマータイムならまだしも、時計を1時間ずらすサマータイムは実行しない方が得策だということです。





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