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論文

 大型連休の真っ最中で、多数の方々が休みを楽しんでおられると思います。警察庁の予測によれば、4月29日から5月8日の10日間で昨年より1084万人多い6130万人が行楽地に繰り出し、また海外旅行に出かける人も昨年より7万3000人多い60万2000人で、いずれも史上最高のようです。
 しかし、ほんの数十年前まで、日本人は勤勉な国民で遊ばないと思われていたのですが、一体、日本人の労働と余暇についての価値観は変化したのかどうかについて話をさせていただきたいと思います。

 意外に知られていないことですが、日本は祝日大国だということです。国民の祝日が元旦から始まって12月23日の天皇誕生日まで14日あるのですが、それ以外に国民の休日といわれる制度ができて、15日になったり16日になったりします。
 これは世界でも最大の日数で、イギリスの祝日は8日、アメリカとフランスは9日、ドイツが10日です。
 さらに通称「ハッピーマンデー法」といわれる「改正祝日法」によって、最初は1月15日に決まっていた「成人の日」が1月の第2月曜日に、7月20日であった「海の日」が7月の第3月曜日に、9月15日の「敬老の日」が9月の第3月曜日に、そして10月10日であった体育の日が10月の第2月曜日になり、3連休が確実に年4回確保されるようにもなっています。

 これだけを見ると、日本は休みが多いように思われますが、有給休暇を取る日数が日本は平均9日なのに、ドイツでは31日、フランスでは25日、イギリスでは24日、アメリカでは13日と大差がついています。
 それらを差し引きしてみると、日本では年間の休暇日数が123日で、アメリカの126日には近いものの、ドイツの145日、フランスの138日、イギリスの136日と比べると、まだまだかもしれません。

 そこで実際、年間に何時間働いているのかということを比較してみると、日本が高度経済成功の最中の1960年には2527時間で、ドイツの1896時間とは631時間も差がありました。ちなみにアメリカとは582時間、フランスとは514時間の差でした。
 簡単に631時間といいますが、毎週12時間の差ですから、毎週丸1日余分に働いていたということです。
 しかし、最新の統計のある2002年についてみると、日本の年間労働時間は1954時間まで減って、アメリカの1952時間と並ぶまでになりましたが、ドイツの1525時間やフランスの1539時間と比較すると、まだ400時間以上の差があります。これは1週間あたり8時間程度ですから、やはり毎週1日余分に働いている計算になります。

 ところがここに来て方向転換が始まり出しました。フランスは法定労働時間が1週間に35時間となっていますが、これでは国際競争に勝てないというので、実質39時間にできるようにする法律の改正が、今年の2月に下院を通過しています。

 日本は過去40年程で年間570時間も実労働時間を減らして来たのですが、大丈夫かと心配になります。その心配を裏付ける数字もあります。
 内閣府(旧総理府)が10年ごとに行っている国民の勤労意識についての世論調査があり、人生の生き甲斐が仕事か生活かを調べています。1982年には仕事が28%で生活が14%でしたが、1992年には25%と28%で逆転し、2002年には仕事も40%に増えたのですが、生活重視が59%と大幅に増えています。日本人の主流派は生活、家庭、余暇を満喫する方向に変化してきたのだと思います。
 しかし、これは日本人の本来の性質が回復してきたと考えたほうがいいと思います。
 欧米では労働は神様から与えられた罰だと理解されているために、そこから早く脱却したいという気持があり、労働時間中は熱心に働いて時間を短縮する努力をするのです。
 だから成功した人は早く引退して余暇生活に入るのですが、日本では仕事は天職という考えで、むしろ神様から与えられた機会だと思い、いつまでも引退しないし、のんびりと楽しみながら仕事をする傾向があったのです。江戸時代の職人などの仕事ぶりはその典型です。
 ところが、明治以来、日本にも欧米の労働観が導入されて、効率よく働く勤勉さが評価され、それが行き過ぎて働き過ぎになっていたのですが、やっとその軛から解放されて、生活や余暇中心の価値観に目覚めて来たのではないかと思います。
 休暇中のリゾートで聞かれた方には興醒めの話だったかもしれませんが、労働と余暇の関係が大転換していると思いますので、ぜひ連休明けから新しい気持で働いていただければと期待しています。





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