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論文

 おめでとうございます。今年最初の放送なので、今週と来週の2週で、今年の日本の社会を象徴する10個のキーワードをご紹介して、リスナーの皆様が今年の生活の方針を検討される参考にさせていただければと思います。

 第一は「リサイクル」です。環境問題を解決するための3つの「R」はご存知だと思います。資源の消費を減らす「リデュース」、製品に組み込まれている部品などを何度も使う「リユース」そして、製品を資源に戻して再利用する「リサイクル」です。
 日本は1990年代から、高度循環社会を実現するという目標をかかげ、リサイクルに関連する法律を次々と制定してきました。容器包装リサイクル法(1995)、家庭電化製品リサイクル法(1998)、食品リサイクル法(2000)、建設リサイクル法(2000)と制定され、ついに2002年に大物の自動車リサイクル法が制定され、それが実施されたのが今年の1月1日からです。
 自動車はリサイクルの優等生で、現在でも重量あたりでは80%が回収されているのですが、今回は冷房に使われているフロン、衝突のときに役立つエアバッグ、それから色々な部分に使われているプラスチックやウレタンなどの材料の3種類をリサイクルをすることが、自動車メーカーに義務付けられることになり、10年後の2015年には、リサイクル率を95%まで上げることを目標にしています。
 その費用は自動車を購入する人が負担するのですが、1台につき1万円前後を負担することになります。余分な費用を払うことになりますから、我々もリサイクルに関心を持つことになるし、メーカーもリサイクルのしやすい自動車を設計するようになり、今年は「リサイクル」が関心をもたれるようになると思います。

 第二は「燃料電池」です。すでに工場などの発電装置としては実用になっていますし、2年前に燃料電池を搭載した自動車は発売されていますが、これは1台で1億円以上もし、一般家庭で遣うことのできる商品ではありませんでした。しかし、今年の2月8日から、東京ガスが荏原バラード社と松下電器産業と共同で、家庭で使用できる燃料電池を供給しはじめます。
 都市ガスに含まれている水素をエネルギー源として、空中の酸素と化合させて電気を発生させるので、炭酸ガスを発生させないという利点があり、今後、燃料電池が社会に普及するきっかけになるのではないかと思います。

 第三は「環境税」です。昨年、ロシアが京都議定書を批准しましたので、それから90日後の今年2月16日に発効します。そうすると日本は2008年から2012年の間に1990年の二酸化炭素の発生量に比べて6%減らすことが国際的な義務になります。しかし、景気も回復気味なので、現実には目標達成は大変困難です。
 そこで登場するのが環境税で、石油や石炭などを燃やしたときに出る二酸化炭素の量に応じて税金を徴収するというものです。昨年、政府税制調査会で議論されましたが、産業界から経済競争力を低下させるという反対があり、ガソリン1リットルあたり1・5円程度で削減効果があるかという疑問がだされて見送りになっています。しかし、京都議定書発効で、再び話題になってくると思います。

 ここまでは環境問題に関連するものばかりですが、4月からは別の話題が登場します。 
 第四が4月1日に実施される「ペイオフ全面解禁」です。これまで金融機関に預けていた普通預金は、金融機関が破綻しても預金保険機構によって全額保障されていましたが、4月1日からは1000万円とその利子までしか保証されないことになります。そこで大金を持っている金持ちはいくつかの銀行に分散して預金したり、利子がつかない代わりに全額が保護される決済用預金に振り替えるなどの対策が必要になります。
 そうすると預金者は銀行の経営状況に関心を持って監視するようになると思われますが、これまでのように銀行は安心という神話は崩壊していくことになります。

 もう一つ4月1日から実施される新しい制度があります。これからの情報社会で、もっとも重要な権利は知的財産権(IPR)といわれていますが、それに関係する裁判を一手に引き受ける「知的高等裁判所」が登場するのです。特許の裁判でも分かりますが、このような技術に関係する裁判は時間がかかり大変でした。そこで、このような分野を専門にする裁判官を揃え、迅速に決着がつくようにしようという制度です。
 アメリカではすでに1992年に連邦巡回区控訴裁判所という名前の知的財産専門の裁判所が実現しており、日本は23年も遅れて作るということになりますが、これによって情報が社会の重要な権利になるという、本格的情報社会が始まると思います。





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