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論文

 10月5日から9日まで千葉県の幕張メッセで「CEATEC(シーテック)JAPAN 2004」という展示会が開かれました。これは情報通信やデジタル機器についての日本で最大の展示会です。
 「デジタルが広げるユビキタス社会」というテーマで色々な展示があったのですが、もっとも関心を呼んだのが次世代DVDでした。そこで今日は、この次世代DVDについてご紹介したいと思います。

 動く映像を記録する最初の手段は映画ですが、テレビジョンという電気信号で動画を放送する技術が登場してビデオテープレコーダーが発明されました。これは磁気テープに動画を記録する技術で1970年代から一般に売り出されるようになりました。
 次にレーザーディスク(LD)という直径30cmのプラスチックの円盤に記録する手段が登場しましたが、これは残念ながらビデオテープレコーダーに取って代わるほどの勢力にはなりませんでした。
 ところが、1990年代になってDVD(Digital Video Disc)という直径12cmか8cmの小さなプラスチックの円盤に記録する手段が登場し、急速に普及し、ついに2001年にはビデオテープよりDVDの生産のほうが多くなるという逆転が発生し、着々とDVD全盛時代になりつつあります。
 しかし、メーカーはさらに次の時代の記録手段を開発し始めており、これが次世代DVDといわれているのです。
 この技術の特徴は、これまでのDVDが情報を読み取るのに赤色のレーザー光線を使っていたのですが、より波長の短い青色のレーザーが実用になってきたので、それを使って、現在のDVDの何倍もの時間の録画ができるようにしようということです。

 ここまでは素晴らしいのですが、問題は技術が一種類ではなく、二種類あるということです。
 かつてビデオテープレコーダーでは、ソニーを中心とするベータマックス方式と松下電器産業を中心とするVHS方式が争って、お互いに互換性がないので利用者が苦労したことがありましたが、次世代DVDでも同じような事態になりそうなのです。
 その二種類の一つは「HD−DVD」という方式で、現在のDVDと同じ直径12cmの円盤に30ギガバイトの情報が書き込めるもので、もう一つは「ブルーレイディスク」という方式で、同様の大きさの円盤に54ギガバイトの情報が書き込めるものです。
 これだけであれば、後者のほうは現在のアナログのテレビジョン放送が60時間以上も録画でき、ハイビジョン放送でも4時間30分は録画できるので優れているということですが、前者は現在のDVDの生産装置がそのまま使えるので安くできるという特徴があります。
 そこでどちらの技術を開発している企業も、自社の技術を何とか世界標準にしたいということで、ブルーレイディスク陣営はソニー、松下電器産業、日立製作所、フィリップス、サムスン電子、デルコンピュータ、ヒューレットパッカードなど世界の73社が参加し、10月4日に「ブルーレイディスクアソシエーション」を結成しました。
 一方、HD−DVD陣営は東芝、日本電気、三洋電機など40数社が集まって、来春に「HD−DVDプロモーショングループ」を結成する準備をしています。

 天下分け目の決戦前夜ですが、この決戦には、もうひとつ重要な参加者があります。コンテンツ、すなわち、DVDにする内容を制作する会社です。アメリカのマサチュセッツ工科大学のニコラス・ネグロポンテ教授が、ハイビジョンの開発の問題点を指摘して、「あなたは高精細な画面でつまらない番組を見るのと、普通の画面で素晴らしい番組を見たいかどちらですか?」という皮肉を言ったことがありますが、このような技術のどちらが主流になるのかは提供される内容次第だということです。
 ベータマックス対VHS戦争のときも、画質はベータマックスのほうが優れているといわれましたが、レンタルビデオショップなどでVHSのほうの品揃えが豊富あったために、VHSが勝利し、ついに2002年の8月にソニーはベータマックスの生産を打ち切ったという歴史があります。

 そこで興味深いのは、両陣営に参加したコンテンツ制作会社です。ブルーレイ陣営には、ソニーピクチャーズエンターテイメント(「スパイダーマン」「イージーライダー」など)は当然として、20世紀フォックス(「タイタニック」「スターウォーズ」など)、そしてソニーが9月に買収したMGM(「007シリーズ」「ロッキー」など)というハリウッドの大手映画会社が3社参加していますし、HD−DVD陣営にはエイベックス、ポニーキャニオン、角川映画などが参加しています。もちろん、これらの企業も洞ヶ峠で見物し、成り行きによっては陣営を変更するかもしれませんが、現状ではブルーレイ陣営が有利な情勢です。





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