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論文

 日本の経済がなかなか回復しないようですが、見方を変えれば大変に活躍しているという元気の出る話をさせていただこうと思います。
 最初に、普通に見ると元気がないという実例を紹介したいのですが、1990年に世界の銀行の資産総額を比較してみたら、上位5行は「第一勧銀」「住友」「富士」「三菱」「三和」と日本の銀行が独占し、上位20行のうち半数以上の11行が日本の銀行でした。これは土地の価格が高騰していた影響もありますが、それにしてもすごいことでした。
 ところが2003年にはどのようになったかというと、2位に「みずほ」、4位に「三井住友」、6位に「東京三菱」、14位に「UFJ」と4行に統合されて、かろうじて地位を維持している程度です。
 これは金融だけではなく、製造業も同じです。例えば携帯電話は2000年には松下電器産業が5位に入っていたものの、昨年の結果では、「ノキア」「モトローラ」「サムスン」「シーメンス」「LG」が上位5位で、日本企業は上位から消えてしまいました。
 さらに大きな日本の凋落が見られるのは、半導体の製造です。1986年に日本の半導体生産は世界の45%で、アメリカを抜いて世界一になり、86年には51%と世界の生産の半分以上が日本製でした。
 ところが2004年には、一位が「インテル」、2位が「サムスン」、3位が「テキサス・インスツルメント」などで、やっと6位に「東芝」(4・1%)、8位に「NEC」(3・1%)で、見る影もなくなっています。

 ところが、ノキアの携帯電話の世界シェア31%や、インテルの半導体の世界シェア14%など相手にしないほどの市場を占有している企業が日本には多数あります。
 香川県にある「日プラ(ニップラ)」は知る人ぞ知るという会社です。ここは水族館の水槽の透明なパネルを作っている会社で、沖縄にある「美ら海(チュラウミ)水族館」に体長7メートルにもなるジンベイザメが泳いでいる水槽がありますが、その前面の高さ8メートル、幅22メートルの透明なパネルを作ったことで有名です。
 ガラスでは重すぎて作れないので、何枚かのアクリルの板を貼り合わせて厚さ60センチメートルの板で7500トンの水を支えています。このような技術を持つ会社はほとんどなく、水槽のパネルの世界シェア50%以上です。

 オリンパスというとデジタルカメラを想いだすほどですが、これは世界の13%のシェアで、ソニー(18%)、キャノン(16%)に次いで世界3位です。
 しかし圧倒的に強いのは医療用内視鏡です。ここはすでに1950年に世界で最初の胃カメラを開発していますが、その後も優秀な製品を開発し、世界の80%を独占しています。

 昨年のアテネオリンピックで室伏選手がハンマー投げで優勝しましたが、あのハンマーも日本が大きなシェアを持っています。競技に使われるハンマーは選手個人が用意するのではなく、主催者が用意したもののなかから選手が選ぶ仕組になっています。
 アテネオリンピックでは世界の5社の製品が選ばれましたが、最後の決勝に残った8人の選手が選んだのは、すべて東京の江東区に本社のある「ニシスポーツ」の製品でした。

 日本ならではの製品で圧倒的なシェアを持っている会社も色々とあります。  
 日本の食堂のショウケースに納められている食品の蝋細工があります。最近では東京国際空港で外国の人がお土産に喜んで買って行くようですが、これは大阪に本社のある「いわさき」という会社が世界の60%を占有しています。

 見本だけではなく、実物も人気があるのが「すし」で、アメリカでは健康な食事としてブームになっていますが、その寿司を自動で握る「寿司ロボット」の最王手が東京の練馬にある「鈴茂(スズモ)器工」という会社で、にぎり寿司やおむすびを握るロボットを開発していますが、最速の器械では1時間に3600カン、すなわち毎秒1カンの速度で握っていくので人間以上です。

 これらの会社に共通することは、独自の技術を開発しているということは当然ですが、会社の規模が小さいということだと思います。
 内視鏡を作っているオリンパス・メディカルシステムズは、社員が8000名以上の大会社ですが、日プラは70人強、ニシスポーツは123人、いわさきは500名強、鈴茂器工は240名程度と、すべて中小企業です。
 現在は速度の経済と言われますが、小さいからこそ加速性能がいいのだと思います。
 グローカルという言葉がありますが、小さいからといって地域や国内だけで商売をしているわけではなく、世界を相手に商売をしていることも特徴です。
 日プラは世界最大の水族館として有名なカリフォルニアのモントレイベイ水族館にも納めていますし、鈴茂器工もカリフォルニアにアメリカ法人を設立して輸出をしています。
 「鶏口となるとも牛後となるなかれ」の精神で努力すれば、不況も怖くないと思います。





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