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論文

 先週、仕事の関係で佐渡金山に行ってきましたので、それをご紹介しながら今日は「金」について考えてみたいと思います。
 佐渡ではすでに平安時代から砂金が発見されていたので、金山があることは知られていたのですが、関ヶ原の合戦が終わった翌年の1601年に金鉱が表面に露出している露頭が発見されてゴールドラッシュになりました。
 そのゴールドラッシュの様子をうかがわせる数字がありますが、この金山の発見された佐渡の相川には6万人から7万人の人々が全国から集まり、大規模な遊郭も栄えたと言われています。
 昨年3月1日、佐渡にあった1市、7町、2村が合併して、島全体が佐渡市になっていますが、その人口が7万人弱ですから、いかに佐渡金山が繁栄していたかが分かります。
 佐渡金山の背後に「道遊の割戸(ドウユウノワレト)」といわれる名所があります。麓から見ると、山が頂上から真っ二つに割れているのですが、天変地異のせいではなく、人々が露頭のある頂上からノミとツチだけで鉱脈を掘り進んでいった結果、山が二つに割れたような状態になってしまったという遺跡で、人間の金への執念の象徴だと思いました。
 日本国内では最大の金山だったのですが、採掘技術が進歩していなかったので、最初の30年程で含有率の高い鉱脈は掘られてしまい、生産量は急速に減少していきました。
 明治時代になって近代的な鉱山技術が外国から導入され、採掘機械もアメリカから輸入されて再び生産量が増えますが、ついに388年後の1989年に閉山になりました。
 この期間に産出した「金」は78トン、「銀」は2330トンです。これはどの程度かというと、1999年の世界の金の産出量が2540トン、そのうち最大の南アフリカ共和国が450トン、アメリカが340トンという規模ですから、佐渡金山が400年近くかけて産出してきた量の4倍から5倍の金を1年で生産していることになります。
 ちなみに、現在の日本の金の生産量は年間9・4トンですから、わずかな量です。

 なぜ金が貴重な金属として評価されるかというと、物質としては優れた性質を持っていることが第一です。
 硝酸と塩酸を混合した「王水」という薬品があり、これには浸食されますが、それ以外のどのような物質にも侵されませんし、展性(広く延びる性質)や延性(長く伸びる性質)や導電率(電気を通す性質)はあらゆる物質のなかで一番で、1グラムの金は3000メートルの糸に伸ばすことが可能です。
 しかし、金の価値の根源は地球上に少ししか存在していないことです。
 人類がこれまで掘り出した金は合計して14万2600トン程度ですが、これは水泳競技が開かれる正式の50メートルプールに3杯分というわずかな量です。

 問題は、今後、どの程度の金が産出されるかです。現在、世界で確認されている金の埋蔵量は7万2000トンと推定されていますが、一方、毎年、新たに採掘される金は2500トンですから、割り算すると30年足らずで枯渇することになります。
 そこで大事なことは金のリサイクルです。2000年には世界で3950トンの金が供給されていますが、65%が「新産金」といわれる新たに採掘されたもので、15%に相当する600トンは「回収金」といわれるリサイクルされたものです。
 あと30年程度で金鉱が枯渇するとなれば、リサイクルはますます重要になってきますが、その重要さを面白い数字でご紹介したいと思います。

 金は金鉱石を製錬して抽出するわけですが、1トンの金鉱石を処理して得られる金は3グラムとか5グラムですから、0・0003%から0・0005%です。
 世界最大の金産出国である南アフリカ共和国の金鉱石でも5・2グラムでしかありません。参考のため、現在の日本で最大の金鉱山は鹿児島県にある菱刈鉱山ですが、ここは1トンの鉱石に60グラムの金が含まれており、世界最高の含有率です。

 ところが、さらに含有率の高い鉱石があります。携帯電話です。携帯電話は100グラム程度の重さですが、あの中にある配線基盤などに0・2〜0・3グラムの金が使われており、1トンに換算すると、品位は200グラムから300グラムになります。南アフリカ共和国の金鉱石の40倍から60倍の高品質です。

 「銀」もあと30年程度で枯渇、「銅」もあと50年程度で枯渇と推定されていますから、これからの社会でリサイクルがいかに重要かがお分かりいただけると思います。





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